1999年度修士論文
コンピュータグラフィックス手法を用いた
高密度都市景観に対する
評価構造についての研究

6.評価分析 

6.1.評価実験

前章までに得られたモデル画像および写真について、被験者を用いた評価実験を行った。被験者は大分大学工学部建設工学科および福祉工学科の学生66名、実験会場は大分大学工学部の207号教室、実施日時は2000年1月28日2時40分から3時30分の間である。

実験の内容は、被験者に画像を提示したうえで20の形容詞対と総合評価について、7段階の評価の記入を求めるものである。形容詞対は表 3のとおり。

表 3 形容詞対


また、総合評価は「好ましい−好ましくない」とした。

なお、実験の手順は以下のとおり。
評価を記入するためのアンケート用紙(図 27)を配布する
実験の趣旨、内容、手順、注意事項などを簡単に説明する
教室前方のスクリーンに対し、ノートパソコンを接続したプロジェクターを使用して、画像を1枚ずつ投影する
1枚投影する毎にアンケート用紙1枚の記入を求める
全員の記入が終わったことを確認する
全画像についてB〜Dを繰り返す
すべての画像についての記入が終了したら、アンケート用紙を回収する

図 28 アンケート用紙

6.2.評価得点


回収したアンケートをチェックした結果、2名分の全面的な向こう回答があった。1名分は無回答、もう1名分は著しく記入方法が誤っているものである。したがって有効回答数は64である。また、有効回答とされたものの中にも、個別の項目について若干の回答漏れ、重複回答(1つの設問に○印の記入が2ヶ所以上あるもの)があった。これらはいずれも欠損値として、これらを除いた平均値を充填するものとした。

表 4に評価得点の平均値を示す。

表 4 画像別評価得点平均値


図 28に視点別の平均値を示す。

図 29 視点場別評価得点平均


図 29にモデル別の平均値を示す。

図 30 モデル別評価点平均


 

 

6.3.因子分析


前章で得られた評価について因子分析を適用した。なお、因子抽出の方法は主因子法によった。

この結果3因子を抽出し、その因子負荷量を表 5に示す。

表 5 回転前の因子負荷量


さらに、これに対しバリマックス法による回転を適用し、その結果を表 6に示す。

表 6 回転後の因子負荷量


これを観察すると、第1因子に対する因子負荷量の高い形容詞対は「暖かい-冷たい」「開放的-閉鎖的」「魅力的-魅力的でない」など、空間のもつ雰囲気を総合的に評価しているものと考えられ、後述するように第1因子と総合評価の関係も比較的強いことから、第1因子は「好感度」をあらわす因子であると解釈できる。

次に、第2因子に対する因子負荷量の高い形容詞対は「存在感のある-存在感のない」「大胆な-繊細な」「派手な-地味な」など、景観要素の造形的な特徴による印象の強さを反映したものと考えられ、第2因子は「印象度」をあらわす因子であると解釈できる。

さらに、第3因子に対する因子負荷量の高い形容詞対は「清潔な-不潔な」「落ち着きのある-落ち着きのない」「整然とした-雑然とした」であり、景観要素のリズム感やバランスなどを反映したものと考えられ、第3因子は「秩序性」をあらわす因子であると解釈できる。

6.4.因子得点

各画像の因子得点を平均したものを表 7に示す。
表 7 各画像の因子得点平均


 

また、これを因子別にグラフ化したものを図 30に示す。

図 31 因子得点の変化


 

また、各画像の因子得点を好感怒・印象度因子、好感度・秩序性因子の2軸に、それぞれプロットしたものを図 31に示す。

図 32 因子得点プロット


 

6.5.総合評価との関係

全サンプルの因子得点と総合評価との相関を表 8に示す。
表 8 因子得点と総合評価の相関


これによると、総合評価ともっとも相関が高い因子は好感度因子であり、これに秩序性因子が続く。印象度因子は総合評価との相関がほとんど見られない。

.
 

 


Go back to Home  Go back to the previous page