おおいた木造建築ファイル 000

聴潮閣ちょうちょうかく高橋記念館 贅を尽くした浜脇の旅館主の家

 別府市の市街地から山の手に上がった、青山町に建つ住宅建築である。別府八湯のひとつ、浜脇温泉の旅館主であった高橋欽哉氏の自邸兼迎賓館として作られ、浜脇地区の海辺に建っていたが、1989年に現在地へ移築された。
 建物は木造2階建てで、当時日本の植民地だった台湾産の桧を用いた入母屋造り、桟瓦葺きである。基本的に和風建築だが、洋間も設けられ和洋折衷の様式。
 玄関は式台付きで、左手には洋館の応接間が設けられている。アールデコ風で、大理石の暖炉やステンドグラスの窓、応接セットなどが洋風インテリアでまとめられている。

 主屋は総2階で、特に2階は7.5畳、10畳、10畳の3間続きとなっており、襖を開ければ27畳の大広間となる。大旅館主の自邸ということで、多くの人を集めての会合などにも使われたものと思われる。一番奥の間には、壁全面に床の間が設けられている。柱材は四方柾(角材の四面とも柾目に取った材で、材の中心を取ることで出来るが、破棄する部分が多く自ずと高価になる)。欄間は天井に届いておらず、彫刻がなされていないながらも美しい姿で、伝統を踏襲しながら近代的な要素を取り入れていた、近代期の和風建築の特徴を表している。
 両側には縁側風の廊下が付き、勾欄(窓が床面まで達しているため、安全上設けられている手すり)が設けられている。浜脇に建てられていた当時には文字通り、ここから潮の音を聴くことができたものと想像される。

 現在は山の手に移築され一部増築されたものの、杉皮張りとして違和感のない外観となっている。現在は「聴潮閣高橋記念館」として一般公開され、合わせて移築された蔵もカフェとして再利用されている。
 
DATE
登録有形文化財
所在地/別府市青山町
設計者/荒金啓治
棟梁/平野介冶
竣工/1929年
建物用途/資料館
構造規模/木造2階建
延床面積/u

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※このページは 大分大学 工学部 福祉環境工学科建築コース 木質構造研究室 の製作です
※記事・写真の無断転載・使用を禁じます ※2003年12月4日取材