1999年度修士論文
コンピュータグラフィックス手法を用いた
高密度都市景観に対する 評価構造についての研究 1.序論1.1.研究の背景第2次世界大戦後のアジアでは急速な経済発展に伴い、都市への人口集中が進み、非常な高密度な都市空間が生まれた。増大する人口による居住空間への強い需要は伝統的な低層住宅地の再開発を促し、これらを高層集合住宅群へ生まれ変わらせてきたのである。これら高層建築物群がもたらす高密度な都市空間は、さまざまな都市のさまざまな側面(交通事情、地域共同体のあり方etc)へ大きな影響を与えるものであったが、同時に都市景観をも一変させるものでもあった。すなわち、障壁のように立ち並ぶ高層建築物群は都市の地形的文脈を覆い隠し、周辺の視界を狭小化し、旧来の低層建築物による景観にアンバランスをもたらしたのである。韓国においてもこれらの事情は同様であり、むしろ都市周辺の自然を厳しく保護したために、都市内部に開発圧力をより強く閉じ込めることとなった。そのため、大規模な再開発による高層な住居群の建設が積極的に進められ、この結果一般に、韓国の都市は日本の都市に比して3倍もの密度を有することになったといわれている。 しかしながら、近年では経済発展が行き渡るにつれ、生活環境の質的水準向上への要求も徐々に増大し、そのなかで、都市の景観に対しても大きな関心が払われるようになりつつある。景観問題は、21世紀的な課題として、今後も一層の注目を集めることになると予想されている。 1.2.研究の目的具体的には以下の通り。
1.3.既往の研究と本研究の特色一方で、社会の景観への関心に比例するように、高層建築物による景観問題を取り扱った研究も数多く上程されているが、これらは、おおむね以下のタイプに分類される。
次のタイプでは、コンピュータ上に3次元的に地形・建築が再現されるため、厳密な条件に基づくシミュレーションを行うことができ、その視覚的状況を数理的に把握することも可能となる。一方で、現実に多様である景観要素に対し、その全てをモデル化することは困難なため景観のシミュレーションとしては、リアルさを欠くものとなりがちである。 最後のタイプは地形モデルのみを扱うため、非常に広い範囲における視覚的状況を取り扱うことに長じる。しかし、その適用分野は、地形と地形を覆うように建築される一律の高さの建築物との関係を探るものなど、かなり限定されたものとなる。また、評価実験等に利用できるリアルな景観画像を得ることはできない。 本研究は@とAの中間的なアプローチを採用する。すなわち、コンピュータ上に複数の建築物についての3次元モデルを構築したうえで、現状の写真とモンタージュし、リアルでかつ厳密なシミュレーション画像を得ようとするものである。このことによって、その視覚的状況を数理的に把握することができ、また、現実的な景観評価を行うことも可能になる。 1.4.研究のフローと論文の構成研究のフローは図の通り。図 1 研究のフロー
「第1章 序論」は本章であり、本研究の背景、目的、構成、方法および既往の研究について概説する。 「第2章 写真画像の収集・選定」では、研究対象地域の写真画像についての撮影の経緯を述べるとともに、分析に使用する画像を選定する。 「第3章 地形モデルの構築」では、研究対象地域を含むソウル市について、メッシュデータシステムによる地形モデルを構築する。 「第4章 現状モデルの構築」では、現状の高層共同住宅群についてコンピュータ上に3次元モデルを構築し、コンピュータグラフィック画像を作成する。 「第5章 シミュレーションモデルの構築」では、景観に重要な影響を与えていると考えられる建築物の高さについて、これをコントロールする手法を提案する。また、この手法に基づくシミュレーションモデルを構築したうえで、コンピュータグラフィック画像を作成する。 「第6章 評価分析」では、写真画像、現状モデル画像およびシミュレーションモデル画像について評価実験を行い、高層集合住宅群における景観に対する評価因子を導出する。 「第7章 視覚指標分析」では、現状モデルおよびシミュレーションモデルについての景観の視覚的状況を、視覚指標を通じて把握する。また、視覚指標と評価因子の関係を観察することによって、高層共同住宅群についての景観に対する評価の構造を明らかにする。 「第8章 総括」では、本研究全体の総括をおこなう。 1.5.研究の方法ハードウェア IBM/AT互換パーソナルコンピュータオペレーティングシステム Windows95データ処理およびグラフィック MSVisualC++Ver4.0統計処理 SPSSforWindowsRelease7.5.1Jプレゼンテーション MSExcel97 |