この記事は「都市と農村・アジア・環境との共生」題された大分県の報告書の、佐藤執筆部分です。図表等が不備ですがご容赦ください。
 
(C) Seiji SATO
2.1都市と農村との共生にむけて

(Urban Area と Rural Areaの新しい関係性を求めて)

2.1.1なぜ都市と農村の共生か

‥垰圓版逝爾料蠍澳愀
 東京一極集中から多極分散の時代を迎えようとしているが、依然として大都市圏と地方中枢都市圏さらには地方中核都市への過剰な人口集中は解消されていない。その中で、生産・生活環境の格差は広がる一方である。1つの側面では都市の優位性が、また他の面では農村部の優位性が極大化しているのである。"," それは、都市においては生産と生活における多様な条件の複合によって形成された優位な特性を評価した都市活動を保証するかたちで都市空間が作られていることを意味しいる。農村においては、農業の後退によって生産空間としてのの優位性が低下する中で元もと生活空間としての利便性が低い水準にある中で、都市との相対的な位置関係を著しく低下させてしまったといえる。
 しかし、都市と農村の絶対的な評価が、上記のように必ずしも都高農低というかたちでなされるとは考えられない。しかし、現状では農村は都市にその機能の多くを依存し、経済は都市から農村へ流れ、生活スタイルも都市から農村へ流れている。したがって農村は都市化するが都市は農村化することはない。都市は農村のリクエストを大きく受容するキャパシティをもっているからである。ところが現在、自然への回帰、自然環境に対する渇望とも言うべき都市居住者の農村への接近がある。グリーンツーリズムの潮流がその典型である。

∩蠍澹魎拘愀犬閥生の概念
 したがって、「都市と農村との共生」は、出るべくして出てきた課題であるといえるが、計画の論理で言えば、このような背景を受けて、「交流」に代表される都市と農村の相互依存関係を根元的に追求することが可能な概念を必要としていることが指摘できる。すなわち「交流」、「連携」、「補完」、「支援」、「協力」、「共同」、「共創」・・・・など、都市と農村の相互関係から湧出する表層的な相互交換関係のもととなる、根元的な、いわば上位概念を必要としているといえるであろう。それが「共生である」。"," 都市と農村との共生は、そのどちらが優位性にあるということではなく、一方の成立は他方の成立を意味し、他方の死はもう一方の死を意味するというきわめて依存関係の強い関連をもっているのである。さらにいえば、逆にそういう共生の概念から演繹できる多様な交流関係を抽出し、共生をもってしか成立し得ないような高度な依存関係にまで高めていくことによってはじめて共生の概念の効用が実現できるし、高度な社会が達成できるのである。

社会構成の新しい理念としての都市と農村の共生
 「共生」には、21世紀を直前とした世紀末の閉塞状況を打破し、新世紀に向かって新たな展望を切り開く、ニューコンセプト(新概念)としての役割がある。「都市と農村との共生」は、都市の過密と農村の過疎を最大の克服すべき課題として設定されてきた現在までの行政施策に新たな課題軸を持ち込んできたといえる。そして、この概念から生まれる課題が新世紀の新しい行政課題としてきわめて重要性を帯びてくるであろう。そして、「都市と農村との共生」の姿の飽くなき追求が行政施策の遂行となるのではないか。"

づ垰圓版逝爾箸龍生に関わる時間軸、空間軸的背景
 では、ここで都市と農村の共生に関わる時間軸、空間軸的背景について極めて荒っぽい手法ではあるがいくつかのポイントをあげてみよう。なおここでは、それぞれのトピックスをオムニバス形式で取り上げてみており、全体をつらぬくシナリオを用意してはいない。
a.都市部と農村部の人口シェアの推移
 まず、都市と農村の人口がそのシェアを大きく変動させ、バランスを欠くなかで農村に都市の活力を再移入することが求められているわけである。ここで、いわゆる都市部の人口(市人口)と農村部(町村人口)の変動を見てみよう。表2−1によると昭和43年から、平成8年までの約30年間に市部人口が7,100万人から9,702万人全国人口に占めるシェアは69.7パーセントから77.7パーセントとなっている。一方町村部の人口はその絶対数もシェアもいずれも大きく減少させており、農村部が相対的に低下しているプロセスを示している。

表2−1 市部人口および農村部人口の推移

b.都市部と農村部の国土負担の現状
 つぎに、農村と都市の面積と人口の関係から、国土維持機能にどのような分担関係を持っているのかを見てみよう。表2−2は市部と町村部の人口と面積をみたものである。これによると、面積は町村部が都市部の2.5倍以上、人口は逆に3分の1以下になっており、したがって、町村部の人口一人当たりの国土負担の数値(一人当たりの面積)は9倍近い数値を示しており、そのアンバランスは極めて大きいといえる。すなわち、町村部の国土維持に果たす役割は大きく、逆に言えば、土地条件の優位性を表しているともいえよう。大分県の場合はさらに郡部の面積の割合が大きく、一人当たりでは全国の数値を大きく上回っていることがわかる。"

表2−2 市部町村部の人口と面積

c.過疎市町村の現状
 農村と都市との関連は、過疎地域と非過疎地域との関連で見ることのできる部分であることもある。表2−3は平成8年4月現在の過疎地域の人口と面積を表している。これによると、全市町村3234自治体のうち1208、37.4%が過疎地域に指定されている。一方過疎地域の人口は全国人口の6.1%であるが、面積は全体の47.7%となっている。大分県では全58市町村のうち、45市町村、77.6%が過疎地域に指定されている。全県の72.6パーセントの面積を占める過疎地域の中に、全県人口の25.4パーセントが居住している。"
 また図2−1は過疎地域の市町村を黒塗りで示している。主要な都市間交通ネットワークや、大規模な河川流域に位置する地域以外の山間地域が過疎地域に指定されていることがうかがわれる。この地図上でいえば、白い地域(都市地域)と黒い地域(農村地域)との交流が課題となっているといえよう。

表2−3 過疎地域の人口と面積(平成8年)
図2−1 過疎地域指定図(平成8年4月1日現在)

d.DIDとDID以外の面積と人口の関連
 さらに、都市的な居住形態を示す指標を明確に見るためにDIDとDID以外の地域でどのような人口と面積の関係を見せているのかを見てみよう。表2−4は昭和45年と平成2年のDIDとDID以外の地域の人口と面積である。

表2−4 DIDとDID以外の地域の人口と面積の推移
 
 これによると、全国では、昭和45年、53.5%、平成2年63.2%がDIDに居住し、大分では同じく30.6%、43.6%である。しかし、DID面積では全国で1.7%、3.1%、大分では0.8%、1.8%であり極めて狭い土地の中に多くの人口が居住していることがわかる。すなわち、昭和45年では国土の1.7%の中に全人口の53.5%、平成2年では国土の3.1%のなかに、全人口の63.2%の人口が居住しているのである。大分においてはさらに極端な傾向を示しており、昭和45年では県土の0.8%のなかに30.6%、平成2年では1.8%のなかに43.6%の人口が居住している。"," 一方、DID以外の地域ではこれと全く逆の傾向を示すのであるが、これをさらに密度と、その逆数の1人当たりの面積で見てみよう。昭和45年、全国ではDIDの人口密度は8689.6人/?であるのに対し、DID以外では131.2人/?である。一人当たりの面積ではそれぞれ115.1?/人、7680.3?/人である。これらの傾向は平成2年でも大きく変わることはない。大分県でもほぼ同様の傾向を示しているが、DID、DID以外のいずれも人口密度は全国よりも低い数値を示している。

e.農村での混住化の進行
 図2−2は、若干古い資料ではあるが、昭和45年と55年の農林業センサスによる農業集落における農家と非農家の分布をDIDとの距離の関連で分析したものである。農業集落においても、非農家の比率が増加していることがわかる。特に都市近郊における農業集落における非農家の比率が大きな増加傾向を示している。全体としても農業集落における住宅の戸数が増加しており、混住化の進行が伺える。

図2−2 農村の混住化の状況(人口集中地区までの所要時間別の集落の世帯数)

f.歴史的な都市と農村の共生関係
 「江戸の人間は口で貰って尻で返す」ということわざは、江戸と周辺農村の共生関係を端的に示したものとしてよく知られている。ここでは吉川弘文館刊の「江戸町人の研究第3巻」(西山松之助編)の一部を引用して当時の江戸と周辺農村の共生関係を見てみよう。",""," ・・・・いうまでもなく江戸と周辺農村の間には、地理学でいう「都鄙共生」の関係が存在したことであろう。「都市はそれのみ孤立して存在することはできず、むしろその存在意義の本質は周辺地域との関係にある」のであり、「伝統的な都市と農村との関係は、一定の自給自足に近い地域を基礎とし、その地方住民の生活圏の核心たる機能を果たす」からである。こうした江戸と周辺農村との関係をあらわすものとして江戸周辺に古くから残された、「江戸の人間は口で貰って尻で返す」ということわざがある。野菜、その他の生産物を江戸へ送り、江戸から肥料の下肥を取ってくる。周辺農村と江戸との関係を示す両者の共生関係を端的に表した言葉である。江戸町人の生活の展開は、こうした「都鄙共生」の中に進められてきたことはいうまでもない。・・・・・・・・・
 この記述はあくまでも江戸時代の、江戸と周辺農村の共生関係をあらわしたものであるが、一般的な、都市と農村の共生関係は、歴史的に連綿と続いてきた事柄である。現代の都市と農村の共生関係は、当時と異なり、地理的な関係が、交通ネットワークや情報ネットワークの発達、物流の変化によって、極めて見えにくくなっているわけではあるが、その底流として流れる両者の共生関係を今改めて見直す必要があるのではないか。"

g.国土計画における都市と農村との関係
 並茖閏 冒換饒躪膤発計画
 計画策定時の時代的条件からくるものと考えられるが、拠点開発を主体とした産業配置計画によって貫かれており、その中で問題となる都市の過密についての計画課題は見られる。しかし産業政策としての農業との絡みの中ででてくる程度であり、トータルな生産、生活空間整備の課題を農村地域の中で論じてはいない。
⊃形換饒躪膤発計画
 高度経済成長のまっただ中にあった新全総の策定時において、労働力供給基地として機能した農山村の計画課題が大きくクローズアップされることになる。生活圏域として都市と農村を相互の関係性の中でとらえることはなされずに、農山村は農山村、都市は都市として切り離したかたちで問題設定がなされている。したがって、新全総における最大の計画課題である交通ネットワーク整備の目的は第1次全総の拠点開発地域を相互に結びつける、あるいは大都市圏をネットワークするものであり、バランスのとれた都市と農村の連結による圏域の形成というものではなかった。
B茖骸〜換饒躪膤発計画
 定住圏構想を柱とした3全総において初めて都市と農村が圏域内において一体的な構成単位として設定されており、「自然環境、生活環境、生産環境の調和のとれた人間居住の総合的環境の形成」を図る必要性を強調していいる。また定住圏が相互に依存、協力する関係であるとしながら、具体的に共生や連携といった用語は見られず、都市と農村地域の相互の補完関係や依存関係を視野に入れた計画内容ではなく、都市や農村地域に対して個別の計画課題を挙げたかたちである。
ぢ茖桓〜換饒躪膤発計画
 国土の均衡ある発展のために、多極分散型国土の形成をめざした第4次全国総合開発計画において初めて、農村が都市との交流によって活性化を図るべきであるとする論調が現れたが、ここにおいても農村の活性化のために都市の活力をいかに農村に引き込むかという問題意識である。したがって、農村が享受すべきは都市の活力であり、都市を引きつけるための農村地域の魅力であるとする考え方は、交流や連携であっても、共生という相互の依存関係、高度な概念までは高められたものとなっていない。策定後に実施された「地域活性化研究会交流による農山漁村活性化分科会」による調査”都市との交流による農山漁村の活性化をめざして”においてもこの思想は貫かれている。現実的な議論ではあるが21世紀に向けての自立的農山村の形成の視点が若干弱いと考える。
ゼヾ全総と新国土軸(註、執筆時は5全総が閣議決定1年前でした)
 次期全総は未だ決定されてはいないが、検討過程の資料から判断すると、主要施策の中で、「流域圏」と国土保全や水資源、さらには都市整備と「多自然居住地域の創造」が主要な柱になっていることから農山漁村の自立的生活圏の形成についてかなり踏み込んだ記述となることが予想される。したがって共生という言葉は具体には見られないが、随所に、都市と農村の共生、アジアを中心とした諸外国と日本の共生、自然と人間の共生に関する記述が見られる。また、次期全総における新国土軸における都市と農村の共生の課題については、都市と農村を多様な道路ネットワークでリンクし完全グラフ型=ハブ型国土構造の形成につながるものとして重要な役割を果たすと考えられる。

h.大分県における地域の依存関係−都市圏の形成と共生圏域としてとらえるか−
 大分県において、地域の依存関係を通勤通学流動から見てみよう。図2−3、図2−4は、平成2年の国勢調査から、県内市町村の通勤通学者がどの市町村にもっとも依存しているかを算定して図表で示したものである。すなわち、都市を中心として農村地域が従属するような依存関係を構成し、都市圏を構成しているのかが理解されるわけである。これによると、大分市が圧倒的に強い吸引力を持っており大分都市圏を形成している。なお大分都市圏の中には竹田都市圏が入れ子状に都市圏を形成している。大分県全体としては5つの都市圏を形成していることになる。これは一般的にいわれてきた大分県内の圏域構成を追認するかたちではあるが、今後の都市と農村との共生を構想するときに、共生圏域としての提案のベースとして扱えるのではないかと考える。"

図2−3 通勤状況から見た大分県の地域構造(平成2年国調から)
図2−4 通勤状況から見た大分県の圏域構成(大分県の都市・地域の段階構成と圏域)
 
 

2.1.2 都市と農村との共生社会の形成に向けて

 共生の前提条件としての都市の自立と農村の自立の課題"," 共生を実現するためには、前述のように、共生主体が相互に自立していなければならない。少なくともどちらかが優位な関係性のもとで成立するという、一方的な依存関係では共生の形成は難しいといわねばならない。したがって、都市は都市、農村は農村として自立しながら、さらに高度な共生関係を構築することをめざさなければならない。
 そのような観点から都市の自立、農村の自立に求められるものは何かをここで整理してみよう。

a.総合的な都市環境の実現のための都市整備
 高度経済成長の時代に大量に形成された都市郊外の市街地は、現在では負の遺産として現在の都市整備の大きな課題となっている。都市市街地の拡大は、従来から整備が不足していたインフラのいっそうの問題点を露呈している。くわえて、いわゆる生活環境整備や、都市のアメニティ環境整備の不備、都市内自然環境の破壊など、都市の総合的な環境の課題は、さらに拡大しているのが現状である。"," たとえば、大分の事例を取るとするならば、高度経済成長時代の人口の大分市への集中が生み出した、南西部の丘陵地に展開した新市街地は道路整備などのインフラを伴っていないことに象徴的に見られるように、大きな課題を残しながら21世紀を迎えようとしているのである。"," これらの問題を克服するための都市整備や、破壊された都市環境の再整備など、大都市の整備だけでなく、地方中枢都市、地方中核都市、地方中心都市の、地方都市など、都市のランクにとらわれないというか、都市の規模に関わらず、総合的な都市環境を実現し、自立した、共生のパートナーにふさわしい都市の形成が課題である。
 以下に、都市環境整備の課題を列挙してみよう。
 ・都市内交通網の抜本的整備による交通渋滞の解消
 ・都心の空洞化への対応
 ・都市内自然環境の保全と回復
 ・木造密集市街地の解消
 ・災害に強い市街地の実現
 ・魅力的都心の形成と商業地の整備
 ・都心の駐車場の整備
 ・国際化への対応
 ・美しい都市景観の形成"
 ・高速交通時代における都市間競争への対応、
 ・高齢化への対応や高度な福祉の実現のための施策展開

b.多自然居住地域の特性を生かした農山漁村地域の整備
 農山村地域や漁村地域に展開する居住地は、都市地域には望めない、自然環境に恵まれた地域である。農林水産業を通じて、食料の供給という機能を果たしてきた地域であるが、これらの産業が相対的に地位を低下させ、産業としての競争力を弱体化してきたために、人口の流出による過疎化を招いた経緯がある。また、交通ネットワークの整備が送れてきたこと、さらに低密度に居住していることから、効率的な都市的サービスを展開しにくいことなどによって生活環境条件が都市と比較して相対的に低く評価されているのが現状である。しかし、近年、交通ネットワークの整備が急速に進行し、農村地域においても都市的サービスが選られやすくなってきている。また、一部には交通弱者の存在はあるものの、交通ネットワークの整備により、居住者の広域な移動、流動が容易になり、働く場の確保も広域な展開を見せつつある。
 また、一方では農村の自然環境を評価し、また都市での生活に魅力を見いだせなくなった人々が、新たに農村地域に居住の場を求めてIターンし、農業に参入するという新しい現象が顕在化しつつある。これは、都市居住によって人間的な生活空間を享受できなくなった人々が癒やしの場としての農山漁村に新しい生活空間を求めて移住してきているのだといえよう。これは、農村地域から都市へと人口を移動させてきた、西欧の産業革命以来の人口流動に新しい局面を切り開くものであるし、また人口が一方的な流動から、環流というという新しい傾向を出現させたものとして大きな関心を寄せるべきであるといえよう。"," したがって、今後は農山漁村地域の自然を生かした居住環境を整備しながら、住む場としての優位性を作り上げ、定住条件を確立し、交通ネットワークや情報通信ネットワークを介して広域に交流しながら地域に居住し続けるという農山漁村の生活スタイルを創出することが21世紀の重要な課題になるであろう。また、それが、農山漁村の地域空間の維持、ひいては国土の保全につながることになるのである。 以下に、具体的な課題を列挙しておく。
 ・道路ネットワークの整備
 ・情報ネットワークの整備による情報化
   インターネットなど情報基盤整備、テレコミューティング(在宅勤務)の条件整備
 ・都市計画のない地域における総合的空間整備
 ・農村地域におけるにぎわいの場の整備
 ・文化施設の整備
 ・高齢化に対応した農村空間や福祉施策の展開
 ・農村地域型公営住宅整備
 ・集落排水など、農村型下水処理、水洗化
 ・急傾斜地、風倒木対策などの安全性の向上
 ・農村景観の保全",""

c.農村の経済基盤の確立
 農山漁村を経済的に支える第1次産業の後退、あるいは産業の地域支持力の低下によって、過疎がいっそう進行しており、上記の環境整備だけでは地域居住の条件を整えたことにはならないであろう。確かに、道路ネットワークの整備や情報基盤の確立が、居住の場と生産の場を離していくことは今後ますます顕著な傾向として進展するであろう。しかし、生産の場の確保、すなわち地域の経済基盤の確立は、地域空間を長期にわたって維持するための重要なファクターであり続けるであろう。"," 21世紀の遅からぬ時期に地球規模で食料不足の事態が発生するとの指摘もあり、経済的な枠組みを越えて、農業や農村地域の重要性が高まってくるであろう。そういう時期まで農村地域を空間的にも、経済社会的にも維持継続させて行かねばならないが、当面の課題は、経済基盤の確立を急ぐことであろう。"," 都市からの通勤農業など、これまでの農業にない新しい農業の“業態”を模索することも必要である。

 都市と農村との共生の現状と課題<現状>
 前述したように、「共生」の定義からすると、未だ共生は実現していないし、もしかすると共生は求めてやまない対象であって、実現はきわめて困難であるかもしれない。しかし共生を求めて起こす行動や施策が、共生に至るプロセスを反映する指標でするならば、すなわち1.で述べたような、表層的な相互交換関係が共生の現状であるとするならば、それを取り上げてみるのも重要である。ここでは、農村領域内、都市領域内でおこなわれる共生に結びつく活動、すなわち厳密には共生というカテゴリーに適合するものではないにしても今後の動向の中で共生への転換の可能性を秘めた相互交換関係をまとめてみようとするものである。"," a.農村は自らのテリトリーのなかに、都市との共生を求めるための多様な行動を起こしている。しかし、都市は農村との共生を目的意識とした行動を、自らのテリトリーの中に起こしてはいない。ここでは農村領域内、都市領域内においてそれぞれ都市サイド、農村サイドからの共生のアクションがどのようにおこなわれているのかをまとめてみることにする。"," ここで、→(矢印)はアクションの方向性を示す。
 <農村領域内における共生>
         <農村→都市>型共生     
                                                                 ・温泉観光地、観光地
                             ・交流拠点整備
                             ・道の駅
                                                                 ・グリーンツーリズム
                                                                 ・水資源の保全
                                   ・アグリカルチャーパーク
                                    ・過疎地域アメニティタウン構想
                                       ・香りの森博物館
                     農村地域内における農村サイドからのアクションは様々な形態を見せる。

         <都市→農村>型共生
                             ・保養地、保養所
                                     ・都市立研修所
                                                                  ・山村留学
                                          ・農業新規参入
                                     ・Iターン
                             ・緑のオーナー制度
                             ・過疎地域への企業立地
                             ・野焼き交流
                             ・農作業、枝打ち交流
 
  <都市領域内における共生>
         <農村→都市>型共生
                             ・アンテナショップ
                             ・市(いち)
                              都市は都(みやこ)すなわち中枢管理機能と市(いち)すなわち交易機能の複合によって成立するものである、市は都市農村の共生の姿であった。
                             ・村の命を都市の暮らしへ(一村一品21)
         <都市→農村>型共生     ・現状では具体例は見出しにくいが今後もっとも求められる交流のスタイルである。

  <領域を特定できない共生>
                            ・マルチメディア地域実験
                            ・インターネット利用拡大事業
 
 

2. 1.3 期待される役割

仝民に期待される役割
 自らが居住する生活環境としての都市や農村の優れた部分を理解し、環境を整え、また向上させるために努力すること。さらに都市居住者は農村、農村居住者は都市との交流を通じて互いの長所を認め、自らの存在が他の存在によって成立していることを理解すること。その事によって、はじめて共生にいたる方向性と、公共がおこなう多様な共生施策に対するコンセンサスが得られることになるであろう。
¬唄岾萋庵賃里亡待される役割
 一般的に、NGOとかNPOと呼ばれる団体であるが、身近なところでは町内会や子供会もこのカテゴリーに属する。また、一定の利益を上げながらもその利益によってのみ成立していない組織もこの範疇に入る。たとえばまちづくりや村おこしグループである。"," これらの団体は、交流や連携に豊富な経験を持っている。交流や連携のスタイルを模索する中で、特に都市部と農村部の交流について新たな局面を切り開く工夫が必要とされる。"," いわば、このグループは、都市と農村の共生をリードする先進部隊としての役割が期待される。
8が果たすべき役割
 道路ネットワークや情報ネットワークの整備によって、都市と農村の公共サービス水準の格差の解消に努力すること。公共事業の推進に当たっては、既成概念にとらわれることなく、新しい視点で問題提起が求められる。その重要な要因が“行政における共生の思想”と言えるであろう。"," また、都市と農村の共生思想の普及につとめるとともに、各主体の調整をおこなう。
せ堋村に期待される役割
 県の役割と基本的には共通しているが、より住民に近い部分での役割であろう。特に生活環境の整備において、都市、農村それぞれの優位性を生かした事業の取り組みが期待される。農村においては都市の活力をどのような手だてで農村に引き込むか、都市がなにを農村に期待するのかを的確に判断しながら施策を展開する必要がある。"
 都市においては、特に農村部に自然の恵み、特に水資源や食料の供給を受けているわけであり、デカップリングなどを通じて農村部に財政的支援を積極的におこなうことが求められる。
ヌ唄峇覿箸亡待される役割
 民間企業においては、都市と農村の関係性の中で活動が成立している企業も少なくない。たとえば、食品産業などであるが、広く言えば、工業用水などを通じて農山村の環境に依存しているわけである。そのような視点から、企業の社会的使命として、都市との共生によって成立する農山村に、企業の支援が求められる。これは、行財政を通じて間接的におこなわれているのではあるが、メセナに見られるような、企業と社会のより直接的な支援関係が期待される。
 また、企業本来の活動の中に、都市と農村の共生を利益追求の材料としてみることも十分可能なわけであり、観光産業や、農産加工などの既成の範疇にとらわれず、都市と農村の共生を視野に入れた、新たな業種、業態を出現させることを期待したい。
 
 

3.戦略的課題

3.1 都市と農村との共生

3.1.1 都市と農村との共生における戦略的課題
 都市と農村の共生に関わる一般的な課題や施策、あるいは現状については前に述べている。ここではそれらの施策を中心として、より戦略的な効果を持っていると考えられる施策を戦略プロジェクトとして整理した。
‐霾鵝Ω鯆魅優奪肇錙璽の整備
 都市と農村がそれぞれを、互いの共生のパートナーとして位置づけるためには、交流基盤としての交通・情報ネットワークの整備が第一に求められることである。情報の共有と空間の共有が共生の前提条件であるといえるわけであるから、国土に張り巡らされた情報ネットワークによってインターネットをはじめとした情報交流基盤整備をおこなう必要がある。また高速道路や国道などの国土幹線道路体系からコミュニティ道路に至るまで、人や物の流動を保障する道路は都市と農村がお互いの空間を共有するための基本的な条件である。都市と農村の情報格差の解消と移動の自由度を保障しながら、高度な共生の段階に至るためには情報・交通ネットワークの整備がまず第一にあげられる課題である。
 したがって、これらの整備に当たっては、単なる市場原理を越えた哲学を持つ必要がある。"

  プロジェクト:
           ・テレコミューティングプロジェクト
           ・農村地域情報化プロジェクト
           ・高速道路通勤利用促進プロジェクト

多自然居住地域整備
 農村地域の絶対的優位性は自然に恵まれているということである。現在までは、この優位性の中で、都市的サービスが共存できにくいことが過疎を進行させてきた。交通ネットワークや情報ネットワークの整備によって、都市と農村がいっそう近い関係となる。そういう中で、農村地域は自然の維持とそれを都市へ提供することによって共生の局面を演出することが大きな課題となるであろう。今後は既存の居住地の整備にとどまらず、新規に住宅地を整備する場合も、農村地域の特性を十分ふまえた居住地域の整備を構想する必要がある。また、都市地域においても自然にあふれた市街地環境の実現によって、自然への憧憬を惹起させるようなことが考えられる。
 また、都市居住者に積極的に農村に移転して貰うことのできるような居住環境の整備を図ることが重要である。

  プロジェクト:
           ・農村地域居住環境総合整備プロジェクト
           ・Iターン促進プロジェクト
           ・ビオトープ整備プロジェクト
           ・農村定住拠点整備プロジェクト
           ・農村景観保全整備プロジェクト
           ・集落再編整備

4袷乾哀薀娵森馘攅渋い侶狙に向けて
 大都市、地方中枢都市、地方中核都市、・・・・、というヒエラルキーのもとに日本の国土が形成されている。道路ネットワークや情報ネットワークなどのインフラや公共施設、産業配置などもこのようなヒエラルキー構造と極めて整合性をもって整備がなされている。しかし、これからの国土構造は、このような階層構造ではなく、それぞれの地域が同位で、しかも直接結び合う構造に転換しなければならない。"," 情報化、国際化時代の世界空間構造(structure of global space)や国土構造、地域構造はこのような視点から転換を迫られるであろう。国際交流においては、実は国際間のローカルな地域の直接的な交流が主体になってきていることをあげればその証左となるであろう。すなわち、国のセンターを介して国際交流がなされるのではなく、地域と地域が、人と人とが直接結び会うことの有効性が認識されているのである。"," この考え方を、都市と農村の関係に敷衍するならば、農村も都市も同位の居住地域として位置づけた国土空間構造を確立することによって共生という、高度な関係性を確立できるといえるであろう。その構造の究極の姿が完全グラフである。
 したがって、道路ネットワークの整備に当たっては、できる限り多様なリンクを構成するように、すなわち、隣接地域とのつながりを過不足なく用意することである。我々の居住する空間がユークリッドの理論に支配されている限りは道路ネットワークの完全グラフ化は望むべくもないが、情報ネットワークは、完全グラフを仮想的に実現している。つまり、インフラ(ハードウエア)としての光ファイバーネットはヒエラルキー構造であったとしても、光の速度、電磁波の速度がヒエラルキー構造を完全グラフ構造に見せかけるという効果を実現しているのである。
 情報ネットワークが、時空を越えて人々の精神や、文化や、産業活動を結びつけ、革新していくであろうことは、実はこの完全グラフ型の構造を持っているからであるといえるのである。完全グラフ構造は、すべての主体を他の中心として位置づけることができるのである。すなわち、すべての主体をハブの中心に位置づけることが可能な構造である。都市や農村が、同位であることを保障する構造である。

  プロジェクト:
            ・道路リンクのグラフ化プロジェクト
            ・情報ネットワークによるハブ効果を求めるプロジェクト
            ・Internet to the Home プロジェクト
               (すべての家庭にインターネットを)

図2−5 完全グラフ型構造とハブの概念
 

げ畫唾楼茲痢箸砲わい拠点”整備
 過疎地域が失ったにぎわいを再び取り戻すには、地域施設整備の方法を抜本的に見直す必要がある。すなわち、多様な施設を一体的に整備し、集積の効果によって都市からの集客が期待されるのである。近年完成した山国町の複合文化行政施設の“コアやまくに”は、県の過疎地域アメニティタウン構想にもとづいて建設された施設であるが、過疎地域の文化拠点施設としての機能に加えて都市との交流拠点施設としての役割が期待されているのである。この施設にはスケートリンクが併設されており、開館初年度には都市部からの来訪者でにぎわいをみせ、都市と農村の交流の新しい潮流を作り上げることができた。"," この事例に典型的に見られるように、過疎地域に人々が積極的に集まる仕掛けを作り、それを地域の人々のためばかりでなく、広域に集客するようなにぎわい拠点として機能させることが、都市と農村の共生に近づくための戦略的な課題として設定できると考えられる。またこのような施設の中では、都市居住者は農村の生活やおかれた状況に対して深い理解を可能とするであろうし、農村の居住者は都市住民が農村になにを求めているのかを理解するであろう。
  プロジェクト:
            ・“にぎわい拠点”整備プロジェクト
            ・出会いの場、語らいの場整備プロジェクト

ヅ垰堝眷逝叱鯲拠点整備=(農村バザールの建設)"," 都市領域内における、都市サイドからの農村に対する共生のアクションは現状ではほとんど見られない。そこで、都市内に農村との共生拠点を整備し、新しい農村の魅力を都市の中で演出することが考えられる。都市と農村地域の自治体が姉妹関係を結ぶ事例は多い。これをさらに発展させて、恒常的に都市の中に、特定の農村との交流拠点として整備することが考えられる。特に観光地において農村バザールとして整備を図ればマンネリ化した観光のカテゴリーに新しいアイテムをくわえることができると考えられる。そしてこのバザールを通して、都市と農村の交流が経済的な交流も含めて幅広く展開することが可能となるであろう。

  プロジェクト:
            ・都市内“農村バザール”
            ・農産物直販ルート整備プロジェクト
            ・一村一品町並みづくりプロジェクト

ξ域共生圏の形成
 共生の概念は、強制ではない、極めてノーマルで自然な主体間のつながりの中で成立する概念である。したがって、上記のように情報ネットワークを介したいわば空間的飛躍による主体間の結びつきもあるが、フィジカルなつながりは、空間的に自然な連携を基本とすべきである。これまでの国土計画や地域計画の圏域設定において流域圏が用いられてきた経緯があるが、ここではさらに概念飛躍をおこない、河川の流域が水を媒体として共生していることを積極的にとらえながら、“流域共生圏”として新たな連携関係を構築することが考えられる。

 プロジェクト:
            ・流域共生圏構想立案プロジェクト
            ・日本型デカップリング形成

Ф生教育プロジェクト
 共生とは、現在まで確立した概念ではなく、「交流」、「連携」、「補完」、「支援」、「協力」、「共同」、「共創」などの既成の概念の上位に位置付けられるものであるとした。またそれらの相互交換関係を長期にわたって持続できるためには、人々の心の中に共生の思想が確立されていることが望ましい。したがって、それぞれが居住する地域に対する認識を基盤にしながらも、都市居住者には農村に、農村居住者は都市に対する連携の心を呼び起こすような“共生教育”が必要とされているのではないかと考える。その教育は学校教育にとどまらず、生涯教育においても重視されるべきであり、自然や環境に対する認識や愛情から、都市と農村という空間の共生にいたる問題を幅広く教育することが求められているのである。
  プロジェクト:
            ・共生教育プロジェクト
            ・共生思想普及プロジェクト → シンポジウムなど"