ネット写真展
「飛行機の窓から」−私が見た地球の彫刻−
大分大学工学部教授 佐藤 誠治
私は２０年ぐらい前から飛行機で出張する時には必ず窓際にカメラを抱えて乗るよう
になりました。窓から眺める地上の景色をカメラで記録する楽しみは格別です。皆様
とこの楽しみを共有したいですね。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
今回は３シリーズの写真を展示しますが、私たちが乗客として乗る飛行機は自由にコ
ースを選べないのはもちろんのこと、窓に傷が付いていたり、逆光であったり、翼の
近くであったり、とりわけ天候はいかんともしがたく、窓から撮影するのはほとんど
運との勝負のようなところがあります。一部の写真にはそういう限界を感じさせるも
のもありますが、それはかえって臨場感を感じさせてくれるのではないでしょうか。
副題に「私が見た地球の彫刻」と大げさな表現をしましたが、正直そう感じます。＊
皆さん、一緒に世界の空を飛んでみませんか。地球の表面は実に多様な表情を見せて
くれます。そういう地球の環境を大事にしたいと本当に思うようになりました。＊＊
都市の表情編
摩天楼都市の森
００年８月：成田（新東京国際空港）→ニューヨーク（ケネディ空港）
撮影場所：ニューヨーク、マンハッタン上空
ケネディ空港に着陸直前はニューヨークのセントラルパークの南端を斜めにかす
めるような航路です。ロックフェラーセンター、シティバンクなどの摩天楼が公
園の周囲に立地しています。目を凝らすとフラン・クロイド・ライトのグッゲン
ハイム美術館も米粒の大きさで見えます。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
薄暮のパリ
９９年９月：大阪（関西国際空港）→パリ（ドゴール空港）
撮影場所：ドゴール空港着陸直前
パリのドゴール空港は市街地の北にあります。着陸するときに右の窓からエッフ
ェル塔やブルゴーニュの森が見えます。また画面の中央には凱旋門も小さく写っ
ています。オースマンのパリ大改造による都市軸を幾つか見ることができます。
凱旋門を通過するシャンゼリゼ通りもその一つです。もう少し画面が広ければ、
新凱旋門とデファンスの再開発が見えるところです。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
白鳥の湖
９５年７月：キャンベラ（オーストラリア＜キャンベラ空港）
→シドニー（シドニー国際空港）
撮影場所：シドニー上空
建築を志す人間は誰しもが白鳥のようなシドニーオペラハウスを上空から眺めたい
と思うのではないでしょうか。そういう経験をすることができました。偶然と言っ
たらあまりにも偶然な幸運でした。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
生まれ変わる都市
９８年８月：福岡（福岡国際空港）→ソウル（金浦国際空港）
撮影場所：ソウル上空（金浦空港着陸前）
ソウルは高層化が急速に進んだ都市です。低層で無計画に形成された住宅地を２０階
以上のビルに建て替えて、高層マンションが林立している風景は韓国のどこの都市で
も見かけます。この写真はそういう都市の変貌の途中の光景です。＊*＊＊＊＊＊＊＊
豊かさと貧困の同居
９７年１２月：ムンバイ（ムンバイ国際空港）→
ニューデリー（インディラ・ガンジー国際空港）
撮影場所：ムンバイ（ボンベイ）離陸直後
インドはどこに行っても豊かさと貧困が同居していると感じます。この写真を見ると
緑に囲まれた豊かなアパート群と、手前の水辺に形成された住居群がその同居である
ことが理解されます。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
高密度と旋律不在の住宅地
０１年６月：青島（中国青島国際空港）→福岡（福岡国際空港）
撮影場所：青島離陸直後
中国の人口は日本の１０倍以上。そういう中国の人々がどのような居住の形態を示し
ているのかはこの写真を見るとよく理解できます。低層で高密で建て込んだ住宅地は
どのようなコミュニティを形成するのでしょうか。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
古代人が主張する
０１年１２月２日：大分（大分空港）→大阪（大阪国際空港＜伊丹＞）
撮影場所：堺市上空
大阪府堺市は大小の古墳が市街地に点在しています。最大の仁徳天皇陵はその代表
格です。古代人の主張が生き続けている。機上からもそんな錯覚にとらわれます。
島を繋いだ砂州
２００４年９月２日：札幌（新千歳空港）→福岡（福岡国際空港）
撮影場所：函館沖上空
かつては島であった函館山を、長い時間をかけて砂州が陸続きにした土地に作られ
た函館のまち。きれいな海岸の曲線は自然が作ったものですが、都市はそれを使い、
その表情を豊かにしています。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
懸け橋
２００４年３月２８日：大分（大分空港）→東京（東京国際空港＜羽田＞）
撮影場所：淡路島沖上空
日本が誇る世界的な構造物明石海峡大橋。２本のピア間の距離はは兵庫県地震で１ｍ
広がったと言われています。それでも２０００メートルの長さでは２０００分の１の
誤差ということになるわけですので、その巨大さがわかります。＊＊＊＊＊＊＊＊＊
山岳都市釜山
０２年１２月１６日：福岡（福岡国際空港）→釜山（金海国際空港）
撮影場所：釜山着陸直前
釜山の金海空港に着陸直前の写真です。釜山は人口４００万人を越える大都市ですが
平地が少なく、海に面した地域に旧市街地がひろがっているにすぎません。丘陵地や
山を切り開いて市街地を広げていったことが理解できます。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
市街地の海に浮かぶ
０２年１２月２９日：ソウル（仁川国際空港）→福岡（福岡国際空港）
撮影場所：釜山上空
また違った釜山の表情が見えます。手前に見えるのは釜山のスポーツエリアで白い屋
根はワールドカップサッカーが開催されたスタジアムです。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
飛躍
０２年１２月２９日：ソウル（仁川国際空港）→福岡（福岡国際空港）
撮影場所：仁川沖上空
仁川は韓国第３の都市です。仁川国際空港の建設が、韓国における仁川の位置を飛躍
的に向上させたのです。手前には大規模な埋め立て地帯が見えます。中央にはワール
ドカップサッカーのスタジアムが見えます。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
都市出現
０４年１月１３日：ソウル（仁川国際空港）→福岡（福岡国際空港）
撮影場所：昌原市北東上空
釜山の西、馬山の郊外に突如出現した科学技術都市昌原（チャンウォン）は朴大統領
の強い指導力で実現したといわれています。この計画都市の中央には巨大なロータリ
ーがあることで有名。なんとサッカー場が２つくらい入ると言われています。＊＊＊
高層化都市上海
９８年８月６日：福岡（福岡国際空港）→上海（虹橋国際空港）
撮影場所：虹橋国際空港着陸直前
上海は人口１０００万人を越える巨大都市です。市内の至る場所でその巨大さを実感
させられる摩天楼が建設されています。しかし、面白いことにそれはゾーンを形成せ
ず、本当にバラ建ちしているのです。この状態がいつの日にか、都市としてのメリハ
リを見せてくれるのでしょうか。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
摩天楼の島
９７年８月：フランクフルト（フランクフルト空港）→香港（啓徳国際空港）
撮影場所：啓徳空谷着陸直前
香港の古い空港、啓徳国際空港はビルをかすめるようにアクロバット離着陸で有名で
した。しかし、その一方で都市の姿を詳細に観察もできるのです。九龍半島から対岸
の香港島の摩天楼群がよく見えます。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
臨海都市大分
０３年３月１１日：沖縄（那覇空港）→大分（大分空港）
那覇から大分への空路は大分県をほぼ南北に縦断する形になります。大分市の中心
を通ります。快晴のこの日は遠く佐賀関から四国の佐多岬半島まで一望できます。
斜面都市別府
９４年１１月：大分（大分空港）→ソウル（金浦国際空港）
撮影場所：大分市上空
大分からソウル航路は大分県を東西に横断します。離陸するとすぐに大分市上空に
さしかかります。右側の窓からは別府市が遠望できます。別府は遠目にも巨大な斜
面都市であることが理解できます。また斜面都市を取り囲む鶴見山や由布岳、別府
湾という大規模な地形条件が別府の温泉や景観を形作っていることが理解できます。
雄大な大分、都市と地形
０４年１２月：大分（大分空港）→仁川（仁川国際空港）
撮影場所：大分市上空
１０年ぶりに大分から韓国に飛びました。冬の空気は澄み切って大分上空から遠くは
久住から阿蘇まで見渡せました。大分の活力ある都市活動が上空からも伺えます。**
別府は巨大な斜面都市ですし、バックに控えた鶴見岳や由布岳を含めて、極めて特徴
ある地形です。**************************************************************
風水都市の現在
０４年１２月：大分（大分空港）→仁川（仁川国際空港）
撮影場所：ソウル市南方上空
韓国のソウルは漢城と呼ばれた時代から、風水の地として有名でした。背後に北岳山*
（ブガクサン）を、南に漢江（ハンガン）を配し、まさに背山得水の地であることがよ
くわかります。いまは漢江の南まで市街地を拡大し、１０００万人を超える巨大都市に
なっています。****************************************************************
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