「豊予をつないで列島活性化!!」 
                                                    大分大学工学部教授  佐藤 誠治

 この講演は2000年11月30日に大分県佐賀関町公民館でおこなわれた豊予海峡ルート講演会(豊予海峡ルート推進大分県期成会主催)の記録です。

 ただいまご紹介をいただきました大分大学の佐藤でございます。
 私に課せられた講演の題目は、「豊予をつないで列島活性化」ということで、先ほど本四公団の北川さんの方から技術的なお話がございまして、非常に夢のある話を伺ったわけです。
 私の方は、どちらかと言いますと計画系といいますか、どうやったら豊予海峡ルートが実現するのかという動きを出していくための話になろうかと思うわけでございます。
 あるいはなぜ、この豊予海峡ルートが必要なのかという話しに持っていければと考えております。
 私、先ほど司会の方からご紹介いただきましたけれども、国東の出身でございまして、国東半島に生まれて育ちました。
 国東半島から佐賀関の煙突が見える。そういうところで育ったわけでございまして、この歳になりまして佐賀関でこういう講演ができるというのを非常に感慨深く思っているわけです。
 お手元に簡単なレジメを用意させていただきましたので、それに沿いまして話を進めさせていただきたいと思います。
 話の筋といたしまして、いま日本の国土計画の潮流はというところから、なぜ豊予か、そもそも海峡を結ぶ意味は何かというところからはじめまして、最終的には豊予をつなぐために何をすればいいのかということをお話したいと思っております。



1.いま、日本の国土計画の潮流は

 まず最初に、日本の国土計画の潮流はということでございますが、先ほどの北川さんのお話の最後の部分にもございましたけれども、平成10年3月に新しい全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」が策定され、太平洋新国土軸をはじめといたしまして新たな国土軸が3つ提言されました。
 この太平洋新国土軸の起源については、その10年ほど前に遡るわけですが、大分合同新聞の新年特集の座談会。私もそれに参加しておりましたけれども、その座談会の中で平松知事が第二国土軸構想(現在の太平洋新国土軸構想)を提唱し、これを進めようということを宣言されたわけです。
 確かに、それ以前にこの第二国土軸の話はございました。ワイズマンレポートなんていうのがあったわけですけれども、実際に行政的な課題といいますか、政治的な課題に持ち込んできたのは平松知事であると私は思っております。
 それから約10年ほどたった時点で、新・全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」の中に、この太平洋新国土軸が明確に位置づけられたということがあるわけです。
 また、それから最近の話題といたしまして、国土計画の中で例えば首都機能移転なんていうものもございます。
 東京に一極集中してる首都機能をどこかに移すということで、国会でそういう委員会が作られまして検討を深めて参ったわけですけれども、昨年3つの候補地をあげた段階で、ちょっと動きが止まっているというようなことです。経済情勢だとか、あるいは東京の方は自分のところから首都機能が出ていくのは困るということだとか、いうことで一頓挫をしている状況ございます。
 首都機能移転につきましても、これは太平洋新国土軸をはじめとする新しい国土軸の動きと連動できるのではなかろうかと考えているわけです。
 それから、先ほどの北川さんの話の中にもあったと思いますが、太平洋新国土軸と北東国土軸、それから日本海国土軸という3つの新しい国土軸があり、既存の国土軸は東京から東海、山陽を通りまして九州の方に来るという西日本国土軸というのがあるわけです。
 新しい国土軸も、太平洋新国土軸をはじめといたしまして、雰囲気づくりは着々と進んでいるわけでございまして、後の方で出てきますけれども、紀淡海峡だとか、あるいは伊勢湾口の方も非常な盛り上がり方をしているわけです。
 もちろん、なかなか一気に進むものではありませんけれども、国土計画ということからすると、21世紀をめざす中で新国土軸以外には現実的な目玉がなかなか出てきてないんじゃないかなというふうな感想も一方であるわけです。
 ITなんていうのがございますけれども、この情報通信技術が国土計画の目玉たりうるか。たりうるわけですが、情報通信技術だけじゃなくて、具体的に人だとか物が動く、そういうプロジェクトが必要であると思っているわけです。

2.「いま、なぜ豊予か」そして他の地域は

 では、いまなぜ豊予かということでございます。
 太平洋新国土軸を展開させていくためには、これは豊橋から伊勢湾口、紀淡海峡、豊予海峡という連結が必要になってきますので、その中でもやはり豊予海峡というのが、先ほどの技術の話の中にもございましたけれども、非常に大規模なリンクになるわけでございまして、一番重要なポイントになるんじゃないかと考えているわけです。
 その中で他の地域が具体的にどういう状況になってるかと申しますと、紀淡海峡ルートは和歌山、兵庫、徳島で非常に交流が進んできており、実際その交流をどういう形で進めたらいいのかということで研究も相当な規模でなされているわけです。
 紀淡海峡ルートを推進するということで、推進組織も非常に多く結成されているわけです。
 私の手持資料で見ますと、紀淡海峡ルートの推進組織というのが平成11年10月現在で8つほどあります。
 例えば「紀淡海峡交流会議」、これが関係7府県、9経済団体で作られている。それから府県または市町村ということで、「大阪湾環状紀淡連絡道路建設推進協議会」というのが7府県3政令指定都市で作られている。
 それから、「紀淡連絡道路実現期成同盟会」というのが和歌山、大阪、兵庫、徳島の44市町村で結成されている。 
 また、「紀淡連絡道路実現淡路期成同盟会」というのがございまして、これは洲本市長さんが会長で、青年会議所だとか、そういうところが入ってやってる。
 さらに、経済団体が3つほどございまして、「紀淡連絡道路建設促進協議会」。関経連、四経連、それから各商工会議所が入りまして15経済団体で作られている。
 同じく経済団体ですけれども、「紀淡連絡道路建設フォーラム」等々全体で8つの団体が作られて大きな動きを出しているわけです。
 伊勢湾口道路につきましても、最近の話題として中部国際空港がらみで非常に元気がでてきてるだとか、あるいは2001年の国際博覧会、バックには名古屋という大都市がひかえているということで、非常に勢いがついてきているというふうに思うわけです。
 その一方で、豊予につきましては、若干辛口になりますけれども、推進体制がちょっと弱いんじゃないかなと思っているわけです。
 どこから作っていくのかということから言いますと、豊予は3番目という意識でやってたら駄目なんじゃないかと思っているわけです。
 例えば、先ほど神戸の原口市長さんの話が出ましたし、大久保甚之丞さんの話も出ましたけれども、何年かかってもやりとげるのだというねばり強い取組が必要であろうと思うわけでございます。明石海峡大橋は1949年に原口市長さんが提案されたわけですけれども、具体的に建設省が調査費を出して開始したのが1959年でございました。1998年に完成ということですので、約40年間かかっているわけです。
 昨年度の、本推進期成会シンポジウムで平松知事がそんなには待てないんじゃないか、15年ぐらいで何とか緒につけるような動きを作り出していきたいということを非常に強調されたわけです。
 やっぱりそれくらいの気持ちでないと、現実のものになっていかないんじゃないかなと思うわけです。



3.そもそも海峡を結ぶ意味は何か

 ちょっと話が戻りますが、そもそも豊予海峡をはじめとした海峡を結ぶ意味は何かということです。一般的に、海は地域と地域を隔てる役割を果たすように見えるわけですが、実際は海洋文化圏だとか、あるいは海洋経済圏と言われておりますように、非常な交流、つながりを実現するわけであります。
 佐賀関と対岸の三崎町、あるいは佐伯と宿毛だとか、そういうところはお互いに行き来して、そして通婚圏といいますか、結婚する人も出てくるだとか、そういうことで非常に密接な関係があったわけです。最近は、交通が陸上交通の方に大きくシフトした関係で海が障壁になってきたということはあるわけですけれども、歴史的に見ますと非常につながりがあったということです。
 そういうことをもう1度取り戻す必要があるんじゃないかと思うわけです。
 現実ここで九州と四国、瀬戸内の交流の状況を見ますと、佐賀関と三崎の間には海の上を国道が走っているわけですが、この人流と物流が非常な勢いで増加しているわけです。
 私の手持資料で見ますと、国道九四フェリーの佐賀関・三崎間の人的流動がこの10年間で3倍ぐらいになってる。何人ぐらいかと申しますと年間で32万4000人ぐらいが国道九四フェリーで一般旅客として行き来してる。
 それから、フェリーですので当然車がありますけれども、車が年間11万7000台。国道九四フェリーだけです。
 大分と対岸愛媛を結んでいるルートはまだほかにもございます。八幡浜と臼杵の間は九四フェリーと宇和島運輸が走ってます。
 それから、三崎・八幡浜〜別府航路というのがございまして、全体でルートとしては3つなんですけれども、フェリーとしては4つあるわけです。
 それを見てみますと、平成10年の実績で、人数でいきますと100万人を超えるような勢いになっている。具体的には107万6000人という数字になっております。
 ということで、障壁はあるんだけれども交流はかなりの規模で行なわれているということです。
 特にしまなみ海道だとか、あるいは児島・坂出ルート、あるいは神戸・鳴戸ルートですね。こういうところが開通しまして、本州から四国の方に大きく流動の圧力が出てきて、それが九州の方に入ってきてるという読み方もできるわけです。
 それから外国の事例で言いますと、国と国を結ぶということは非常に大きな意味があるわけでございます。例えばドーバー海峡トンネル、これはだいぶ古い話ですけれども、イギリスとフランスを結んで、ロンドンに行きますと、ロンドンは有名な駅がたくさんありますが、そのうちの一つでウォータールー駅というのがあるんです。これはドーバー海峡のトンネルをユーロスターが走っていくわけですけれども、そのためにこのウォータールー駅をユーロスター専用のホームを作って開業いたしました。
 それから、最近の話題といたしましては、ジブラルタル海峡です。スペインとモロッコを結ぶ地中海のちょうど入り口のところですけれども、そこを結ぼうという話がございます。
 それから三番目は、先ほど北川さんの話の中にございましたけれども、デンマークとスウェーデン、グレートベルトリンクについてはお話があったわけですけれども、もう一つ、オルスンドリンクなんていう、これを作ろうという状況になっているわけです。
 それからアルプス横断トンネルも話題になっております。
 ヨーロッパの場合は、新たな地域、国際連携のカテゴリーをいかに増やして活性化させるかということになってるわけですけれども、EUとの関連で非常に活発になってきているわけです。
 オランダにマーストリヒトという町があります。1992年にそのマーストリヒトで結んだEUの条約でマーストリヒト条約という有名な条約があります。
 ここで開かれた会議の結論といたしまして、高速道路整備をきちっとやらないとEUには入れないよ、ということも決められたわけです。そして、総額で日本の円にしますと58兆円で、総延長5万キロの高速道路をヨーロッパの中に張り巡らそうということで進んでいるわけです。



4.豊予をつなぐ国家的必然性はどこにあるのか

 ちょっと話が飛躍しますけれども、そういう国際情勢の中で豊予をつなぐ国家的な必然性がどこにあるのかということですが、一つは閉そく的な21世紀にするのではなく、大きな展望を切り開くために新国土軸を作らなきゃいけない。そのためにこの豊予だということであります。
 それから、やはり日本の国土構造というものを考えてみなきゃいけない。日本はご承知のように細長い国土であります。そして、先ほど申しましたように西日本国土軸で1本軸は通ってるわけですけれども、国土構造自体が非常に硬直化している。もっと柔軟な国土構造にする必要があるんじゃないかということです。
 阪神淡路大震災が起こった時に新幹線も止まりましたし、国道も止まった。
 どういう状況が起きたかと申しますと、東京の方から九州の方に入ってくる物流が一つは太平洋新国土軸上で紀淡海峡をフェリーで通って、そして四国を西の方に進み、先ほど申しました三崎から佐賀関に上がってくる。あるいは宿毛から佐伯に上がってくるということが起こったわけです。
 これは、まさに太平洋新国土軸の必要性を国土として体験したということになったわけです。
 もう一つは、山陰を走って山口から関門トンネルや関門海峡大橋を通って九州に入ってくるということがあったわけです。
 国土のリダンダンシーと言っておりますけれども、緊張感のある国土構造じゃなくて、非常に緩い国土構造と言いますか、冗長性という意味なんですけれども、そういう国土構造に作り替えなきゃいけない。
 3番目は、国民全体が国土空間を共有する、狭い国土をフルに活用して国民全体が共有できるという、そういう国土構造にする必要があるということです。
 それから、先進諸国で国土が均等に分離している事例はないということです。日本は4つの島が、全く均等じゃないわけですけれども、かなりの大きさの島が分離している。他の国ではそういう事例はあまりないわけです。
 そういう国土構造が持っているマイナス面を克服していく必要があるんじゃないかと思っています。
 太平洋新国土軸を語る時によく文化だとか、歴史だとか言ってるわけですけれども私は道路とか通信網というのが絶対的に必要条件であると、それをもっと前面に押出してやる必要があるんじゃないかと思うわけです。
 近年、公共投資抑止論が言われておりますが、確かにそれを受け止めなきゃいけない部分もありますが、もっと太平洋新国土軸をはじめとする国土軸をきちっと作っていくということを前面に押し出していくことが必要じゃなかろうかなと思っております。
 ここで、九州と同じ国土面積のオランダについて触れてみたいと思います。
 オランダは埋立ての国ですので国土の条件が若干異なりますが、高速道路が非常に発達しております。自転車道路もかなり発達している国なんですけれども.......。
 面積は九州と同じなんですが、高速道路の延長は2000Kmを超えてる、九州の3倍以上になっているわけです。
 それから、日本の3分の2の人口を持っているドイツ、面積はほぼ同じぐらいです。そのドイツの高速道路は1万1000Km、これに対して日本は6500Kmです。
 それから国土構造を見ますと、先ほどちょっと触れましたように、日本は非常な負の条件を持ってるわけですけれども、ドイツは蜘蛛の巣状に道路あるいは鉄道が配置されています。ウェブ型構造(くもの巣型構造)と我々は言ってるわけです。
 そういうことで、ドイツは日本と比較して非常に柔軟な国土構造を持っており、産業配置も分散型になっている。また、都市の配置も分散型になっておりまして、いまはやりのネットワーク型構造と言いますか、情報通信網、これはどこが中心になってもいいような構造なんですけれども、それに近い完全グラフ型と言っておりますが、そういう構造をしてるわけです。
 やはり、そういう日本が持ってるマイナス面とドイツが持ってるいい面、これを我々は比較しておかなきゃいけないんじゃないかなと思います。
 日本の硬直したヒエラルキー型と言いますか、ピラミッド型の国土構造、これはずっとそのまま続いておりますと、ボディーブローのように利いて、だんだん日本の競争力が落ちてくる可能性があるんじゃないかと思っているわけです。
 では、アメリカでいまどういう状況になっているかと言いますと、TEA−21(Transportation Equity Act for the 21st)、 21世紀に向けた交通最適化法というのがあります。 Equityというのは現行の不備を補うという意味がありますので、現行の不備を補うような transportation、交通の最適化をやらなきゃいけないということで、国土の基盤、経済国力を支えるのは道路ネットワークであるということを前面に押し出して、道路投資を1.4倍に増加させるということでやっております。
 その中で二つのプロジェクトが出されておりまして、一つはナショナルハイウェイシステム、NHSということで26万Kmの道路網整備をやる。
 それから二つ目はインテリジェント・トランスポーテーション・システム(ITS)ということで、情報通信技術で人と車と道路をつないで有効活用するようなシステムを作り上げようとしております。
 いま大統領選でもめておりますゴア副大統領の話なんですけれども、実はゴア副大統領は情報通信のプロでございまして、道路をきちっと作るというのは大事だけれども、一方で情報インフラを作らなきゃいけないということで大規模な通信ネットワークを自らが音頭を取りましてほとんど完成をみているわけです。従いまして、ゴアさんは大統領に通らなくても主要な事業はすでに済んじゃってるというようなことなのかもしれませんけれども。
 ちなみに、ゴア副大統領のお父さんは道路ネットワークをきちっと作った人です。
 ゴア副大統領は通信ネットワークをきちっと作るということで親子そろってネットワークをやった人なんです。そういうことでアメリカは非常な勢いでいま道路と情報通信ネットワークを整備しているということです。
 話がいろいろ錯綜しますけれども、狭い日本、資源小国日本においては、国土を隅々までつないで活力を出し切る必要があるわけであります。要は、資源が少ない日本が力を出していくためには、国土軸あるいは道路網を作ることによって国土を隅々まできちっとつないでいくということをやらなきゃいけないんじゃないかと思うわけです。地方においては、そういう国土構造を背景として中央と競争できる力を持つ。そういう国土の均衡ある発展が可能となるわけでございます。

 


5.九州と豊予海峡ルート

 そこで、九州と豊予海峡ルートについてでございます。
 九州において豊予海峡ルート、あるいは太平洋新国土軸がどういう受け取り方をされているか考えてみますと、最近では太平洋新国土軸も浸透してきておりますが、4、5年ぐらい前は福岡や熊本あたりで第二国土軸だとか言ってもほとんど冷たい反応というか、知らないよという話だったんです。
 ですので、国家プロジェクトたる太平洋新国土軸、豊予海峡ルートが九州の中で市民権を得なければいけないと思うわけです。
 先ほどの紀淡海峡ルート、それから伊勢湾口道路については非常な大きな取組が地域でなされています。特に、紀淡海峡ルートについては、大阪や兵庫といった都市圏を捲き込んでおり、徳島、和歌山と非常な大きな構えの中でプロジェクトが一歩一歩進行してるわけです。
 では、九州にとって、あるいは地域にとって豊予海峡ルートがどういう意味を持ち、どういう効果をもたらすのかということを、私たちは他に向かって声高に主張しておく必要があるのではないと思うのであります。
 本四連絡橋は大きく3つありますけれども、架橋によって交通条件が飛躍的に向上しまして、時間が総じて3分の1になって徳島県の人が甲子園球場で行なわれる阪神・巨人戦に行くことが非常に増えたそうです。統計では約2倍ぐらい増えたとか、そんなこともあるわけです。
 豊予海峡ルートは、交通条件の向上が期待されてどういうことができるかと言いますと、例えば、大分と阪神が4時間ぐらい時間距離で縮まる。それから四国は3時間ぐらい縮まる。
 交流人口はどうなったかといいますと、本四連絡橋で1.7倍に増加した。交流人口というのは観光だとか、その他の通勤通学だとか、そういう話でありますけれども、1.7倍に増加した。
 例えば、豊予の場合は本州と四国が結ばれて、そして豊予が結ばれれば本四と九州が別ルートでつながって連携効果が出てくる。要するに西日本国土軸じゃなくて新しいルートがつながることの連携効果が出てくるということです。
 それから、生活利便の向上については、通勤だとか医療だとか消費レジャー等で、本四の連絡効果が非常に出てきた。
 それから、経済効果につきましてはGRP。これは地域総生産、グロスリージョナルプロダクトということですけれども、9000億円増加してる。関係地域のGRPが1.0%増加したということであります。
 これの経済効果につきましては、豊予の場合は5、6年ほど前、私も入りましてNIRA(総合研究開発機構)の委託事業で調査をやりましていろんな統計分析や経済モデル等を作ってやりました。
 これは太平洋新国土軸全体の話ですけれども、その時に出ました数字では、大分県内に限っても旅客と貨物便益だけでどうも年間1000億ぐらいの経済効果が出そうだということです。
 あるいは、新しい産業集積も大きく期待できるということで、例えば、既存のハイテク産業、大分県で言いますと大分市内にあります東芝、ここは素材としてのIC生産は世界一ですけれども、必ずしも付加価値が高いというわけじゃありません。そういう産業分野において、非常な高付加価値製品を生み出すハイテク産業が出てくる可能性がある。さらに、研究開発やグローバルなコントロール機能を持つ産業に生れ変っていくという可能性もあるということです。
 研究開発とかグローバルなコントロールというのは地球規模でのコントロールという意味ですけれども、多国籍企業が大分県だとか、そういうところに入ってくる可能性がある。
 ところが、東京を中心としたピラミッド型、ヒエラルキー型の国土構造であると東京でしか成り立たないようなものが、新しい国土軸を作ることによりまして、交通結節点がたくさんできまして、その交通結節点を中心にしてその周辺に新しい産業が生まれることが期待できるということです。
 その他には新成長産業だとか、あるいはバーチャルコーポレーションというものの立地が期待できるということです。



6.大分県にとって豊予海峡ルートとは

 では、大分県にとっての豊予海峡ルートはどういう意義を有するかということを述べてみたいと思います。。
 古くから、九州の東の玄関として大分地域はあったわけです。
 かつては参勤交代で九州の大名が九州山脈を越えて、そして大分から瀬戸内海を通って大阪に上がって江戸の方に行くということで、本県は東九州の玄関口であったわけです。そういう意味で当時の瀬戸内海は海のハイウェイであり、大分はインターチェンジであった。そういう位置にあったわけです。
 東九州自動車道、あるいは中九州横断道路ができ、そしてそれが豊予海峡ルートを通じて太平洋新国土軸としてつながっていくということになります。その結果、多様な結節点が当地域に展開してくるということになります。つまり、いろんな交通が集中する車輪のスポークの中心にハブが入ってるという構造ですけれども、本県がそういうハブの中心になる可能性があるということです。

7.佐賀関周辺地域にとって豊予海峡ルートは何をもたらすか

 それから、ここ佐賀関周辺地域にとって、豊予海峡ルートは何をもたらすか。
 やはり、交流人口が増加し、観光が飛躍的に伸びていくということを通じまして、地域の活力が大きくなるということではなかろうかなと思います。
 例えば、湯布院はいま年間350万人の観光客を集めております。
 350万人と言いますと1日1万人です。湯布院の人口が1万人ですから、人口1万人なんだけれども2万人の都市と同じくらいの規模を実現してるということです。
 久住町にも年間214万人の交流人口、観光客が来ております。
 ここも人口が2倍になっているということと同じなんです。そういうことで交流人口を大きく伸ばす効果があるんじゃないかなと思っております。

8.豊予をつなぐために何をすればいいのか〜効果極大化のために

 それから最後に、豊予をつなぐために何をすればいいのかということについて触れてみたいと思います。
 一つはナショナルコンセンサスを得る努力、国民全体のコンセンサス・合意を得る努力をしていかなきゃいけない。先ほど述べたようなことを通じまして、国全体としてOKだよという動きを作り出す必要があるということです。
 そのためにも、海峡を挟んだ愛媛との連携が必要である。政産学民など各界の連携を図りながら、ここに橋がないと困るという動きを出さなきゃいけないと思っております。
 この推進期成会のイベントは昨年度もありましたが、その時にも申し上げたように、例えば大分県と愛媛県において県が共通のプロジェクトとして、沿岸地域がリンクできるようなプロジェクトを出して行くとか、商工会議所等で現在具体的な動きが出てきつつありますが、産業界を中心とした民間レベルでの活動を推進していくことが必要であると思います。
 いずれにしましても、大事なのは豊予海峡ルートが国土に大きな果実をもたらすということの認識を深め、ナショナルコンセンサスを得るための努力を日常的に行っていくことが重要ではないかと思います。
 先ほど、紀淡海峡の話をいたしましたけれども、推進組織が紀淡海峡ルートは8団体、豊予海峡ルートは2団体ということでございまして、愛媛と手を結ぶようなことをもっと各界がやる必要があるんじゃないかと思うわけです。
 ちょうど私に与えられた時間がきましたので、これで終わりにしたいと思います。
 長時間ご静聴ありがとうございました。