平成11年度修士論文


■GISを用いた公園の認知構造に関する研究■

平成11年度 修士論文


第一章 はじめに
研究の背景と目的(OHP1)
公園の利用活動については、日常生活の身近な場所にあってもその利用は低いと思われる。その公園の利用に関しては活動目的とは別に、
その公園が利用することに不便な場所であったり又は位置的に知られにくい場所にあるといった、公園を認知できないことで、公園の活動
目的そのものが発生できない状態であると思われる。そこで、本研究では日常生活における公園において、認知されている公園の認知構造
を、GISを用いて視覚的に把握分析することを目的とする。

研究の方法(OHP2)
本研究では認知されている公園の認知構造を視覚的に分析するために、「認知している公園とその利用」に関する、アンケート調査を行っ
た。次に、GISで大分市の地図を作成し、アンケートを行った地点をポイントデータ、アンケートの回答結果を属性データとして入力する。
そして、システム上で、各公園から距離圏域毎の認知しているポイントを検索し、公園の認知と認知理由の関係について把握し、認知空間
がどのように広がっているのかを、視覚的に分析を行っていく。

研究のフロー(OHP3)
アンケートの対象となる校区を選定し、アンケートを実地する。。アンケートで得られたデータを集計し、それをGISに入力し、そして
GISをもちいて、調査地点と公園の距離を算出し、公園の認知と認知理由の関係を把握する。さらにGISの機能を用い、認知圏域と認知理
由の分布を視覚化させ、公園の認知構造の特徴の把握を行う。

都市計画法の公園配置計画(OHP4)
都市計画法における公園の配置計画は、その都市の規模や、人口により様々な種類の公園が配置計画される。住民に身近な公園として、
「街区公園」「近隣公園」「地区公園」がある。
住区レベルにおける「街区公園」と「近隣公園」は、1近隣住区(100ha・人口10000人)あたり、それぞれ4ヶ所と2ヶ所が配置され、
「街区公園」は誘致距離250m、公園面積0.25ha、「近隣公園」は誘致距離500m、公園面積2haを標準として配置される。
地区レベルにおける「地区公園」は、4近隣住区(400ha・人口40000人)あたり1ヶ所配置され、誘致距離1km、公園面積4haを標準として配置
される。
また、街区公園、近隣公園、地区公園を総称して基幹公園という。



第二章 アンケート調査
調査対象校区の選定(OHP5)
大分市内の小学校区から、「田尻校区」、「大道校区」、「日岡校区」の3つの校区を選定した。それぞれの校区の特徴として、
・田尻校区…郊外型の住宅団地で、日常的な活動が考えられる。2つの住宅団地からなり、それぞれ高台に位置している。(図1)
・大道校区…大分市中心部付近にある住宅地であり、非日常的な生活が考えられ、また国道やJR線、高速IC、等のインフラが集中している。
・日岡校区…区画整理により、都市計画法における、地区レベルの公園の配置計画が行われている。

調査方法(OHP6〜8)
アンケート用紙が校区内に均等に分布するよう、20の街区を任意に選定し、1つの街区に5枚の用紙を配布した。各校区100部、計300部を
配布した。
図1 図2 図3

アンケート内容(OHP9)
アンケート内容は住民に関する一般的な項目と、各公園について「公園の認知とその利用」に関する質問事項について記入してもらう。
質問1では、公園がその場所にあることを「知っている」か「知らない」かについて質問する。質問2では、「知っている」公園につい
て、なぜその公園を知っているのか、その理由を認知理由項目から1つ選んでもらう。質問3から質問7は、公園の利用に関する質問項
目で、利用回数や利用目的などの質問項目について記入する。

回収結果と回答結果(OHP10)
各校区に100部、計300部を配布し、回収されたのは255部であった。有効回答数は224部であった。回答者の属性をみると年齢層、職業、
居住形態、居住暦から、校区内を生活圏として熟知していると考えられ、分析にことが可能であると判断した。



第三章 データ作成
データ作成(OHP11)
ゼンリンのZ-mapを基図に、公園の位置とアンケート調査地点をGISにプロットした。そして大分市公園緑地集計表を用い、公園名称、公
園面積の属性データを、またアンケート調査結果を調査地点の属性データとして用いた。これらのデータはそれぞれリンクされ、検索解
析が可能である。



第四章 分析

認知圏域の設定(OHP12)
公園が距離の増大によって、認知率がどのような変化を示すのかを把握するため、歩いて1分を距離80mに換算し、公園を中心に,
・3分圏域(240m)
・6分圏域(480m)
・9分圏域(720m)
・12分圏域(980m)
・15分圏域(1200m)
・15分圏域以上
の圏域毎に認知率とその圏域内の認知理由の割合を算出する。
  *認知率とは公園を中心としてどのくらいの人がその公園を認知しているのか、その出現頻度を圏域毎のアンケート回収率で割っ
た率とする。

距離圏域における認知率と認知理由の割合(OHP13)
距離圏域における認知率と認知理由の割合を、各校区別で把握考察する。X軸が距離圏域、y軸が割合を示しおり、距離の増加と、認知
との関係、またその認知に与える認知理由との関係を示します。認知率の変化は田尻校区では距離が増大するにつれて、認知率が減少し
ていきます。他の校区でも同様に距離の増大により認知率は減少を示す。また、距離圏域毎で、認知理由が認知率に影響を与えているこ
とが伺える。



第五章 認知圏域の視覚化

認知空間の視覚化の方法(OHP14)
認知空間の広がりを視覚的に把握するため、GISの拡張機能であるSpatialAnalystのサーフェス作成機能(補間)を用いて、認知圏域図
を作成し、認知構造の視覚的分析を行う。
※GISのサーフェス作成機能は2種類あるが、本論文ではIDW(InversDistanceWeighted)インターポレータ用いた。IDWインターポレー
タはある固定点から、入力ポイントが離れているほど、固定点からの影響が少なくなるという想定に基ずきサーフェスが作成される。
IDWは書くセル(グリッド)に近いポイントにより大きい値を割り付けて表示出力され、一定数のポイント又は全ポイントを使い計算さ
れる。

認知圏域の広がりと認知理由の分布(OHP15〜OHP17)
GISの機能を用いて認知圏域の広がりと、認知理由の分布を地図上に表示した。青の三角が公園の位置を示し、公園を取り囲む範囲がそ
の公園の認知空間を示し、認知理由はインデックスにより、その分布を示す。
大道校区のなかで特徴のあった公園を2つ示す。大道校区中央には、片道2斜線の「国道10号線大道バイパス」が通り、インフラによっ
て認知が分断されているのが伺える。また、認知理由の分布は公園周辺は赤色に、公園から遠くになるにつれ黄色が目立ってくる。(OHP15)
田尻校区では、認知の範囲が東と西で分断されているのが伺える。これは田尻校区が高台にあり、2つの住宅団地が2分されているから
であり、これにより認知は地理的な影響を受けると考えられる。(OHP16)
日岡校区にある、公園面積の小さい公園の認知範囲は、公園周辺の一部のみであるのに対し、公園面積の大きい公園の認知範囲は、その
校区全体に拡がっているのが伺える。これにより、認知は公園規模による影響を受けると考えられる。(OHP17)

図1 図2 図3

まとめ(OHP18)
距離圏域における認知率と認知理由の割合から、@認知率に与える認知理由の影響は距離によって変化し、その規則性が見られた。
また、GISを用いた視覚的把握から、@認知は地形やインフラ、また公園規模の影響を受ける、A認知の発生場所を捉え、それがどのよう
に拡がり分布しているのかを視覚的に捉えることができた。