第10回東アジア建築デザインキャンプに参加
佐藤 誠治
第10回目を迎えた密陽大学のデザインキャンプに10名の学部生・大学院生を引率して今年も参加した。
今年は日本からは大分大学のほかに九州大学から5名が参加した。中国からは上海同済大学から7名が参加
し、韓国の学生を入れて全部で50名であった。また10年目の今年は、日中韓の著名建築家をそれぞれ1
人ずつ招いて建築レクチャーを実施した。日本からは栗生明氏が「建築と環境」と題して講義した。氏の代
表作である植村直己冒険館や長崎の原爆資料館などをもとに熱のこもった講義に参加者は大きな感銘を受け
た。
栗生先生の講義に真剣に耳を傾ける参加者
昨年末に密陽大学は新たなキャンパスに全面移転しており、真新しい建築はまぶしい限りである。日本の
大学、とりわけ国立大学の建築のゆとりの無さは残念ながら国際的に有名である。それと比べると、ゆった
りしたキャンパスの面積もさることながら建築の計画とデザインの斬新さは日本の大学建築を知っているも
のとしてはため息をつかざるを得ない。昨年と同様に、今年も大学の寮の食堂を全面借り切りで実施したが、
宿舎の寮室とエレベーターで直結しているので便利さはこの上ない。
密陽大学の新キャンパス風景
今年の課題は密陽近郊の中山間地の集落に芸術家の生活と創作のためのゾーンを作り上げようというもの
である。韓国の農山村は日本と同様に過疎の波が押し寄せ、また高齢化にあえいでいる。課題は密陽市の行
政担当者の現地説明によって極めて現実性のあるものと理解されたが、一方では崩壊の危険と隣り合わせの
農村コミュニティに新しい芸術家のコミュニティがどのような活力を付け加えることが可能なのかが問われ
ることになったのである。
日本ティームの記念写真 熱心に取り組む学生(1)
熱心に取り組む学生(2) 熱心に取り組む学生(3)
途中の1日を利用して、安東の鳳停寺(ボンジョンサ)を訪問した。隣接する栄州市にある浮石寺(ブソクサ)
の高層が紙で作った鳳を飛ばして到着した地に寺を創建したと言い伝えられているのが鳳停寺といわれている。
作家の立原正秋の生誕の地とされているこの寺の霊山庵はそのプロポーションのすばらしさ、そして韓国らしい
空間のひねり具合は建築家、建築学者を引きつけてやまない。安東の地はこの鳳停寺以外にもすばらしい寺院と
集落の景観の数々が国際的にも注目されている。
霊山庵 鳳停寺本殿
密陽の地で3国の学生がミックスしたグループは、コミュニケーションの困難さを克服して優れた作品を残し
てくれた。国際交流の大きな成果を残したデザインキャンプであった。