4棟の国指定の民家を見に行っても、本当に『 見る民家 』であって『 使う民家 』ではない。 だから例えば建築の場合ならば、今の大学で伝統工法をどれだけ教えているかということだ。伝統工法を知った上でそれを改良して新しい技術をつくっていくということならわかるが、伝統工法を大学の先生がほとんど知らない・教えない状態の中で、プレハブ住宅をやっていくというのは、あまりよくないことだと考えられる。プレハブ住宅といえば冷暖房を備えることを前提にしていて、ヨーロッパ式の閉鎖的な住宅が多い。日本では自然の風や光をどう利用して住まいに活かすかというような発想が昔はあったが、戦後は特に技術力が上がったため、そんなに自然に頼らなくても冷暖房があれば暮らしていけるという考えになってきてしまった。しかしランニングコストはどんどん上がってきている。昔は冬になったら着ぶくれすることで暖房になり、寒かったらたくさん着ればいいというような考えだった。それからとにかく手の先や足の先が温まれば血液の循環がよくなるので、局部暖房で、火鉢に手を当てるなどしていた。それができない場合はカイロを使うなど、その程度でよい。極論ではあるが、暖房機を使ったことで一酸化中毒によって亡くなる人が出ることもある。科学技術というのは、進むことで本当に人間にとって良い環境になるのかといえばそうではなく、新たにさまざまな問題が出てくるのである。 国の指定になっている民家を見に行っても、それはもう博物館として見ていて、昔こういうのを使っていたんだという知識はできるが、それを今の暮らしの中に利用するというような感覚では見ていない。そうではなくて昔の暮らしが1番よいのだから、それをどうすれば利用できるか考えるべきである。現在、省エネとよくいわれているが、その割にはエネルギーを使っている。省エネという以上はあまりエネルギーを使わなくてすむようにすべきだ。
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