1999年度修士論文
コンピュータグラフィックス手法を用いた
高密度都市景観に対する
評価構造についての研究

4.現状モデルの構築 

4.1.モデル構築の手順

モデル構築に当たって、利用した資料は以下のものである。
  • ソウル市道路地図(韓国・中央地図社、1998)
  • Han-Jin・Han-Sinアパート設計図書(韓国・創宇正社、一部のみ)
  • Han-Jin・Han-Sinアパートパンフレット(韓一開発社および韓信公営社、分譲用パンフレット)
現状の建物モデルの構築手順は以下の通りである。
  • 道路地図の「ANAM-DONG」のページ(18ページ)をイメージスキャナーでコンピュータ上に読み込み、bmp形式で保存する
  • この画像をHO_CAD上に読み込み、建物外形線をトレース、入力する
  • 1つの建物(アパート)を必要に応じてブロック分割し、その境界線を入力する
  • HO_CAD上で各ブロックの隅点の座標値を読みとり、Text形式のデータファイルに記録する
  • パンフレットおよび設計図書によって、建物階数をデータファイルへ記録する
  • パンフレットおよび設計図書によって、調整高をデータファイルへ記録する
  • CG画像出力プログラムを作成する
  • CG画像を見ながら、写真の視点場と出来るだけ近い位置からのCG画像を探索する
  • 得られたCG画像と設計図書、パンフレット、写真を比較して、建物外形・調整高等を微調整する

4.2.データ構造

建物モデルのもととなるテキストファイルに含まれるデータの内容は以下のとおりである。
  • アパート番号
  • ブロック番号
  • 階数
  • 外形タイプ
  • 調整高
  • 座標値
このうち、外形タイプはバルコニーや廊下部分の形状について図 9の2種類のいずれかとした。

図 9 外形タイプ


調整高は、同一アパート内の異なるブロック同士で、建築地盤面が異なる場合に入力される。また、地形モデルに依存した高さ設定が、写真等と比較した結果、不適当と思われる場合にも入力される。

座標値は、ブロックの4隅それぞれにx軸y軸の座標値が入力される。

4.3.外形トレース

前記の道路地図をスキャナで読み取った画像が図 10である。

図 10 道路地図画像


これをトレースし、各建物(アパート)の外形線を入力したうえで、ブロック分割したものが図 11である。

図 11 トレース図


なお、本研究におけるブロックとは、後に述べるシミュレーションにおいて、高さ変化を許容する単位として設定したものである。また、ブロック分割は以下の場合におこなうこととした。
設計図書・パンフレット・写真を参照し、現状同一アパートで高さが変化している部分でブロック分割する
面積470u以上のブロックについては235u以上の単位にブロック分割する
ブロック分割する面積を470u以上としたことについては、以下の理由による。
同一アパート内で高さが変化している部分が、小さいもので家族向け住戸2世帯分であった
家族向け住戸の占有面積の平均が約234uであった
すなわち、家族向け住戸4戸分を超える面積の場合は、2戸分を単位としてブロック分割することとした。

4.4.高さ設定および調整

各ブロックについて、階数を入力するとともに、調整高も入力した。その結果、階数別のブロック数および階数の平均は表 1のようになった。
 


表 1 階数別ブロック数


これによると、現状のブロックのほとんどは18階もしくは20階となっており、平均階数も18.76階であることが分かる。

4.5.CG出力プログラム の作成

入力された建物データに基づき、任意の視点場座標からのCG景観画像を出力するプログラムを作成した。出力するCG画像のサイズは、縦900pixel、横1200pixelである。

また、画像化に当たり建物各部分の寸法は、建築図面を参考に図 12のように設定した。

図 12 建物モデル各部の寸法(タイプ11)


なお、各ブロックの基礎底面の高さは、アパート基準高に調整高を加えたものとし、アパート基準高とは各アパートに含まれるすべてのブロックの4つの隅点から鉛直方向に伸ばした線と地形モデルの交点のうち、最も高いものである(図 13参照)。

図 13 とアパート基準高とブロックの基礎底面


この結果、視覚化されたアパート群の全体像を図 14に示す。

図 14 現状モデル全体像(南方向上空から)
視点場探索およびCGによる視覚化
作成されたCG出力プログラムを使用して、写真と同様な景観が得られる視点場を探索した。この結果、得られたCG画像を図 15に示す。
図 15 各視点場からの現状写真画像およびCG画像


次に、各視点場の写真からアパート部分と空部分を切り抜いた前景画像を作成する。図 16に前景画像を示す。

図 16 前景画像


さらに、図 15のCG画像と図 16の前景画像を合成することによって現状モデル画像を作成する。図 17に現状モデル画像を示す。

図 17 合成後の現状モデル画像


現状モデル画像を写真と比較すると、アパート群の形状については、ほぼ正確に再現されているといえる。しかし、バルコニー内部の窓や壁面の色等の細かい部分については、若干の違いが感じられるものとなっている。

 


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