1999年度修士論文
コンピュータグラフィックス手法を用いた
高密度都市景観に対する
評価構造についての研究

8.総括 

本研究では、韓国・ソウル市の高密度住居地域(高層アパート団地)における景観について、その視覚的状況を把握するとともに、これに対する評価の構造を明らかにすることを目的とした。

このため、まず対象地域を設定した上で対象地域に位置する高層アパート団地に対する景観の写真を収集した。つぎに、これら高層アパート団地の3次元モデルをコンピュータ上に構築し、コンピュータグラフィック手法を用いて視覚化した。さらに、高層アパート団地の景観をコントロールする概念として、@高さ一律削減モデル、A境界距離比例モデル、B標高比例モデル、の3つの手法を提案し、これに基づくシミュレーションモデルを構築、視覚化した。つづいて、実際の景観写真およびコンピュータグラフィック画像を用いて評価実験を行い、これに対する因子分析によって3つの評価因子を得た。最後に現状およびシミュレーションモデルについての景観画像における視覚的状況をいくつかの視覚指標用いて計測し、これと評価因子との関係を把握した。

この結果、次のようなことがわかった。

  • SD法による評価実験によると、高層アパート団地に対する評価因子は、好感度因子、印象度因子、秩序性因子の3つの因子であった
  • 好感度は写真、高さ70%モデル、標高比例/変化量0.5モデルの順に高い
  • 印象度は、境界距離比例/変化量0.4モデルが高い
  • 秩序性は、標高比例モデルが高い
  • 画像に対する総合評価は、好感度因子ともっとも相関がある
  • 視覚指標を検討した結果、高層アパート団地に対する景観は、個々のアパートの見え方が小さく、仰角が低いほど、好感度が高くなる
  • また、アパート全体を大きく望み、その仰角も高い景観は、印象度が高くなる
  • さらに、アパート以外の景観要素が少なく、大小のアパートが立ち並ぶような画像が、秩序性が高いと評価される
本研究では、高層アパート団地に対して、比較的近接した視点場からの景観について、その評価と視覚的構造を探ったものであり、その結果前述のようなさまざまな現象を把握する事ができた。このなかでも景観評価について比較的大きな支配力を有すると考えられる好感度因子について特筆したい。景観の好感度を高くするためにはアパート群の高さを一律に制限することが最も有効であり、視覚指標の検討からも、各アパートの見え方を小さくし、仰角を低く押さえる効果があることがわかる。しかし、地域に対する一定の開発圧力を前提にした場合、すなわちアパート団地の床面積を減少させない事を前提とした場合は、標高比例の概念によりアパート群の高さをコントロールする事が比較的有効であると考えられる。逆に、境界距離比例の概念を用いた場合、印象度は顕著に高くなると考えられるが、好感度については大幅な改善は期待できないと考えられる。
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