第7章                   総括


本研究では、市街地における歴史的建築物の埋没は顕著であるという問題意識の中、歴史的建築物を含む研究対象地域を、コンピュータグラフィックス技術及びVRを用い、高層建築物が歴史的建築物に与える影響を把握することを目的とした。

そこで、ソウル市市街地において最も代表的で価値が高く、さらに周辺の景観整備が強く叫ばれている南大門周辺を研究対象地域として取り上げた。

次に、コンピュータ・グラフィック技術を用いモデルを作成するための基礎資料を現地調査において収集、一定の成果をあげた。

さらに、この研究対象地域を3次元モデルで再現、現状モデルを作成。研究対象地域の現状を視覚化、立体的に把握した。

続いて、代替案を提案、代替案は、「高さ60%モデル」「高さ80%モデル」「高さ120%モデル」「高さ140%モデル」「高さ10階モデル」「高さ20階モデル」の6つの案を提案した。これをもとにシミュレーションモデルを作成、3つの視点場より計21の画像を出力し、周辺建築物が南大門に与える影響を考察、把握した。これによって、早急に周辺建築物の高層化に歯止めが必要であること、特に南大門後方の建築物、つまり南大門上方に広がる空の空間を保護することが非常に重要であることがわかった。

最後に、アニメーションを作成し、研究対象地域をより立体的に把握、考察し、その問題点を抽出した。

 

 

最後に、今後の課題を述べる。

このたびの研究では評価実験は行っていない。これは作成した3次元モデルの規模が大きかったためハードウェアの限界からモデル作成に大きく時間を要したこと、評価実験に有効と思われるアニメーションの作成ができなかったことがあげられる。現状の南大門周辺は建築物がかなり乱立し屹立しており、大変、景観が乱れた状態である。ある一定の規則性を元に作成したシミュレーションモデルのアニメーションではこれを評価することがかなり困難といえる。今後の展開として、保存すべきもしくは規制を加えるべき重要な視点場を抽出し、これに基づいて新たにシミュレーションモデルを作成し評価する必要性があると考えられる。また、数値解析の必要性を切に感じる。現状の3D Studio MAXで作制したシミュレーションモデルで数値解析を行うのは、非常に困難である。つまり、数値解析をどう組み込むかは大変重要な問題になると考えられる。

 

謝辞


 

本研究を進めるにあたり、大分大学工学部建設工学科教授の佐藤誠治先生、同助手の鈴木義弘先生、同助手の小林祐司先生、姫野由香先生、同技官の中武啓至先生、九州大学大学院助教授の有馬隆文先生、さらに韓国・西京大学教授の金俊英先生、韓国・ソウル私立大学教授の金基虎先生をはじめ、多くの方々から多大な御指導を承り、深く感謝いたしております。また、都市計画学研究室の大学院博士後期課程の厳屶先輩、李衡馥先輩、韓ガプス先輩諸氏、研究員の金キョンヒ氏、岡部秀敏氏の両氏の御協力、御助言なしでは本研究は成り立ち得ませんでした。感謝いたします。さらに、互いに協力しながら、ともに研究を進めてきた同輩の高塚尊文氏、豆田謙浩氏、三宅隆喜氏、山滝佳子氏、大学院博士前期課程1年の岐部善道氏、鈴木慎一氏、高木哲氏、中村洋平氏、福田裕文氏、松本明男氏、村山大輔氏、矢作裕之氏、張天オウ氏、学部4年生の荒瀬透氏、荒瀬勇蔵氏、亀山正廣氏、久保田千恵氏、繁永幸治氏、西原由里子氏、広中聡氏、山下秋朝氏、藤原寛之氏、門久史嗣氏、永田亮氏、中野敏明氏、研究生の金貴煥氏、朱劼氏の諸氏にも感謝の意を表したいと思います。

 

 

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