第2章 ソウル市における都市景観関連施策
1. ソウル市の都市概要
1.1 ソウル市の位置・地形・地勢
都市の位置を地勢や地形と関連付けて選定していくというシステムは、生活環境の実際的な意味とともに、都市空間の骨格を明瞭にし、しっかりとしたオリエンテーションを与えることにもつながった。西欧の中世都市では教会と城壁を骨格としたまとまりを人工的に形成したが、東アジアの旧都はまずまとまりを与えうる地形を見出したということになる。ソウル市も600年以前に風水思想から影響を受けて、建てられた都である。
ソウル市は朝鮮半島の西側における中央部に位置している。位置は東経126゜59´,北緯 37゜34´であり、延長距離は東西間に36.78q、南北間に30.30qである。ソウル市の自然環境をみると、北局は北漢山があり、そのも地脈に北岳山と仁王山が位置している。南坊は冠岳山があり、北漢山と冠岳山の間の真中には南山がある。その間には多い丘陵地と小さい山が散在して、土地の起伏が激しい。また、北方の北韓山、南方の冠岳山、ソウル市外の西方に位置する徳陽山と東方に位置する竜馬山は、風水的意味を持つ山とされ、さらに標高も高いことから、景観的意味も非常に重要となる。そして、東西には長さ41.5km・面積33km2の漢江(全長467.7km、流域面積22,994 km2)が貫いていて、緑地と水系が調和している自然景観を形成している。漢江は、首都の上水源であり、ソウル市の中心軸とされ、漢江の沖積地に発達する 汝矣島などには、高層化されたビル群が形成されている。また、ソウル市のオープンスペース、代表的な景観資源として位置づけられる。一方、 1994年現在、漢江周辺には166個のアパート団地が開発され、再開発、再建築によって高層化、高密化が引き起こされ、景観的、もしくは環境的な様々な問題が引き起こされている。
1.2 ソウル市の人口及び住宅
1961年、ソウル市の人口は2,577,000 人であったが1991年の10,905,000人に増加して30年の間に4.23倍に伸張した。全国での割合は1961年の10.0%、1971年の17.8%、1981年の22.4%、1991年の25.2%と増えている。しかし、1997年、ソウル市の人口は10,389,057人で全国の人口の22.2%を占めている。また、年平均の人口増加率は1960年代では8.55%、1970年代では2.32%と低くなった。ソウル市の統計年報によるとソウル市の人口は1992年を起点として連続けて減少し、このような趨勢は続くように見える。
ソウル市の住宅は1990年以後、毎年10万戸以上の住宅が建てられてきて、1997年現在には、20階以上の超高層アパートは292棟(25,156世帯)となった。1997年現在、住宅類型別推移をみると一戸住宅が759,325戸(39.3%)、アパートが809,576戸(41.9%)、連立住宅が159,263戸(8.2%)、多世帯住宅が203,984戸(10.6%)である。すなわち1997年現在、一戸住宅はソウル市の住宅の約1/3にすぎず、多世帯住宅・連立住宅・アパートなどの共同住宅が全体の住宅の63.3%であって、その比重が年々高くなっている。結論的に共同住宅、特にアパートの数は引き続き増加すると予想される。良い環境や高い品質の住宅を要求する住民と不足する宅地などの与件を考慮してみると共同住宅は引き続きソウル市の中心的な住宅形態になるだろう。
1.3 ソウル市の都市計画
「都市計画」とは,都市という対象区域において目標とする都市政策の達成をはかり,理想的な都市空間を実現するために行う総合的な都市構成の計画である。その中身は経済的,社会的な計画そのものではなく,物的手段によってなされ,建設される施設の計画に限定した意味をもっている。すなわち、「都市計画」の実態は,「物的計画」(フィジカルプランニング)を中心としたものであるが,しかし経済的,社会的な計画との整合がなければ,真の都市計画とはいえないということである。都市計画の基本理念というのは都市における政治・経済・社会・文化などの様々な社会活動がもっと合理的に行われるように生活環境を良好に維持するための総合的な市街地造成計画と言うことができる。それで都市計画を樹立するためには周辺地域との関係に関する分析が必要と思う。周辺地域の空間的範囲は日常的に接触する区間から全国土、全世界まで含める。それで各区間範囲に関するあらゆる計画は都市計画の重要な関連計画ということができる。空間計画は計画対象区域の区間的範囲によって国土計画、地域計画、都市計画、団地計画、個別建築計画などに区別ができる。
韓国の区間計画は国土・地域の空間範囲の中で国土建設総合計画法、国土利用管理法、首都圏整備計画法によって樹立される計画と都市・団地の区間範囲の中で都市計画法、個別施設関連法、都市再開発法、土地区画整理事業法、建築法などによって樹立されるいろいろな計画に構成されている。景観管理も各種用途地域・地区の中で国土及び都市の次元の土地利用計画法、建築物などの様々な物的な要素に適用される個別法を通じて行なわれている。
ソウル市の都市計画も大きく3段階の体系で構成されている。最上位の計画として都市の長期的な発展方針と未来像を示した都市基本計画があり、また、中間段階の都市計画としては都市計画に法的拘束力を加え、都市計画を具体的に定める都市計画がある。そして、最下位の計画としては都市計画を実行するための決定告示、地籍告示、事業施行計画、年次別執行計画などがある。各段階別の都市計画は内容、法的拘束力、詳細の程度、計画期間など、様々な面で異なっている。ソウル市における都市計画の種類としては区域、地域、地区、都市計画施設がある。
1.3.1 区 域
区域の種類は特定施設の制限区域、市街化調整区域、詳細計画区域、広域計画区域、開発制限区域、都市開発予定区域などがあり、ソウル市には制限開発区域(一般的にはグリーンベルと呼ぶ。)が166.82ku指定されている。
具体的に、開発制度区域は都市の無秩序な拡散を防止し、都市周辺の自然環境を保全して市民の健全な生活環境を確保する機能する。また、安保上、都市開発を制限するための目的として首都圏開発制限区域を最初に指定したのは1971年7月30日、建設部告示第447号で、ソウル市の外郭総面積129.4kuを決定告示したものである。これは1960年代以後3次の経済開発5個年計画の成功的な効果をもたらした国家的立場でのソウル市の量的成長と共に急進的な人口の集中をもたらし、また、これによる施設の集中と人口の過密化を防止して環境を純化させる目的で当時の都市計画法を改正し、開発制限区域を法制化して実施するようになったものである。それによって市の外郭とソウル市都市計画区域である京畿道の一帯を含む総面積129.4kuの緑地に対してこの地域を開発制限区域に設定するようになったのである。以後、既に告示された建設部告示第447号の開発制限区域に対して、建設部告示46号では既に指定された地域の現状を徹底的に把握し、境界線を確認するとともに境界標石を設置し、管理に万全を期するのである。しかし、境界線が既存施設の一部を貫通したり隣接する場合と、道路、河川、山林が良好な地形地物に隣接する場合があるため、計画線に隣接した施設および密集部落は除外し、森の状態が良好だったり、標高が高い山地は追加するなど、これを調整したのである。
以後1976年1月28日大統領令第7963号によって改正された都市計画法施行令及び1976年4月2日建設部令第179号による施行法則に従って開発制限区域の細部規制を定め、その後1995年1月20日 高陽市、南楊州市の区域が分離され、これ以前209.20kuだったソウル市の開発制限区域は現在、面積は166.82ku(市全体の27.6%)となっている。図2−4はソウル市における各区の開発制限区域の現況である。
1.3.2 地 域
地域は住居地域、商業地域、工業地域、緑地地域など、大きく4つの地域に分類できる。住居地域は住居轉用地域、一般住居地域、準住居地域に分類される。また、一般住居地域は1種、2種、3種に細分される。商業地域は中心商業、一般商業、近隣商業、流通商業に、工業地域は轉用工業、一般工業、準工業地域に、緑地地域は保全緑地、生産緑地、自然緑地などの13種類の地域に分類されるが、現在、ソウル市ではこのうえ10種類の地域が指定されている。表2.2はソウル市における用途地域の各指定目的である。
1997年現在、ソウル市の都市計画地域の面積は総605.95km2である。各用途地域別の構成比をみると、住居地域が49.8%、緑地地域が41.9%であり、市街地面積のほとんど占有している。また、商業地域と工業地域はそれぞれ3.5%、4.8%に過ぎない。ソウル市の用途地域の現況及び推移は表2.3である。
1.3.3 地 区
用途地域は都市全体の土地利用計画の下に都市機能、密度、用途配分と関連がある。一方で、用途地区は都市の部分的・局部的な土地利用と関連がある。用途地区は用途地域の機能を補完させるために個別の目的を持っている。用途地区は用途地域の上に重複指定され、また、一ヶ所に2個以上の地区を重複指定することもできる。
地区は風致地区、美観地区、高度地区、防火地区、施設保護地区、保存地区、空港地区、都市設計地区、防災地区、娯楽地区、自然架落地区、アパート地区などの12個地区に区分されている。ソウル市では都市計画法上の指定ができる12種の用途地区のうちに防災地区、娯楽地区、自然集落地区を除外した9種の地区が指定されている。表2.4は各用途地区の指定目的である。そして、表2.5はソウル市における用途地区の指定現況である。
1.3.4 都市計画施設
都市計画の内容は都市計画区域内における土地利用計画・施設計画などに対する規制と事業施行という二つの軸を中心にして運営することである。前者は地域地区制と建築規制を通じて好ましい市街地の形成を誘導するためにあり、後者は交通施設・供給処理施設・教育文化施設などような都市の公共的な基盤施設の適切な供給を通じて都市のいろいろな活動と市民生活における能率性・便利性を高めさせることである。この二つが問題がなく、相互補助の関係になれば都市の発展に寄与するはずである。すなわち、都市発展と都市施設は深い関係があるために、都市の公共施設の建設が効果的に進められなければ、健全な都市発展は望めない。
都市計画施設は道路、広場など都市計画法2条に52個の施設があるが、ソウル市には36種65,855箇所、318,8kuが決定されている。表2.6は都市計画施設の種類である。
1.3.5 ソウル市において用途地域の一般的な特性
■ 一般的な住居地域の特性
ソウル市の住居地域を開発形態の側面から分類すると朝鮮時代から存在してきたところ、土地区画整理事業によるところ、新開発アパート団地、高地帯を中心とした不法・不良住居地が個人に払い下げ今日まで至ったところなどに大別される。
土地区画整理事業によって開発された地域は該当地域だけをみると公共施設と団地内の道路が比較的によく整理されている。しかし、周辺地域を考慮してみると地区内に必要な施設が不足であるか欠如しているところが多くあり、都市全体からみると他地域をつなぐ幹線道路体系が不良であるところが多いのである。
高地帯の不良住宅の再開発は、今後からもソウル市の住居環境と機能を決める際、大きな変数として作用すると考えられる地域である。すなわち、現在、不良な道路事情で住民の乗用車所有が不可能な高地帯でも住宅改良再開発事業などによってアパート団地に開発される場合、多くの家庭では乗用車を所有しようとする傾向が現れると考えられる。従って、住宅改良再開発の可能性の高い丘陵地に立地した不良住宅地では深刻な道路交通問題が発生する恐れがある。その理由は、これらの地域と職場が立地している場所をつなぐ道路の建設が地形的制約、市街化の与件などで限界に達しているからである。なお、現在も既存の住宅市街地と比べて密度が高いため、新しい再開発の際、地区内に追加で必要な公共施設を建設するべきという困難さがある。
■ 一般的な商業地域の特性
ソウル市は1995年現在1つの都心と4つの副都心の形態に開発・発展されているが、副都心は江南と永登浦を除いては機能を果たし尽くせなく、当初の目標である分散の効果を抑え得ることができていないのが事実である。
各生活圏の球心点の役割をする副都心あるいは地域中心が十分な規模で形成されていないなめ、少数の中心にだけ都市機能が集中される現象が現れている。このような副都心形成の不振は基盤施設の体系的整備など市街地の整備戦略の不在からよるものである。中央に位置している商業地域は600年前から形成された市街地を中心に当初には住居地域であった場所が近代に至っては各種政府機関、業務施設、販売施設が入って商業地として変身したのである。
江北の都心は道路の状況を見ると接近性がよくないと考えられる。すなわち、南・北は山に囲まれているため、道路建設が限界に達していて、東・西なお2〜4個の幹線道路のみで他地域とつなげている。
市民の所得水準の向上はより質の高い商業施設を要求するが、都心と江南一帯の副都心周辺地域を除いてほとんどが自然発想的な小規模近隣商業施設に依存している。それは、地区中心の商業地域が既存の路線商店街を中心に指定され、商業面積の規模面からら集的な利益が期待できないという点も重要な要因になっている。従って、都心と一部の副都心に位置した大型デパートに対する依存度が高くなっている。
■一般的な工業地域の特性
ソウル市の工業地域は、すべての準工業地域であるが多くの部分がだんだん住居機能に変わっているのが現実である。すなわち、工場が移転されて工場の敷地にアパート団地の建設は住居環境の側面から多くの問題を抱えている。景観的にも工業地域での高層アパート団地の建設は大きい問題を発生させている。ほとんどの工場は零細企業であり、地価のため市外の移転が激しくなっていることが考えられる。
■ 一般的な緑地地域の特性
ソウル市の緑地地域は地形的な与件では山林・河川を含んでおり、緑地地域の総面積は全体の都市計画区域の47%(313.33km2)に至る。緑地地域のほとんど(309.75km2)は緑地空間保存の範囲内で制限的な開発ができる自然緑地であり、農業的生産のため、開発を留保している生産緑地は3.58km2にとどまっており保存緑地は指定されていない。なお、開発制限区域の面積は総166.82km2であり、林野108.96km2、農耕地23.21km2などと構成されている。
緑地地域は事実上将来の開発留保地の性格が強いことにも関わらず、大規模の宅地開発事業などに専用され1985年から1991年の間50.5%が減少された。ソウル市の緑地地域の中で河川周辺の緑地などを除くと残っている緑地の量が少ないため都市内での貴重な自然環境の保存という側面で緑地の保存が要求される。
2.ソウル市の都市景観関連制度
都市景観関連制度とは、‘景観阻害要因を探って、現在の優れた景観を保存し、望ましい景観を作り出す’ための制度と言える。景観関連制度は多様な地域環境や歴史や文化などにより各地域によって異なってくる。例えば、都市景観は街路のような公共空間だけでは好ましい景観を構成することはできない。つまり、都市景観は地域の環境や歴史などによって形づくられた街並風景によって左右される場合が多い。
現在、韓国には特に、景観管理を目的として制定された法規はない。それは、ソウル市でも同様である。だたし、ソウル市における景観管理は空間計画の土地利用計画法による用途地域制を基にして用途地域での許容行為および建築物・構造物の形態と規模を規制しているのが現実である。ソウル市の景観管理は、下記したように大きく2つに分けられる。
@ 土地利用計画の基になる都市計画法と都市公園法による間接的な景観管理
A 個別法による事業を通じた直接的な景観管理を都市の街路環境や建築物などのそれぞれの物的要素に適用されている。
現在、上記のようにソウル市では都市計画法と都市公園法によって土地利用計画が行われている。土地利用計画法による地域・地区の指定と建築規則、計画および設計、改善事業、許容行為の制限などに景観管理が含まれているため、景観管理も各法によって間接的・独立的に行っている。各用途地域・地区での指定目的に景観や風致などの内容が含まれているものは都市計画法による風致地区、美観地区、都市設計地区、詳細設計区域、保全緑地地区と都市公園法による都市自然公園、景観緑地などがある。また、各種用途地域・地区の中で都市の街路環境と建築物などそれぞれの物的要素に適用されている個別法としての建築法、文化財保護法及び文化財周辺の建築規制、屋外の広告物管理法、環境影響評価法の事業などがある。このような事業を通じて直接的に景観管理をしているのも現実である。
本章ではソウル市の景観関連制度に関する文献を通じて景観管理上の問題点を把握する。そのため、まず、上記した2つの景観管理方法の中で都市景観に大きい影響を及ぼしている都市計画法の5つ地区の現況を通じて景観管理と関連がある部分から景観管理上の問題点を把握する。そして、各種用途地域・地区の中で都市の街路環境と建築物などそれぞれの物的要素に適用されている個別法としての建築法や文化財保護法及び文化財周辺の建築規制、屋外の広告物管理法、環境影響評価法などのそれぞれの現況を通じて景観管理上の問題点を把握する。
2.1 都市計画法による景観管理
都市計画法による地域、地区及び区域指定は都市の空間構造を決める主要な手段であり、都市の景観に及ぼす影響も大きい。都市計画上の用途地域、地区に関する規制の中で、都市景観管理を含んでいるのは、美観地区、風致地区、都市設計地区、詳細計画区域などである。
2.1.1 美観地区
1) 景観関連の内容
美観地区は都市景観を保存維持するため、必要に応じて指定され、主に商業地域、観光地や史跡地、古宮、伝統家屋、幹線道路に接している地域が指定されている。具体的な内容とは、1992年に改定した都市計画施行令では美観地区を1〜5種に細分し、各種別指定の目的を明記した。美観地区の種別細分に関する規定は都市計画法施行令第16条の2〈地区の細分〉に新設され、種別指定の目的は表2.9に示すとおりである。美観地区における規則内容は該当の建築条例で定められた規則に従う。
規則項目は@敷地、A用途、B建築物に大きく3つに区分される。具体的には敷地面積の最小限度、敷地内の空地、建築物の用途、建築物の階数、建築物の規模、建築物の形態、当該建築物の付属建築物などが項目の内容である。そのうち、敷地面積の最小限度、建築物の階数、建築物の規模は種別に異なり、敷地内の空地、建築物の形態、当該建築物の付属建築物に関する規定は、各種別に共通の規則が設けられている。表2.10は美観地区内の建築規制である。そ
いて、図2−5はソウル市における美観地区の指定現況である。
2) 指定現況
美観地区の現況は路線/集団、用途地域別、道路幅員別に分けてまとめる。
A. 路線/集団美観地区の現況
ソウル市が1966年1月に初めて美観地区を指定して以来、ソウル市内の美観地区は1997年現在、252ヶ所である。そのうちに路線美観地区は242ヶ所、集団美観地区は10ヶ所であり、全体美観地区の規模は約22.3 km2に至っている。全体指定面積の50%ぐらいは土地利用度が高い都市、副都心の商業地域や幅員40m以上の幹線道路辺に主に指定されている。種別としては、第4種美観地区が104ヶ所(34.5%)となっており大きい部分を占めており、第2種(24.2%),第1種(18.3%)、第5種(6.6%)が続けている。路線美観地区の構成比をみると、第4種(42.5%)と 第3種(31.0%)が高い比率を示しており、集団美観地区の場合には第1種が全体の 50%を占めしている。
また、第3種美観地区は、ソウル市の東西を走る二つの都市高速化道路に沿って指定された場合が多いので、23.3kmや32.6kmという非常に細長い地区もある。しかし、全体的に見ると、第4種美観地区の場合が比較的に細長く指定されていることが分かる。表2.11は 路線・集団美観地区の現況である。
B. 用途地域別の現況
美観地区に指定されている地区の用途地域別の現況は、第1種の場合、商業地域が99.5%で大部分を占めている。第2種は住居地域が53.1%、商業地域が43.4%であり、この二つの地域が同程度の比率を示している。第3種の場合、住居地域は43.6%で一番高い比率を示しているが、他の種別とは違って、緑地地域では39.9%という特徴が見られる。第4種の場合、住居地域が88.8%の構成比を示している。第5種の場合も住居地域では 99.6%という高い比率を示している。
C. 道路幅員別の現況
路線美観地区242ヶ所の道路幅員は大路(25〜40m)が64%,広路(40m)が31%である。結局、全体の95%が大路及び広路によって占められている。これを種別に分けていると、第1種の57.6%、第3種の64.1%が40m以上の広路に指定されている。第2種の大路の面積比率は64.1%、第4種の大路の面積比率は80.9%、第5種は大路の面積比率は67.8%で、全体的に大路の面積比率が63.9%で大路の沿道に路線美観地区が指定されていることが分かる。
表2.13はソウル市における美観地区の道路幅員別の現況である。
3) 景観管理上の問題点
美観地区は、1939年の朝鮮市街地計画領で最初に法制されたもっとも古い用途地区の1つであり、ソウル市においては都市景観に関する最初の手段でもある。しかし、現在の美観地区は最初の制定時の根本的な目的とは異なって、美観地区内の実態や文献などを見ると、様々な問題点が取り上げられる。
@美観地区の概念が不明確
概念も時代的な状況と主観的な判断により変えられており、各時代によって大きい差が見られている。そのため、時代と伴って建物の形態が変わっており、景観的に大きな阻害になっている。例えば、第1種と第2種の指定目的ではそれぞれ利用度が「極めて高い」商業地域と「比較的高い」ところと明記されているが、「極めて高い」と「比較的高い」を区分が曖昧である。また、第3種は観光地及び史跡地の美観維持が目的になっており、第4種では固有の建築様式と伝統建築美の維持を目的としている。しかし、実際には史跡地と伝統建築美が共存するとことが見られることができることを考えれば二つの概念も多少曖昧である。第5種の場合も第1種あるいは第4種を除いたすべての地域の美観維持を目的としており、対象地域や目的が具体的ではない。
A 規制の方式における問題
規制は建築行為制限として行なわれている。しかし、このような方式は最低高さ(第4種が例外である)と最小敷地面積だけを規制しているため、高層ビル増加の原因になっている。つまり、美観地区の建物の高さが統一されていないのである。過去、美観地区制度が制定された時点では大きく、直立したの形態の建物が都市美観を改善すると考えられ、多く建設されたが、現在に至っては、このような建物が街路景観や都市美観を見苦しくする要因になっている。そこで、適正規模あるいは最大規模に関する規制が必要になってくる。また、建築物の様式、構造、形態、色彩、材料などに対する制限をする場合もあるが、韓国固有の建築様式や住居性格環境の伝統的な美観維持が必要である場合には限定している。(ソウル市条例第46条)
規制項目は敷地面積の最小限度、建築物の規模、敷地内のなど建築法で定められている規制要素の中で規制を強化する目的で選択されたいくつの要素に過ぎないため多様な景観管理課題に対応するには不足してりいる。
B 地域特性を生かさせない規制
現在、美観地区の建築基準は、地域の特性と関係なく種別に画一的なものとして適用されている。多様な指定目的とは異なって実際には規制内容においては対象地別に大きい差はない。例えば、同じ種の美観地区であっても、地域によって道路の幅や大地規模、建築物の高さなどが異なっているにも関わらず、同じ建築基準が適用されている。路線美観地区の場合にも指定の長さによって多様な用途地域が含まれているが、 同じ内容の規則が適用されている。地域特性を考慮した指定がなされてないと考えられる。
表2.13は建築基準の種別/地域別の性格を表したものである。
2.1.2 風致地区
1) 景観関連の内容
風致地区は都市の自然風致を維持するため指定されたもので、自然景観が優れて豊かな緑地が保存されている重要な山地の周辺の丘陵地や漢江の周辺などの自然環境と市街地の境界地域に指定されている。具体的な内容は、自然景観の眺望を確保し、自然と調和する緑地を敷地内に確保するため、形質の変更および自然景観を阻害しない範囲内で建築行為が行なわれるように規制している。しかし、都市計画法18条1項1号に地区の指定にその規定されているだけで規制内容と指定基準は施行領やソウル市建築条例などには提示されていない。
風致地区における規則内容は該当の建築条例が定める規則に従う。規則項目は@建築物の用途、A高さ及び敷地内の造景、B敷地面積の最小限度などである。風致地区における具体的な建築規則内容を表2.15に示す。
2) 指定現況
1997年現在、ソウル市が指定した風致地区を指定目的別に区分してみると、全体24個地区16.32 km2の中、自然公園および近隣公園周辺に緑地・公園保存のため14地区(11.4km2)、漢江での眺望を確保するため6の地区(1.4 km2)、都市巨大化を防ぐため開発制限区域の近隣に指定された4個地区(3.5 km2)に区分される。風致地区は一般住居地域に指定される場合が多く、城北地区, 南山地区, 平倉地区には専用住居地域が一部含まれている。地区別の指定面積の規模を見ると、開発制限区域に連接した 悟柳地区が全体指定面積で12.68%となり最大の面積を示している。さらに、水踰地区, 仁王地区, 南山地区は高度地区に重複指定されており、城北地区, 南山地区, 金湖, 玉水地区は第3種美観地区に指定されている。水踰地区と城北地区のように公園を持つ地域は道路や地形地物により分断されていることもある。
次のページの図2−6はソウル市における風致地区の指定現況である。
3) 景観管理上の問題点
風致地区は1941年、朝鮮市街地施行領により20個地区、約29,268,000uが指定されて以来、ソウル市の景観に大きい影響を与えてきた用途地区である。しかし、風致地区制度の制定当時の都市開発状況に関する認識は大きく変化しており、一時的で部分的な法制定としては現在の風致地区の運営にはいくつの問題点を抱えている。
@ 一般住居地区における指定の問題点
風致地区は一般住居地区にほとんどが指定されているため用途地区で請願が一番多い地区である。1999年11月10日、ソウル市の23風致地区でのホテル新築許可にともなう指定条件が発表され、住民たちは生活便宜のためではなく商業性のための解除であることに対して大きな反発があった。それは、地区のほとんどが不良住宅地域にも関わらず、一般住宅としての改築・再建築を許容しない方針に対しての反発であると言える。30%という低い制限建蔽率により敷地面積の最小限度規制も600uで非常に高く、小規模の敷地の開発が不可能である。そのため、多くの敷地がそのまま放置されており、駐車場、小さい畑などに利用されているため住居景観の悪化の原因になっている。
このように自然景観を保存しようとするあまり、一般住居地域の開発に関する許可が厳しく規則されているため地区景観が不良化されていることも現実である。例えば、漢江周辺にある黒石洞の本洞の場合は国立墓場が隣接されてあり、よい自然景観を持っている都市景観上重要な地区である。しかし、遠距離から見る景観は周辺の良好な自然環境および低層住宅が混雑しているため、比較的に良好に見えるが地区内の詳細な土地利用現況を見ると老朽な建築物が多いので地区景観の阻害要因になっている。
A 規制内容の単純性
風致地区内での規制内容は建蔽率が30%、容積率は90%以内で階数は3階(12m)となっており、地区内のすべての敷地に敷地面積の30%以上を造園面積として確保するように規制している。このように、地区特性を考慮していない単純画一的な規制内容のため16.32kuに至る広い地域がそれぞれの景観特性を生かせないままである。図2−6はソウル市における風致地区の指定現況である。
2.1.3 高度地区
1) 景観関連の内容
高度地区は都市の環境形成及び土地の高度利用と増進のため建築物の最高限度及び最低限度を規制する必要がある地区に指定される。現在までの指定目的は自然環境の保護及び眺望確保、公共施設の保護、空港施設の保護及び航空機の安全性の確保、重要文化財及び伝統韓屋保護、象徴的な建築物周辺の都市景観保護、観光道路沿線の眺望確保、開発制限区域の巨大化防止などの多様な必要によって指定されている。規制は1992年に改定された建築法施行領第70条により高度地区内の建築制限が行なわれている。
建築法施行領第70条 :
@ 最高高度地区内では都市計画が決める高さを超えて建築物を建てることはできない。ただし、地方建築委員会の審議で市長などが地区の指定目的に違背しないと認められた場合には例外である。
A 最低高度地区内で当年地区の都市計画で決める高さに達しない建築物は建築することができない。ただし、地方建築委員会の審議で市長などが地区の指定目的に違背しないと認められた場合には例外である。
ソウル市の場合、重要景観の眺望を確保する必要がある場合には建築物の最高高度を制限し、都市の立体性と建物の象徴性を強調する必要がある場合には最低高度を指定している。
2) 指定現況
ソウル市は都市の環境形成及び土地の高度利用とその増進のため、建築物の高さの最低限度及び最高限度の規制が必要なところに高度地区を指定している。指定された地域の性格を大きく分けてみると象徴的建築物の周辺、伝統建築物の周辺、主要自然景観物の周辺、 観光道路辺、空港施設の周辺である。現在、ソウル市の高度地区指定は12の地区89.05km2に至っている。また、1999年8月、ソウル市の発表によると城北区の貞陵洞820-17一帯(66,364坪)を新しく最高高度地区として指定する予定である。現在の最高高度地区の指定面積は409,740,070 km2である。
3) 景観管理上の問題点
高度地区は目的が明確であり、規制内容が単純であるため、現実的な効果は大きいのだが、地区別に地形的な特性を持つことを考えれば多様な地域景観問題に対応する際の問題点及び運営上の問題点がある。
@ 高さ基準の根拠性の不足
ソウル市は地形的な特性があるにも関わらず、指定目的だけに重視するあまり、現実では、広い地域内にある低地帯にも関わらず、周辺近隣高地帯と同様に3階あるいは5階など一律的に高度制限がなされている。これは高さ基準の根拠性の不足から起因した問題である。
A 運営上の問題点
景観問題を解決するためには他の地区の制度より高い効果が表れているにも関わらず、1980年以後、南山周辺の指定以外の指定はほとんどなく、高層高密度の再開発・再建築事業による景観破壊を招いた。
1999年、ソウル市は城北区貞陵洞一帯を最高高度地区と指定する予定であり、冠岳山周辺奉川, 新林洞一帯及びソウル大学の冠岳山キャンパスを高度地区及び風致地区と指定する予定である。二つの地域は丘陵地という特徴を持っているが、ソウル市の総体的な景観とスカイラインを顧慮し、周辺地域との調和性を考えるべきではないかと思う。
また、ほとんどの地域が他の地区と重なって指定されており、住民に大きい被害が与えられている。例えば、南山地区は南山景観管理区域と重複指定、北漢山地区の場合は風致地区としても重複指定されている。図2−7は最高高度地区の指定現況である。
2.1.4 都市設計地区
1) 景観関連の内容
都市設計地区は1980年、制度として初めて位置付けられて、都市の地区レベルの開発または再開発をコントロールする役割を負担すると共に、都市設計及び土地利用の位置・規模・形態などに関する長期的総合計画として、「都市の機能及び美観の増進」を目的とする。
すなわち、都市設計地区は都市の機能及び美観の増進のため、必要とするとき、指定ができる地区である。都市の機能及び美観のための長期総合計画として、都市計画による都市計画施設及び土地利用計画などを具体化し、建築物及び公共施設の位置・規模・形態と空間の活用を計われのと定義される。都市設計地区にもとづいて地域の特性を反映できるように各地区ことに別途の建築基準を具体的に表示した都市設計指針を作成・運営されている。
このようなことは、地区内の建築物及び外部空間の連係化のため総体的な指針を提示することに大きい意義があることを意味する。また、都市設計制度は美観の実現のため、美観地区よりもっと強力な手段となる。最近になって1995年5月の建築法及び都市計画法の大幅の見直しを通じて建築基準の緩和、公共の役割など、強力な役割が与えられた。
具体的な都市設計制度の内容を調べると
@ 都市設計の手続き
都市設計は、国家、地方自治団体または大韓住宅企社、韓国土地公社、その他建設部令で定める基準に適する者が作成する。その手続きとしては、地区指定日から1年以内に都市設計案を作成し、30日間の住民供覧またはく公聴会を開き、建設交通部長官の承認を受けなければならない。また、建設交通部長官が都市設計を承認した場合は、その結果を市長・郡守・区役所長に送付し、市長・郡守・区役所長はそれを公告しなければならない。
A 都市設計の作成基準
都市設計を作成するためには次のような基準に従う必要がある。
− 当該区域の位置及び環境などによる特性を最大限に考慮すること。
− 将来の都市開発方向及び目標が提示されること。
− 当該区域内の自然、社会、経済、文化、歴史的特性を考慮すること。
− 都市設計は基本構想、施行指針、都市設計図の3部門に区分して作成すること。
− 基本構想では、都市設計作成図書の表示内容が含まれること。
B 都市設計地区内の建集基準
都市設計地区内で建築される建築物については、都市設計が定める次の規定の観囲で、その建築基準が緩和される。
− 敷地の一部を歩道・緑地などの公共空地として提供する、もしくは、建築物内に造園を行う場合は、当該公共空地として提供された面積または建築物内の造園面積の3分の2を造園面積に算入する。
− 都市設計によって敷地の一部で、壁面線が指定されたり、建築線がセットバックされて指定されたりする場合、または階数が制限された場合の建蔽率は、当該地域に対する建蔽率の20%が加算される。
− 都市設計によって用途が制限され、敷地の一部が歩道・緑地など一公開空地として提供される場合、容積率は、当務地域に対する容積率の20%が加算される。
− 都市設計によって建築物の用途が指定された場合は、地域及び地区による建築物の用途制限は、適用されない.
− 都市設計によって合同開発が行われた場合や共同駐車場または歩行者通路と接する敷地の場合は、敷地内の空地規定を適用しない。
− 都市設計によって建築物の面積が制限される場合の建築物の高さは、道路の幅によって制限された建築物の高さに20%を加算する。
C 特別設計区域の指定
都市設計作成者は、次の場合特別設計区域を指定することができる。
− 公共事業の施行のため。
− 1筆の土地面積が10,000m2以上で大型建築物の建築が必要な場合。
− 2筆以上の土地面積の合計が15,000m2以上で、当該敷地の所有者が1人または2人以上の所有者が共同開発に合義した場合。
− 共同開発の場合(市長の勧告)
− 2筆以上の土地に一つの建築物を建築するよう規定している場合。
− 都市設計の内容に、自動車駐車場または歩行者通路を共同で利用するよう規定し、2筆以上の土地に建築物を同時に建築する場合。
2) 指定現況
1997年8月現在、ソウル市に指定された都市設計地区は18行政区における計62地区であり、面積は1,420,622 m2である。1990年以前は20地区19,593,347 m2だったが1994年、都市設計再整備後は9行政区で16地区、9,627,231m2になった。指定の現況からみると都市設計地区は1991年以後、新たな制度としてよみがえり、指定が増えていることが分かる。地区特性を分類すると、都心及び副都心の重要幹線道路辺、金浦空港の関門路、新市街地開発の重要幹線軸、特化した街路灯の大きく4つに区分される。また、都市設計地区の環境を設定する基準を調べると、既存市街地と新市街地整備の類型別特性を持つ地区は、主要幹線道路からの可視圏を境界として設定することに対し、新市街地開発の地区は開発事業区域を境界として設定されている。次のページの図2−8は都市設計地区の各区においての指定現況である。
3) 景観管理上の問題点
@ 概念上の問題
都市設計地区では、都市機能及び美観増進を指定目的としているが、実際においては、法の内容及び運用方法をみると建築法を基にして実施してきた結果、都市景観的な側面よりは建築的な側面に傾いている傾向がある。このような不明確な概念上の問題は、最近の制度化された詳細計画との役割分担において曖昧性を誘発している。すなわち、都市設計は地区特性を反映するのではなく、既存の都市計画範囲内で一般的・標準的な設計案を提示する性格を持っている。規制内容においても美観地区とほとんどが同じである。
A 指定面積の問題
広い指定面積による対象地区内の住民らの意見をまとめることが非常に難しい。計画樹立過程及び運営上、住民の紛争の恐れが大きい。また、地区整備に所要する公共部門の財政負担が大きくなり、都市設計の推進力を失う恐れがある。そして、巨大な都市設計地区は地区周辺に及ぼす影響も大きく、該当地区の隣接地区では高い開発需要による乱開発が行なわれ、都市管理にも問題が生じる可能性がある。つまり、景観上の問題を解決するには大きい問題を抱えているということである。
2.1.5 都市詳細計画
1) 景観関連の内容
詳細計画は1991年都市計画法の改定の際、始めて導入された制度で、既存地域、地区制の枠のなかで行われる区域の制度であるが、詳細計画の決定の際、同時に地域、地区、都市計画施設などが決定および変更可能であるということから地域、地区制や都市計画の再整備計画と同じレベルにある計画である。現行の都市計画上に定義された詳細計画の目的は都市計画区域の中で土地利用を合理化し、都市の機能・美観及び環境を効率的に維持・管理するためである。
詳細計画の導入の背景には既存の都市計画規則制度に様々な問題点があることや既存の開発事業法に一括した都市開発体系がないことがある。ソウル市のような既成市街地で詳細計画を必要する理由は既存の都市計画体系、すなわち、用途地域制だけでは最低環境基準として消極的すぎることにある。現在のような状況では社会環境の変化に対応ができる望ましい土地利用を得られない。建築物による立体的な市街地形成の方向を具体的に管理できないこいえる。
詳細計画の内容は都市計画法第20条の3第3項及び建設交通部の詳細計画樹立指針に明示されている。その内容をまとめると次のようになる。
@ 地域・地区の指定及び変更
A 都市計画施設の配置と規模
B 街区及び区画地の規模と助成計画
C 建築物の用途制限、建蔽率及び容積率と高さの最高限度・最低限度
D その他の建築物に関する追加事項(配置・形態、色彩、敷地内の空地、建築線)
E 都市景観助成計画
F 交通処理計画
計画の特性としては特定地区単位を対象に該当地域に限って適用される特定計画の性格を持った計画で、地域、地区の指定および変更が可能である。また、3次元形態の受容計画で、世帯および区画地の規模と建物の高さ、色計画まで受容する。別個別行為の際には適用できる建物の用途、建蔽率、容積率まで計画内容に含むことができる。
2) 指定現況
ソウル市における詳細計画区域が指定されている区域は1997年8月現在、総53個所で面積は10,969,560m2である。それは、ソウル市にある汝矣島(2,980,000m2)の約3.7倍に相当する面積である。指定された詳細計画区域を各行政区別にみると、19個の行政区で運営されており、行政区ごとに2〜3ヶ所(平均2.8個の区域)が運営されている。図2−9は詳細計画区域及の指定現況である。詳細計画区域の指定上の特性を調べてみると、まず、比較的基盤施設整備などが弱い江北地域の行政区が詳細計画制度を多く使ってあり、相対的に基盤施設整備などがよい江南地区の自治区の場合は施行経験が多い都市設計地区制度を多用していることか分かる。
指定対象になる地域は宅地開発予定地区、再開発地区、土地区画整理事業地区、市街地助成事業地区、工業団地、駅周辺(駅の中心から半径500m以内の地域)である。
3) 景観管理上の問題点
@ 区域指定時期上の問題
現在、ソウル市に指定されて運営している53個の詳細計画区域の中に27個の区域は一般住居地域から準住居地域などに変更された地域である。変更の急速な開発規模の拡大と土地利用変化を計画的に管理することが目的とされた。ここで、生じる問題は用途地域の変更と詳細計画区域の指定における時期上の前後関係である。表面的には別に差がないように見えるが、実際には詳細計画を樹立する過程では多き差が生じる。例えば、用途地域が変更されて詳細計画を作成する場合は、既に変更される用途地域として開発期待心理が大きくなっている状態なので、詳細計画を通じて合理的な土地利用と適正な開発規模を管理する提案ができない。すなわち、住民たちは既に用途地域が変更されているため、詳細計画による用途規則や適正な開発規模の管理や必要な公共施設の確保などを不必要な附加的規制と考えられる。景観管理のための計画をするときでも同じ問題が生じられる。
A 指定区域の限界
詳細計画の指定対象区域が地下鉄の周辺に限定されているため、既成の市街地の中でも詳細計画区域として管理が必要な地域が抜かされる場合がある。同一目的として地域を管理するにもかかわらず違う制度を適用するようになった理由は現行法上の詳細計画対象区域が宅地開発予定地区などの都市開発区域と一般既成市街地での再開発地区と駅周辺に限定されているためである(都市計画法20条の3、施行領19条の8)。結論的に景観管理のためには、限定されて範囲に指定される詳細計画を用いて景観誘導することのは大変難しいと考えられる。
B 詳細計画と都市設計の性格上の問題
詳細計画制度は都市設計制度が持っている都市の機能及び美観増進という目的の外にも、土地利用の合理化と都市環境の維持・管理などのより包括的な都市計画的な目標を持っている。性格においても都市計画という上位の空間計画の意図を下位の空間計画体系として具体化する下向的都市計画手段という性格を持っている。
しかし、都市設計制度の性格が似ている面が多いので改正都市計画では二つの制度の統合計画もある。このようなあいまいな面もあるので景観管理の制度としては満足されないだろう。
2.2 個別法の事業による景観管理
2.2.1 建築法
都市の人工的な景観は主に建築物群の集合的な景観によって形成されたと見られる。このような都市景観の基本要素になる個別建築物は建築法及び建築条例などによって規制され、建築物の密度、規模、形態及び敷地内の状況などに関する内容などが含まれる。
しかし、景観的な側面を考慮するため、特別に規定された項目はない。大きく、建蔽率及び容積率、建築物の高さ制限などが景観と関連のある部分である。
1) 建蔽率及び容積率
建蔽率と容積率は高さ規制と建築物の形態を間接的に規制するので、景観的な規制になる。すなわち、建蔽率と容積率は高さ規制と共に建築物の形態を間接的に規制することし、都市及び地域単位の開発密度を調節する有用な手段である。また、建蔽率の指定により1階の敷地を確保ができるし、容積率の指定により建築物容積を一定規模で制限するなどの許可がある。高層アパート団地においては建蔽率と容積率が景観的としては大きな影響を及ぼしていると言える。表2.16表はソウル市における都市計画上の用途地域別の建蔽率と容積率の規制事項である。
しかし、宅建設促進法によるアパート団地地区開発基本計画樹立に関する規制(住宅建設促進法施行令第23条2項-建築物の配置、建蔽率、容積率、高さ、隣棟距離,道路との関係及び敷地面積の最小限定に関する事項)ではアパート地区と指定されたところに限って建蔽率を別途に規制している。3階以下の連立住宅は40/100以下、4〜5階のアパートは 30/100, 6階以上のアパートは 25/100、その他は50/100である。
2) 建築物の高さ規制
高さ規制とは、町並みとして建築の高さや都市のスカイラインを整えるための手法のことである。一般的には道路による斜線制限が行なわれる。道路による斜線制限は道路からの景観的要素に対する可視性確保という利益が得られる。用途地区における美観地区及び高度地区などでは地区単位の高さ制限のために絶対高さ制限が適用される。
アパート団地の場合は敷地警戒線による制限及び隣棟距離による制限が適用される。共同住宅の規模を限定する基準としては建築棟の長さ制限もある。共同住宅の長さ及び絶対高さの制限は住宅建設基準などの関する規定第10条1項によると、‘共同住宅1棟の長さ(垂直面に投影した長さで最大なものを言う)を120m以下に制限されている。
3) 景観管理上の問題点
@ 一括的な規模と密度の規制
現在の建築法は個別の建築物に対する一括的な規模と密度 の規制的次元の水準である。今の状況では、多様な地形特性を現しているソウル市の地域的特性を反映する多様性及び融通性がある規制の適用が不可能である。
A 個別筆地単位に適用
建築法が個別筆地単位として適用されているから隣接している敷地境界部分の整備及び地区次元の景観形成のための手段としては足りない。
2.2.2 文化財保護法及び文化財周辺の建築規制
2.2.3 その他
ソウル市は以上の法以外も都市の美観と関連がとてもある屋外の広告物管理法、環境としては良いし、持続的に開発ができることを目的とする環境影響評価法などがある。
屋外の広告物管理法は美観と美風良俗の維持、公共に対する危害防止を目的とする。広告物について具体的に書いているので、商業地域における景観管理として必要な法になる。環境影響評価法は環境保存に影響を及ぼす事業を樹立・施行するときに、先にその事業による環境の影響を評価、検討して環境的に良いし、持続的に開発ができることを目的とする。現在の都市計画と関連がある法や制度の中で、大規模事業の施行時に景観に及ぼす影響に関することを言われている法は環境影響評価法だけである。しかし、事業別に具体的な事項に関することは言及してない。