ネット写真展

「飛行機の窓から」
−私が見た地球の彫刻−

大分大学工学部教授 佐藤 誠治  

私は20年ぐらい前から飛行機で出張する時には必ず窓際にカメラを抱えて乗るよう
になりました。窓から眺める地上の景色をカメラで記録する楽しみは格別です。皆様
とこの楽しみを共有したいですね。**********************
今回は3シリーズの写真を展示しますが、私たちが乗客として乗る飛行機は自由にコ
ースを選べないのはもちろんのこと、窓に傷が付いていたり、逆光であったり、翼の
近くであったり、とりわけ天候はいかんともしがたく、窓から撮影するのはほとんど
運との勝負のようなところがあります。一部の写真にはそういう限界を感じさせるも
のもありますが、それはかえって臨場感を感じさせてくれるのではないでしょうか。

副題に「私が見た地球の彫刻」と大げさな表現をしましたが、正直そう感じます。
皆さん、一緒に世界の空を飛んでみませんか。地球の表面は実に多様な表情を見せて
くれます。そういう地球の環境を大事にしたいと本当に思うようになりました。**

 



雄大な自然編


氷河に削られた地球の朝

00年8月:成田(新東京国際空港)→ニューヨーク(ケネディ空港)
撮影場所:アラスカ上空?と思われます

成田からニューヨークはいわゆる大圏航路の関係で高緯度を通過するためにおそ
くアラスカをかすめるのではないかと思われます。早朝に山岳地帯の氷河を窓越し
に見ることができました。自然の巨大さが恐れを伴って迫ってきます。*****


波立つ地球

00年8月:成田(新東京国際空港)→ニューヨーク(ケネディ空港)
撮影場所:カナダ上空と思われます。

氷河地帯を過ぎると今度は荒涼とした高山帯です。カナディアンロッキーと思われ
ます。激しい褶曲の造山活動を繰り返して作られたアメリカ大陸の様子が、また今
もそれが続いているように、力強い地球の姿を見ることができます。******


白クマいるかな?

94年8月:名古屋(名古屋空港)→ロンドン(ヒースロー空港)
撮影場所:北極海に近いロシアかスカンジナビア上空と思われます。

もうずいぶん前からですが、シベリアを日本の航路として飛べるようになりました
が、ロンドンに着く前におそらくスカンジナビア半島をかすめた時ではないかと思
われます。海には氷山が見えますが、「白クマがいるよ!!」と同行者に冗談を言
ったりして長時間飛行の慰めにしたことを思い出しました。**********


森林の海に孤立する居住地

00年8月:成田(新東京国際空港)→ニューヨーク(ケネディ空港)
撮影場所:カナダのマニトバの湖水地域あたりか

大規模な湖水と森林地帯です。写真に見られるように居住地は外部とは地上交通で
ネットワークされていません。中央に見られる飛行場が唯一の連結機能を持ってい
るのではないかと思われます。周囲には防火帯が山林火災の延焼をくい止めるよう
に配置されています。***************************


不測の自然

92年8月:インドネシア・バリ島(ングラライ空港)→福岡(福岡国際空港)
撮影場所:島原半島の普賢岳上空

もう10年以上も前になりますが、普賢岳の噴火と火砕流は大きな被害を受けま
した。この写真は普賢岳から流れ落ちる火砕流が海岸線のすぐ近くまで近づいて
いる様子が見られます。自然の営みは時として人間には厳しい試練を与えるのだ
と知らせてくれます。**************************

 


墨絵の世界

98年10月:江陵(韓国:江陵空港)→ソウル(金浦国際空港)
撮影場所:韓国太白山脈上空

韓国の山は岩山が多く、長い間に浸食をうけて特異な景観をみせています。この写
真は朝鮮半島の東側を南北に連なる大白山脈を横切る路線に搭乗して窓から見た写
真です。まさに墨絵の世界を見る思いでシャッターを切り続けたときの1枚です。


貴婦人の横顔

95年7月:ケアンズ(オーストラリア:ケアンズ国際空港)
→福岡(福岡国際空港)
撮影場所:ケアンズ沿岸グレートバリアリーフ上空

ケアンズを離陸するとすぐに広大な珊瑚礁であるグレートバリアリーフの海に出
ます。何気なく外をみていたら、気品のある女性の横顔にみえる海岸線を発見し
ました。********************************


双こぶ駱駝?!

95年10月:木浦(韓国:木浦空港)→ソウル(金浦国際空港)
撮影場所:木浦上空

岩山が多い韓国で、木浦の儒達山(ユダルサン)はほとんど都市の中すっくと立ち
上がった山で印象深いものです。市民は日常的にこの山に登り、また山腹からの湧
き水汲みを楽しんでいます。市民に親しまれている都市内山岳の典型と言えるでし
ょう。**********************************

 


雪の富士−富士山その1−

03年1月24日:東京(東京国際空港<羽田>)→大分(大分空港)
撮影場所:富士山北側上空

富士山は私の写真の大きなテーマです。東京から大分への航路は富士山の北をかす
めることが多いですから左側の席が最高です。1月の厳寒の時期ですからかなり低
い位置まで雪に覆われていますが、頂上への尾根伝いにはカギ型の登山路がうっす
らと見られます。
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雪の富士遠望−富士山その2−

04年1月16日:大分(大分空港)→東京(東京国際空港<羽田>)
撮影場所:清水市沖

富士山を遠望すると地形のつくりがいかに大きいかが理解でします。手前には駿河湾、
日本平の清水市を控えて左には赤石山脈がみられます。富士山はこれらの大地形を睥睨
するかのように大雄々しい姿です。
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噴火する富士? −富士山その3−

03年7月6日:東京(東京国際空港<羽田>)→大分(大分空港)
撮影場所:富士山北側上空

7月でも頂上から何本かの谷には雪がまだ見られます。周りの雲から頂上を突き出
した富士山は、まさに「頭を雲の上に出し・・・・」と歌われた富士山そのもので
す。***********************************


夏の黒富士? −富士山その4−

01年9月21日:大分(大分空港)→(東京国際空港<羽田>)
撮影場所:伊豆半島上空

さすがに9月になると富士には雪は見られません。雲の上に顔を出した富士は不気
味な黒一色です。美しさというよりもすごみを感じさせる富士の別な一面を再認識
させられます。******************************


地球のあばた

04年9月2日:札幌(新千歳空港)→福岡(福岡国際空港)
撮影場所:秋吉台上空

カルスト台地の秋吉台は地上と地下の2つの彫刻が見られます。採草放牧地として
使われてきた土地であることが周囲との違いでわかります。
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薄化粧−1

02年3月20日:東京(東京国際空港<羽田>) 大分(大分空港)
撮影場所:掛川市上空あたりか

晴れた日には南アルプスから中央アルプス、北アルプスまで一望できるのです。**


薄化粧−2

03年3月11日:沖縄(那覇空港)→大分(大分空港)
傾山上空

3月の中旬、晴れた日ですが、山は相当に冷えたのでしょう。傾山は霧氷で薄化粧
を施しているように見えました。**********************