このパネルディスカッションは1999年12月3日に、大分市のトキハ会館でおこなわれた産学連携セミナーの記録です。
なお、このパネルディスカッションに先だって、小野田武氏(三菱化学顧問)の講演「地域から発信しよう新産業創出」と、喜多見淳一氏(通産省産業政策局産業技術課大学等連携推進室長)の講演「産学連携によるイノベーションの推進」がおこなわれました。
これにつきましては地域共同研究センターの講演ページをご覧ください。

パネルディスカッション
「大分における双方向性のある産学官連携関係の構築」
を目指して

主催:大分大学、通商産業省九州通商産業局、(財)九州産業技術センター、
大分大学地域共同研究センター産学交流振興会
協賛:大分県、大分県工業団体連合会



コーディネータ  
        松尾 純廣   大分大学経済学部教授
パネラー     
        久米  堯   元うすき生物科学研究所所長
        鈴木 規夫   江藤製作所社長
        宮川 末晴   新鶴海興産取締役部長
        佐藤 慎一   大分県商工労働観光部長
        瀧田 祐作   大分大学工学部教授・サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー施設長
        佐藤 誠治   大分大学工学部教授・地域共同研究センター長
 


司 会
  パネルディスカッション「大分における双方向性のある産学官連携の構築」ということで始めたいと思います。
まずコーディネータ、パネラー及びコメンテータの方々をご紹介いたします。
まず、コーディネータということで、大分大学経済学部松尾純廣教授(拍手)次に、パネラーとしまして、久米元うすき生物科学研究所所長(拍手)、鈴木江藤製作所社長(拍手)、宮川新鶴海興産取締役部長(拍手)、佐藤慎一大分県商工労働観光部長(拍手)瀧田大分大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー施設長(拍手)、最後に、佐藤誠治大分大学地域共同研究センター長でございます。(拍手) 次に、コメンテータとしまして岩渕 明岩手大学工学部教授(前岩手大学地域共同研究センター長)をお招きしております。(拍手)
 それと、今日最初にご講演いただきました喜多見大学等連携推進室長と小野田顧問は、今日の飛行機最終便でお帰りになられるわけですが、時間の許す限り、観客席上から随時コメントいただくことになっております。どうぞ宜しくお願いいたします。
それでは松尾先生よろしくお願いします。

コーディネーター(松尾純廣大分大学経済学部教授) 
大分大学経済学部の松尾でございます。今日は、コーディネータということで、今日のディスカッションの進行役をやらせていただきます。よろしくお願いいたします。
 初めに、今日のディスカッションのテーマについて少しご説明いたします。もう当然テーマの中心は、「産学官連携をどう進めるか」ということでございますけれども、当然随分以前から産学官連携については、当然スローガンもかけ声も具体的な仕組みもある程度進んできております。ですが、地域にとってあるいは大分にとって果たしてそれが具体的にいい方向にといいますか、望ましい方向に向かってるかどうかというのは、まだかなり不十分な点があるかと思います。ですので、その点に具体的に過去に問題点があるとすれば、そこをどう押さえ、そしてどういう方向で解決を見出すのかということを中心にお話を進めたいと思っております。あくまでも、大分でどうすればいいのか、あるいは地域にとってどうすればいいのか、中小企業にとってどうすればいいかというのを中心にテーマを設定いたしたいと思います。
 先程言いましたように、大学も、かなりいろんなセンター、当然地域共同センター、それからベンチャー・ビジネス・ラボラトリーとかいろんなセンターの仕組みを作ってきております。これが果たして十分に機能するかどうかというのは、当然その企業の方、それから行政の方のご協力を必要としてるわけですけれども、そういうところの大学側の姿勢と、あるいは仕組みと企業なり行政なりのニーズとかそういうものとうまくマッチングするのかどうか、そのへんを、もし問題点があるならばそこをち
ょっと煮詰めておきたい。で、どういうふうに変わればいいのかというのを議論していきたいと思っております。
 大体、以上の点が今日の中心テーマになります。宜しくお願いいたします。話を進めるにあたりまして、全体が大体2時間半ぐらいを予定しておりますが、最初に、大学の方から、大学の産学官連携の状況についてまず説明いただきまして、その後企業側、それから行政の側というお話をいただいて、後は皆さんで議論をしたいと思っております。宜しくお願いします。
 最初に地域共同研究センターの佐藤センター長から、また大分大学の産学連携の現状について、あるいは課題についてご説明いただきたいと思います。宜しくお願いいたします。
 
(佐藤誠治大分大学地域共同研究センター長)
  地域共同研究センター長佐藤でございます。今日は、大分における双方向性のある産学官連携関係の構築というタイトルで、産学官連携セミナーを開催いたしまして、たくさんの参加者を得まして、主催者側の一人
といたしまして厚く御礼申し上げます。
 そこで私の方の冒頭発言ということで、実は、皆さん方のお手元に喜多見室長さんのOHP、このクリップで止めたやつのその直後に私の方のレジメが裏表コピーしたのが1枚付けてございますので、それをご覧いただきながら説明をさせていただきた
いというふうに思います。
 私の話は2つ程ございまして、先程コーディネータの松尾先生の方から、大分大学の現状についてということで説明せよということでございましたけれども、若干それの前に、産学連携の背景としてということで、先程小野田さん、それから喜多見さんの話がございましたけれども、若干ダブる部分もあろうかと思いますが、少し産学連携の背景としてということで、お二方の話になかった部分を話させていただきたいというふうに思います。
 表の方のページ数1と書いてあるとこなんですが、まず産学連携の背景といたしましてということで、先程の話にございましたけれども、大学等技術移転促進法というのができる。それから新産業創出法だとか、大学審議会あるいは学術審議会答申、それから組織的対応というふうな形で4項目にまとめてございます。
 TLOにつきましては、大学等技術移転促進法を背景といたしましたTLO(技術移転機関)につきましては、ここに既に4つの大学でと書いてございますけれども、8つのTLOが組織化されまして既に動いておるということでございまして、先程喜多見さんのOHPの説明されなかったところにこれが隠れておったように私見ましたけども、既に8つのTLOが組織化されまして進んでおるということのように思います。
 それから、その中でほとんどは民間機関という形で、大学の教官が出資してスタートしている。そのTLO機関を運営するために文部省も法的対応を始めておりまして、先程人事院の話もございましたけれども、大学の教官が役員としてその中に入ることができるというふうなことで、このTLOが1つある。
 更に、20以上の大学で検討中というふうなことでございまして、大分大学としてどうするかという話なんですが、九州内で既に九大もスタートしようとしておりますし、それから九工大だとか、あるいは熊大でスタートしようという動きがあるわけでございまして、大分大学がこれにどう対応するかということで現在検討中でございます。
 つぎは大学審議会と学術審議会の答申の中で、地域共同研究センターはどういうふうな位置付けになっていくのかというふうな話でございます。とりわけ平成11年の6月の学術審議会答申の中で、地域共同研究センターとして注目すべきことというのがいくつかあるわけでございます。
 その1つは、大学内に企業との共同研究施設を整備するというふうなことで、これは今まで国の敷地の中に民間の共同研究施設を造るというのはあり得ない話だったんですけれども、これを作るべきだとかそういう非常に思い切った提案もございます。
 それから、学外にサテライトセンターを作れと。これ地域共同研究センターだけで対応できるようなものではございませんけれども、いずれにいたしましても、地域との連携の中で大学が外に施設を造って、そして深い連携関係を構築しなさいとこういうふうな話もございます。
 それから、産学の情報交流の一層の推進ということで、これは研究シーズの具体的公開と書いてございますけれども、どうも我々大学サイドからみまして、研究の情報というのを公開する場合、どうも上っ面の部分しか公開していなかったのではないか。やっぱり研究の中身を具体的に分かるように、産の側から見て分かるようにこれを進めなければいけないのではないかというふうなことでございます。
 それから組織的対応ということでございますけれども、大分大学では、いま産学連携推進機構を構想中でございます。ともすれば地域共同研究センターに偏った形での産学連携の組織であったわけですけれども、大学全体とした産学連携を取り組むということです。大学の中には地域共同研究センターだけではございませんで、いろんなセンターがございます。それを横つなぎにいたしまして地域との連携を図っていくということで、産学連携推進機構を、これも来年中に、来年の早い時期に組織化を図りたいというふうに考えておりまして現在進めてございます。
 地域共同研究センターが産学連携の窓口に今のところなっているんですけれども、大学全体としての意思決定をやる場合には非常に問題があるわけでございまして、それで、大学全体としてこれをこうきちっと組織化したいというふうなことでございます。
 それから事務組織の改組といたしまして、他大学では研究協力課というふうな形でかなりの位置付けになっておるわけでございますけれども、大分大学では地域連携推進室ということで、いまこのセミナーの裏方をやっていただいておりますけれども、地域との連携をやるための重要な組織として位置付けられておるわけでございます。
 他の大学では、更にその地域連携関係の事務組織の中に教官組織と言いますか、教官ポストを入れていくというふうなこともございます。
 我々の大学は現状ではそこまではいっておらないというふうなことでございます。
 それから国では文部省、学術国際局の中に研究協力室があるわけでございますけれども、その組織の中で平成12年の概算要求を見ますと、産学連携の推進ということで、総額で1,200億円というふうな額があるということでございまして、組織の中で、組織を作りながらそれが実態的に動くようなそういうこう概算要求の額を示しているというようなことでございまして、これも非常に注目すべきことではないかというふうに思っています。
 それから、具体的に大分大学の産学官連携の内容につきましてですけれども、地域共同研究センターの設置目的といたしましては、民間との共同研究と研究交流をやっていくということがこれが第1でございます。それから、先程小野田さんの話の中にございましたけれども、どうも学内の教官の相互の研究というのがちょっと足りないのではないかというふうなお話ございましたけれども、我々の共同研究センターの中では、学内、他大学との共同研究というのも謳っております。謳っておりますが、小野田さんの指摘のとおりでございまして、なかなか大学の中での教官相互の共同研究というのが進んでおらないというふうな状況がございます。
 ただ、これにつきましては、後でまた瀧田SVBL施設長の方から紹介があると思いますけれども、現在学内の教官相互の共同研究という形でプロジェクトが動き出そうとしてるというふうな状況でございます。
 それから事業の全体像につきましては、今日の参加者の中で大学以外のご参加をいただいております方々には、資料といたしまして、1999年の地域共同研究センター年報というのをお渡ししてございます。その中に、資料の中に、産学交流会からずっと客員教授制度というふうに書いてございますが、大体9から10項目程度の事業を現在展開しているというふうなことでございます。
 産学交流会につきましては、本年度は3カ所から4カ所を構想してるわけですけれども、地域に出向きまして企業の皆様方と膝を突き合わせて交流をして、地域の産のニーズ、我々のシーズを披瀝しあうというふうなことで佐伯と宇佐で今年は実施済でございます。
 それから2番目の研究コーディネータ活動でございますけれども、この研究コーディネータ活動につきましては、私ども地域共同研究センターでは最も重要な事業として位置付けておるわけでございますけれども、客員教授の2人の先生方に地域に出向いていただきまして、企業の現状をつぶさに見ていただく。それを大学の方の研究者に紹介していただくというふうなことをやってございます。
 当然大学の方といたしましても、この客員2教授と連携いたしまして、専任助教授が同行いたしまして、ここで、企業サイドリエゾンと書いてこうございますけども、それに対応いたしまして、大学サイドリエゾンというふうな形での位置付けで、昨年から今年にかけまして100社以上訪問いたしております。従来地域の企業がなかなか我々にアプローチをかけてくるということがなかったと言いますか、少なかったわけでございますけれども、この研究コーディネータ活動によりまして108社中約20件ぐらいが大学の方に新たにアプローチをかけてもらうというふうなことになっておりまして、共同研究に結びつけることができるようなことになろうというふうに期待しておるわけでございます。
 それから、大分地域先端研究発表会、これは研究シーズ発表会というふうな形で開催しておりまして、大学の方で開発した研究シーズを地域の企業の皆さん方に紹介するというふうなこういう事業でございます。更に、アントレプレナーセミナー、それから高度技術研修、この高度技術研修につきましては、今年は計算機シミュレーションの工学への応用ということで、来年の1月から2月にかけまして実施する予定でございます。それから講演会とかセミナー、これも年間数十件を実施してございます。それから客員教授制度ということで、客員教授による情報、それから研究交流ということで実施してございます。それから、お手元に研究者リストというのもお配りしてございますけれども、大学の中にどういうふうな研究者がどういうふうな研究してるのか、そういう人達のこの地域に対する連携のスタイルはどうなのかというふうなことを、これはインターネットでも公開してございます。それから、更に、現在構想中の事業でございますけれども、情報ネットワークの充実ということで、大分大学地域共同研究センターメーリングリストというのを開設しようというふうに考えてございます。
 こういう事業を通じまして、特に研究コーディネーター活動を通じまして、我々が感じていることというのは、確かに大学に研究シーズはあるんだけれども、それを全体としてまとめて地域の企業に売り出していくというこういうスタンスが足りない。仮にそういうことを構想いたしましても、そういうことをやれる人が本当にいるのかどうかというので、これにつきましては、更に取り組んでいくための方途を模索しているというふうなことでございます。
 あと共同研究だとか他団体の産学交流への貢献だとかいうふうなことをここに書いてございますが、私ども地域共同研究センターといたしましては、共同研究の件数が一つのこの評価の対象になるわけでございます。一つと言いますか、ほとんどというふうに言ってもいいわけでございますけれども、現在、年間20件前後で推移しているというふうなことでございます。
 今年の10月、ですから2カ月程前の現状で言いますと、15〜16件、額にいたしまして3,000万円ぐらい。それから先程小野田さんの話にもございました不透明性のある奨学寄付金なんですけれども、これが大体3,000万円程度ということで、あと4カ月ほど残しておりますということで、大体1億ぐらいに総額いくのではないかという感じを持っておりますけれども、共同研究3,000万円、奨学寄付金3,000万円ということで大体拮抗しているというふうな状況でございます。
 そういうことで、また後で課題については述べたいというふうに思いますけれども、一応、地域共同研究センターの現状ということで、少し時間が長くなりましたけれどもこれで終わります。
 
(松尾)
  どうもありがとうございました。続きましては、大分大学ではもう1つ重要な産学連携の機関になっていますサテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの瀧田施設長から、現状についてご説明いただきたいと思います。お願いいたします。
 
(瀧田大分大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー施設長)
  瀧田でございます。サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー、サテライトと付いてまして、九州では九大がコアでございまして、我々はその衛星ということになっております。
 昨年の12月に一応国会を通ったんですけれども、大学で実際に動き出したのは夏休み明けでございます。建物もいまのところ12月末竣工の予定で、造っている最中でございます。
 先程、佐藤先生の方から、産学連携のお話がありましたけれども、どちらかと言いますと、私どもの方の目的は、大学院生に起業家精神を教育し、若手教官にベンチャーを作るその主軸となるような研究をやってもらう施設であるというのが定義といいますか、目的になっております。
 そういうことで、先程の小野田さんのお話にもありましたけれども、大学というのは、どうしても時代に付いていけない、変革が遅い、ですから大学の変革を促進するためにできた施設だというふうに一応は聞いております。
 ベンチャーラボというのは大体が理工系のドクターのある大学にできていったわけです。大分大学といたしましてもドクターの学生を中心にベンチャーを作ろうとこういうことでございます。私ども工学部だけにドクターがあります。で、ドクターの学生とポストドクの学生に声をかけまして、まずはちょっとやる気のあるやつは集まれと、声をかけました。教官の側も異分野の交流をやり、学生に起業家精神を持ってもらうようなプログラムを一生懸命考えると。我々も考えるけども、学生さんの方は学生のさんの方で、自らこういうことをやってみたらどうだろうかということを提案してくれないかということで、委員会を作りました。大分大学でこういう委員会を作ったのは初めてだと思います。
 ドクターの学生が4〜5人手を挙げてくれました。それで、私どもは趣旨を説明しただけで、退席し、後はもう自分たちでやってくれとお願いしました。これは今は、学内だけで今やっておりますけれども、学外者もこの委員会に一緒に入れた方がいいんじゃないかということで、大分の青年会議所とか、少し若い人のおられるようなところからも委員を入れた委員会をつくって、学生に自ら何かをやろうというような気持ちをもつ、そういう教育をしたい。
 それから、ドクターでいまこの委員会が一応発足しましたので、教育福祉科学部から経済学部は修士がございますので、工学部の3つの学部の学生を集めて修士版の委員会を作ろうということで、今、学生に募集をかけております。修士学生の委員の中から、出来たら将来は、ドクターと合流して委員会をやりたいという話があります。これも学生の前は学部の学生ですから、早期教育ということで、学部学生の方にもやがて広げられればそれそういうことをやっていきたいなというふうに思っております。
 それから、若手教官にシーズの創出をやれということで、これは一応プロジェクトチームを組みまして、一つのまとまったインテリジェントマテリアルの合成とデバイス化の研究ということで、13チームがこれは学際的と言いますか、工学部の学科間にまたがり、機械の先生とか電気の先生とか混じった形でのプロジェクト研究が進行しております。それとは別に、今度は各学部の教官を集めた「物質循環に関する研究」という名の研究、お分かりかと思いますが、廃棄物その他を含めた物質の循環に関する研究を3学部の教官に入ってもらってプロジェクト研究をやる。このプロジェクト研究は、いまからは全部期限制でして、大体2年ないしは3年。それで定期的に外部の人に評価してもらう。それであまり面白くないとかやっても意味がないということになれば、これはすぐ潰すというやりかたでやっていっております。
 それから、知的財産権確保の啓蒙ということがございます。これにつきましては、一応特許の調査を学内でやりました。特許の数、所有しているのは今130という数字が出てるんですが、実はこれは種を明かせば多分企業から来られた先生方が大多数を持っておられて、学内の先生固有のというのは多分少ないと思うんです。これまで、それを取る必要がなかったというわけなんです。先程の講演にありましたように、そういうところがあったかと思います。
 それで、ベンチャーラボの中には、申請用の端末を設置することにしております。それから大分市には弁理士がいま1名おられるのですけれども、その方を我々の枠組みの中に組み込む。ただし予算はありませんので、行政あるいは通産といったところの予算の制度を借りて、とにかく我々のとこに組み込みたいとこういうふうに思っております。
 それから佐藤先生のところは客員教授という制度がございますけれども、我々のところ(SVBL)は学内向けだということで、ポストドクというのをご存じでしょうか。博士研究員という、ドクターコースを出たあとの方を雇うという制度があります。これが聞くところによると10名付いている。実はまだ私のところには予算が全然きて
いないのでちょっと分からないのですが、ほかのところに聞きますと、毎年10名付く。
 ご存じのように、大学も教官の数も減らされていきまして、非常に足りない状態です。現に我々のところ(SVBL)は専任というのは1人もおりません。私が併任だけでやっております。私はセンター長を拝命するときに、学長に文句を言って、人を雇ってくれないなら私は受けないといいまして、一応非常勤講師を雇うことができましたけれども、来年からどうなるかよく分からない状態でございます。
 ただ、そういうポストドクとかあるいは海外研究者を受け入れる。これまあ1名ですけど、それから若手の研究者を海外に派遣するようなそういうシステムがあります。こういう学内向けの施設です。学内向けとは言いますけども、院生がやっぱり起業家精神持つためには、当然学内の先生だけではできるわけないわけで、学内で行われている共同研究の中に参画していって教育を受けるべきであるということで、院生とそれから若手教官にベンチャーに行って、(あちらは)かまってくれなくてもいいんです。行って、何をやっているかをそばに行ってじっと見てくるようなそういう制度とか、いろんなことを考えたいと思っております。
 実は、ドクターの学生さんが社長になっている学生ベンチャー企業というのがいま幾つでしたか、この前のフォーラムで報告されていましたが、全国で7つぐらいあったと思います。大半は結局コンピューターソフト関係、それから1つは、確か機械の、企業さんが機械を購入するときにこういう機械がいいですよというふうなアドバイスをする様な企業というふうに書いてあったんです。しかし、そういう企業はいま(世の中に)いっぱいあるわけですから、成功はかなり難しい。そうなると多分、大学の先生とベンチャー企業が開発したその独自の機械の販売をやっているのではないかというふうに思うわけです。
 学生ベンチャーをどんどん作りなさいと言って、実はまだ先行の大学でもこのベンチャーラボができてまだ4年目のはずです。まだそんなに時は経っておりません。ですが一応作った方の成果ということで、そういうふうに無理して学生さんのベンチャーを作ったからには成果をということで、多分無理して学生さんのベンチャーをつくっているんではないかというふうに考えられるわけです。学生さんがベンチャーを作ることは日本、アメリカ、全世界的にそんなに多くできることではないと思うんですね。
 その次にできることは、大学の教官がいい仕事をして、その仕事を種に会社を創って、その会社を自分のところの大学院生がやるとこういう道だと思うんです。ですから、大学の教官にいい研究環境を与えて一生懸命頑張ってもらうようにお尻を叩くところがベンチャービジネスラボの役割かなとこういうふうに認識して、そのための計画を立てているところでございます。
 
(松尾)
  どうもありがとうございました。
大学の中でこの2つの機関というのは、基本的には産学連携のための窓口という形になります。ご紹介がありましたように、現状は、いいも悪いもこういう現状でございますとしか言いようがないんですけれども、これを踏まえて企業の方のご意見を伺いたいということなんですけれども、過去のいろいろな大学側との共同研究とか、経験を踏まえた方にお出でいただいておりますので、そのへんから真摯なご意見をいただきたいと思っております。お三方にお出でいただいているのですけれども、最初に、元うすき生物科学研究所所長の久米さんに、企業サイドからお話を伺いたいと思います。宜しくお願いします。
 
(久米元うすき生物科学研究所所長)
  久米でございます。
 予め用意した資料を挿入させていただいております。「臼杵地域のバイオテクノロジー研究と産学官交流について」と題して書いています。その資料にありますように、私どもの研究所の設立は、1985年ですからもう14年経ったわけです。その頃は、「バイオ、バイオ」とマスコミで騒がれていた時代でして、その新しい先端技術を勉強し、実践して身につけようということで始めた組織であります。
 この組織の特徴というのは、食品と医薬品それにキノコの種こま製造の三種の企業がいわゆる異業種交流によってつくった協同組合というところにあり、全国的にも先進的な組織として大変注目されました。後に中小企業融合化法が制定されましたが、その先例に取り上げられた経緯もあります。
このことをもっと遡って考えると、研究所設立のきっかけは、大分県バイオテクノロジー懇談会の発足にあり、これが大分県における産学官交流組織の始まりであったと思います。臼杵地域の企業はいち早くその交流に参加し、地域の振興に役立てようと考えたわけです。中央からおいでの先生方を臼杵にお呼びしていろいろとお話を伺うことから始まりました。今日、小野田、喜多見両先生のお話を伺っていてまさに隔世の感と申しますか、10数年前の状況からするとその当時私どもが考えていた理想にずっと近づいてきているように感じました。
 この資料の内容は、それまでの経過の概略を書いています。中小企業がやれることというのは一体なんだろうということで、遺伝子組み換えの仕事は大きな資金を要するので大企業しかやれない(その当時の話ですけど)、細胞融合技術であれば、従来の技術を有効に利用することで十分可能であるという発想で始めたわけであります。それから大学の先生方のお知恵を借りよう、あるいは技術を導入しようということで、臼杵にきていただいて実習、指導をしていただきました。
 それともうひとつは、臼杵地域の各企業の技術者同士の交流を図ることを考えました。ご存知のように臼杵では、富士甚、フンドーキンという商売の上ではまさにライバル、市場ではお互いにバッティングする企業ですが、技術の面では共通する部分があるということで、(同じ大学卒が多かったせいもありますが)交流を図ってお互いの技術を高めようという、このような趣旨から協同組合のかたちで組織化したわけです。
 研究所の運営については、前例のない組織のことでもあり試行錯誤の連続でしたが、資料の2ページの左欄に掲載しています「組合の目的」をよりどころにして何とかやって参りました。要するに常に新しい技術挑戦しよう。参加企業の技術者の交流を図り、お互いに高めあおう。そうすることが各企業の技術の育成、高揚につながっていくとこういう観点でやって参りました。
 この組織の特徴といいますが、良いところを幾つか紹介します。中小企業の技術者は、なんでも屋的にいろんな業務をこなしていかなくてはなりませんから時間に追い回されて、じっくり研究ということがなかなか出来ません。特に最近はリストラクションによって人員も減らされてきたので、その傾向はひどくなっています。それが研究所に詰めていると、ゆったり出来るというと少し語弊がありますけど、現場の事情
に追い回されずにじっくり考察出来る環境があります。
 もうひとつは、さまざまな講演会、セミナー、学会などにどんどん参加していろんな方々と接触する機会がある、あるいはつくることが出来る組織であるということです。情報収集の場として非常に有効な組織であったと感じています。特に学との関係は、大分大学は勿論のこと九州内若しくは日本全国の先生方と必要に応じていろんな通信手段を用いて情報交換が出来る極めて効果的な組織でした。
 更にもうひとつは、例えば中小企業融合化法のような(実際には業種数などの用件が満たされずに非適法でしたが)国や県の公的資金を活用するには非常に有利な条件を持っていました。資料2ページの右側の欄に記載しました先端的研究成果展開事業といいますのは、幾つかの中小企業が、学の側の研究成果を実用化にむけて様々な検討をくわえるというしごとで、その要の役割を生物科学研究所が担い推進と総括を行いました。今まではこの構想が発展して全国を対象に実施されていますが、当時は私どもが取り組んだ頃は予算規模も小さく全国で2〜3カ所くらいしか適用されていませんでした。この展開事業は、大分大学の森口先生を中心にして、こうじかびの細胞融合によって作り出した「ウスキザイム」の実用化に関するさまざまな試験が行われた結果、その後も成果の企業化について種々検討が進められてきたところでございます。
 ところで、私は6月で研究所をリタイヤしましたが、その後任が出来ずに大変残念な思いをしています。こういう産学官の交流を推進する上で一番大事なことは、いろんな仕掛け、仕組み、組織等をつくるために策が講じられ、資金が投じられていますが、人という問題はそう簡単に出来るものではないということを考えておくことです。こういう「うすき生物科学研究所」のような組織の中で、その組織を活発に活用して動かしてゆく人材をもっと早くから作っておくべきであったという反省をしています。産学官交流を推進するについて、各企業のオーナーの方々が人づくりの点でどれほど力を入れておられるか、現状では私はすこし疑問に思います。もっと大学に随時派遣できるような体制を作る。技術者だけでなくオーナー自身も直接出かけてゆく。そうやって人と人のつながりを沢山作ることによってシーズが生かされる。人がいなければ種は芽を出さないということを強調して、私の発言を終わりたいと思います。
 
(松尾)
  どうもありがとうございました。
かなり成果という話が出ていたわけですけれども、最後にシーズを具体化する、人と人のつながりという話で、このへんが人づくりという話がメインなお話だったと思います。続きまして、株式会社江藤製作所の社長でいらっしゃいます鈴木規夫さんにお願いします。
 
(鈴木江藤製作所社長)
  地元の江藤製作所の鈴木でございます。私どもの会社材料の粗加工をする分野と、ケミカルプラントを作る部門、精密板金をやる部門、省エネ診断をやる部門がございまして、福岡、佐賀、大分4カ所の工場で営業しておるわけでございます。レジメを書くのを怠りましてお手元にございませんので、大変申しわけないですけれども、お耳をお貸しいただきたいと思います。
 大分の産学交流が工団連を中心に組織的に始まってから大体10年ぐらいなります。その当初から、隣の久米さんと産学官交流推進委員ということで運営に関わってまいりました。これは毎年そのテーマを10から12〜13設定してグループを作って研究開発をやると。あるいは勉強会をやるということをやってきてるわけですけれども、その研究会の中で私のとこは、福祉機器の研究、それから科学環境エネルギーの研究、それから花卉園芸作物栽培、これは特に大分はみかん栽培が多いもんですから、傾斜地の農業の機械化の研究グループ、この3グループに入って活動してまいりました。
 これ以外に、東九州化学工学懇話会というのがありまして、これは大手企業が多いんですけれども、大学と企業でそういう会を作っておりまして、講演会とか見学会もやってまいりました。
 これ以外に、具体的にでは研究開発の事例として何があるかということですけれども、いま進行中のものでは、今日パネラーで出ておいでになる、瀧田先生の触媒を使ってフロンを分解するというこの方法でやりますと、従来の方法よりはるかに低温で安くできるということがありまして、これは大分地域のコンソーシアムのテーマになったわけですが、去年今年と2年で1億5,000万いただいてやっておるわけです。
 予算管理元は、九州産業技術センターがまとめておるということで、触媒については瀧田先生を中心に、触媒の製造は昭和電工、それから触媒化成工業ですか、私のところは装置の開発ということで、そういう分担で進めておりまして、既に、実証プラントを大分大学の構内にもう据え付けて実証試験が今行われております。これでおしまいではなくて、むしろ操業している中でいろいろ設備上の問題点が出てくるはずでありまして、これからだとそういう意味では思っております。
 最終の私どもの目標としては、いかにコンパクトで性能のいいプラントを作るかということだというふうに考えておりまして、これがどのくらいの市場性があるかということは、先ほどのご講演の中で、これは行政とのマーケティングが必要だなと。ヤミで捨てられてるフロンを、今のような捨て方ができないようなしっかりした規制を設けてもらえば、このプラントが売れるなというふうに考えておりまして、そこまでいかないと企業としてはうまみがないわけであります。
 それからもう1つ、在宅介護支援機器の開発ということで、これは始まってもう10年ぐらいになりまして、いくつかの商品を今まで出してきております。その最初のときに、在宅介護にどういう機器が必要なんだという調査から取り組みました。そのときに大分大学の宮川先生にご指導いただきながら一緒に調査をやったという経緯がございます。
 その後、慈愛システムという在宅介護に最小限必要な機器の組み合わせというものを商品化して出しました。更に、最近大分医大の理学療法士の原田先生から出されたテーマで、リウマチ患者の立ち上がり補助器の簡便なものを考えてくれという投げかけがありまして、昇降座椅子型のたち上がり補助器を開発しました。それで原田先生にできたものを評価していただくということでテーマを出す。それからできたものを評価するということで先生のご支援をいただいたわけです。
 しかしその後、これは一般の年寄り向けにも使えるなということでデザインをやり直しました。ハイローチェアーという商品名を付けて去年からもう二百数十台売っております。その後、今年また、更にそれにキャスターを付けて家の中を移動できる。それから従来の吊り下げ型のリフトを、椅子型のリフトということで工夫を加えて今年発表しまして、いまかなりの反響を呼んでおりまして量産にいま入ったところでございます。こういったことはほとんど大学との関わりで始まっておる、あるいは指導いただいておるということで進めてきておるということでございます。
 それで、ずっと10年間やって感じたことですけれども、この10年の間に大学に非常に行きやすくなって、先生と非常に親しくなっていろんな話ができるようになったという意味では、情報のソースも広がってレベルも上がったような気がするということも1つありました。明らかにこれはメリットがありました。
 ただ、10年やって全般的に見たときに、これは組織運営の立場で考えましたときに、それほど実績が出ているとはまだ言えないというふうに思います。ですからメリットはあるけれども、これはもっと加速する必要があるなということは最近感じておるわけでございます。
 それから問題点については、私のところに関する限り、いまだ問題に突き当たってはおりません。一般的な問題点としてはあるわけでございますけれども、この後の議論があると思いますので、とりあえず以上までのご報告にとどめておきたいと思います。ありがとうございました。

(松尾)
  ありがとうございました。特にメリットの面だけなんですけれども、問題点については後で議論させていただきたいと思います。
それでは、続きまして、最後ですけれども、新鶴海興産株式会社の取締役部長宮川さんにお願いします。

(宮川新鶴海興産(株)取締役部長)
  新鶴海興産の宮川と申します。お手元の資料は実は私のメモ書きをお送りしたつもりだったのですが、このような形で皆さまのところに配布されてしまいました。そういう訳で会社名も入れておりません。皆様に配布された資料を基に、私どもの経験を通して感じたことを述べさせて頂きます。
 皆様にお出しするつもりはなかったものですから、内容はちょっと独断で判断したものでして、実態と違うところもあるかと思いますが、ご関連の方はご了承ください。 過去の共同研究事例ですが、テーマは産学官になっていますが、私どもとしましては大学との共同研究というのはいまだ経験がありません。当初、これ平成1年と書いておりますが、大分県の高度技研さんの紹介等がありまして、こちらと一緒にいろいろと研究をやらせて頂いて現在に至るようになっております。
 最初は、画像処理装置、2値画像での寸法計測とかそういう計測技術の習得を、自社技術に取り組もうということで行いました。一応1年以上かかりましたが、装置としては完成いたしました。その後、人材不足対策というテーマで、やはり補助金を頂き、ICの表面検査装置(これはハンドラーになりますが)の開発に着手しました。一応最終の形にはなったのですが、マーケットに受け入れられるまでには至りませんでした。後で出てきますけれど、やはり世の中の技術のスピードは非常に早くて、私どもが世に出した時にはもう既にだれも振り向いて頂けないというような状況でありました。この後この装置をなんとか売れる商品にしたいということで、従来取得した技術といいますか、ソフトのノウハウを使いまして、多少時間はかかりましたけれども、最終的な形を見るに至っております。
 それからやはりもう1件、画像処理系で自社商品を開発しようということで、あるヒントから従来の技術を補助的にといいますか、従来の既にお客様の持っている装置では、今一つ機能が上がらないというようなところに、私どもの技術を付加するこにとよって性能が上がるというようなものを開発しようということになりました。一応ある程度の基礎はここで作りまして、その後、量的には少ないのですけれど、現在ま
でこの商品の出荷が続いております。
 それから、これは平成6年度、7年度以降も続いたのですが、3次元の画像計測をやろうと。当時は、レーダーによる3次元計測がかなり実用化されておりまして、これでは新規性がないということで、画像計測で実用化をということで取り組んだのですが、やはり実用化できるまでには至りませんでした。ほぼ諦めていたのですが、再度方式を変えて取組みました。これは若干先程から問題になっておりますけれども、特許という、既存の特許との絡みの問題もあるかもしれませんが、開発はかなりのレベルまで達成しております。
 それからこれは、私どものビジネスのメインなのですが。あと何か商品が欲しい、仕事が欲しいというようなところから、技術開発が必要だな、というような必要性が出てきておりました。でも、技術をやりたいけど人がいない。リーダーもいない。それからお金もない。すべてないない尽くしで、なかなかうまくいきませんでした。先程の画像処理につきましては、ある程度の基礎的な技術を社内につけたということと、県の方との機関とある程度のつながりができたということが成果になったと思ってます。
 私どものビジネスもある程度広がってきておりまして、お客さんからのニーズも集まってくる時代になって来ました。それから、社内の人材も(以前に比べますと)4〜5年経ちますと成長してきておりまして、何をやったらいいか、何をやろうというようなものは大体自分たちで決められるような時代になってきております。それで新たに取り組んだのですけれども、やはり社内の技術だけではどうしてもやはり先端のところを成し遂げるには非常に難しく。そういう面では、県の方とかその分野の大学のサポートを本来は欲っしたんですけども、最初の共同研究から言われてたことですが、自分の会社の技術屋さんのレベル以上のものを求めることはなかなか難しいということをですが、これ以来ずっと自社技術で開発ということで続けております。やはり世の中のスピードの変化は非常に激しいものですから、1年も2年もかけて末端の商品の開発をやっていたのでは、出来た時にはもう競争力がないものになってきています。しかし、やはり人の問題、それから技術の問題で今一歩というところになっております。
 開発の援助ということを書いておりますけども、ある程度ほかのビジネスで開発投資を少し援助するようなことが出きれば、それほど困るということはなかったと思っております。公の機関のお金を使った場合には、先程もちょっと出ておりましたが、申し込みとか途中経過の報告とか、終わった後の報告、これは非常に時間を労するわけで、これだけを考えますと、あまり使いたくないというようなことが担当者の間では出ておりました。
 それから、この1〜2年の方ですけども、大分こうした商品もある程度お客様に受け入れられるようになってきますと、お客さんの方も国内だけではなくて海外にまで広がってくるようになります。当然、競争相手.コンペチターも海外メーカーまで広がってきています。    
 先程の高速のパターンジェネレーターという話がちょっと出ましたけれども、世の中に出ている商品、或いはそれ以上のものがないとなかなか勝ち残ることは難しいということ。高度に差別化された商品を投入しないとやっていけないというようなこと。それから短期間で開発しないとまた商品化は難しい。そういうものを含めますと商品開発に非常にお金がかかるというような状況になってきております。これをやらないと生き延びていけないわけで、私ども、大学とのお付き合いはそういう(共同研究)面ではありませんので、やはり企業どうしで協力できるところをやった方がやはり早いというような、どちらかというと、学というよりも産どうしという傾向に流れやすいという状況です。
 それから、次の方に、双方向性のある産学官の連携を実現するにはということで、ほとんど主観になっておりますけども、述べさせて頂きます。私ども、大学とまったくそういう面で研究しておりませんので、大学についてはほとんど何も分かりません。情報もないといっていいに等しいですね。お互いに知らなさ過ぎる。大学からしても、地元の企業の中身について、どんなことをやっているのかというのもあまり興味を持っておられる方もそんなに多くはないのではないかなという、そういう気持ちを多少は持っております。
 それから、企業側、大学側その双方向性という話がありますけども、そのターゲットにしているものが合っているのかな、レベルが一致してるのかなというようなことで、こういう求めていることの違いが大きすぎるのではないか。企業としては毎年、やはり生き延びていかなければいけないものですから、かなり必死になって開発しないといけない。スピードも要求される。それに対して、大学側としては産とそういうことをやるという必然性というものがどこにあるかという、そのへんが私どもは理解できてない、知らないということです。
 それから、必要としている人材がいるか。私ども中小企業というのは、やはりどうしても人を求めたがるといいますか、自分のところに無いものをなんとか欲しいなというそういうものございますので、これは本来とは違うかもしれないんですが、一般的に中小企業としましては、自分のところに無い部分をサポートしてくれるようなそういう人材というのを求めたがる傾向に今あるということです。これは私どもも大学を良く知らない、大学側も企業を知らないということもあるかと思います。
 それから、またダブりますけども、連携しなければならない程のそういう必要性が何だろうかなという、企業としては、商品化したいとか技術を身に付けたいとかいうものはあるのですが、大学側にとってそういうものは何だろうなんかなというようなことが多少疑問としてあります。
 それから、連携によって得られる成果、成果というか、双方に享受できるのかなということで、先程からの説明の中で通産省、それから大学側のその仕組みもかなり変わっていこうというような説明があり、ある程度理解はできているのですけれども、本当に大学として地域の企業と密着して連携を進めていくというメリットをどこに、またどうやってそういう成果を享受できるか、そこらがはっきりしてるかどうかなあという、まだ私どもよくここらが理解できておりません。私どもとしては、自社に無い力、技術、先程触れました、もし私どもが使えるような特許とか技術を持っておられれば、是非そういうことは使わせていただきたいとかいうようなことは感じておるのですけれども、あまりよく情報を知らないということから、なかなかそこも分からないというような状況になっております。
 簡単ですけども、これで終わります。
 
(松尾)
  どうもありがとうございました。
いま企業側のお三方から、産学連携の経験を踏まえてご意見をいただきました。最後にお話いただきました宮川さんには、かなり詳細にその問題点についてお話をいただいています。この今出ました問題点について、一応大学の方からコメントをいただきたいのですけども、その前に、実はお時間の関係で、通産省の室長がお帰りのようなので、大変申しわけないんですが、もしいらっしゃったらば先によろしいですかね。
 
(喜多見大学等連携室長)  30分ありますから。
 
(松尾) 
  時間大丈夫ですか。ああそうですか。ではちょっと申しわけありませんけども、先に企業側のご意見を踏まえて、特に先程のレジメにございます、例えば産学連携というのは大学にとってメリットがあるのかというふうなこともありますし、こういうご意見について大学側としてちょっとコメントをいただきたいと思っているのですが、どちらでも結構です。
 
(瀧田)
  それでは、私、実は平成6年から9年のまでの3年ちょっと、私地域共同研究センター長をやっておりましたので、その時の経験も踏まえてお話しします。今日は双方向というふうなテーマになっているんですが、私は、幸いにも今考えてみますと、地域の双方向の共同研究というのは3つやってると思うんです。
 1つは、どんどん正直に言いますが、大分ガスさんとです。大分ガスというのは都市ガス製造をやっていますから、天然ガスを製造する装置を作っておかなければいけないという規制があります。で、合成天然ガスを作る触媒装置を作りたいと申し出がありました。「ああ、うちでやりましょう」と。我々のメリットとしては新しい触媒反応開発するということはこれはメリットですので、じゃあついでにドクターコースにだれか1人入ってくださいよということで、ドクターコースに学生さんを迎えて、それで触媒開発をやりました。それで石油ガス、プロパンからメタンを作る。残りはカーボンになるんですが、こういう特許を取りました。今、大分ガスさんは熱量変更を抱えていますから、これが終わったら実用化しようじゃないかと話しております。それは是非通産の方から支援を欲しいなという、これが1つです。
 それから、鈴木社長のところとは今装置を作ってもらっている。これ実は本当は、鈴木社長のところとは赤字をかけてしまっているんですね。予算配分したよりももっとかかってしまって。これも一生懸命、頑張って実用化して稼いでもらうということでお返しできればなというふうに思っています。
 それからもう1つは、県南の方の小手川産業とか米庄石灰さんとか4社が津久見ファインセラミックス研究センターというところを作っております。今日も杉原さんが見えていますけども、要するに何社かで研究組合を作ってらっしゃるんですね。そこと一緒に共同研究をやりまして、これは炭酸カルシウムの形態制御をやりたいと。で、杉原さん自身がいっぱい特許持っているんですけど、うちの学生を付けてやった研究も成果がありました。実は杉原さんにもドクターコースの学生になってもらいました。ドクターコースの学生になってもらって、それからうちの方は卒業研究の学生さ
ん1人付けて研究をやって1週間に一ぺん夜ディスカッションをやるんです。会社が終わってから来られてやる。いいやつは特許にする。うちと一緒の成果がどうなったのかよく分かりませんけど、最近、成果は大手のとこから買いが入りまして、装置を作っております。これにも何とか補助金を、実用化のためのものですから、補助金がもらえるといいなと思って、どういう資金があるのか一生懸命、調べているところです。
 結局この形態制御というのは、どうしてそれがそうなるのかというメカニズムを調べれば、我々は論文が書けるわけですから、我々にとっても十分メリットはありますし、それからドクターの学生さんの獲得、これは文部省に強く要求されます。「お前のところはドクターを作ってやったのに定員が空いてるじゃないか」と文句を言われます。それが埋まりますので十分なメリットがあります。
 まあ幸いにもと言いますか、どちらもメリットがあるということで、今のところはいくつかの事例がございます。
 
(佐藤誠治)
  いや、大学との連携に大学サイドとしてメリットがあるのかという非常に根源的な問い掛けで、我々は元々あると思いながら、もうそれは当然の話だというふうに思いながらやってきたところを問い掛けられて、非常に戸惑っているんですけれども、先程瀧田施設長の方からもありましたけども、やはり大学というのは人的資源だとか、あるいは財政的資源がたくさんあるように見えて、やっぱりない。ですので、地域の企業と連携することによって、そういう人的資源だとかあるいは財政的資源が拡大していくという、もう非常に当たり前のメリットを感じておるわけです。
 地域共同研究センターとしては、これは研究者個人として、ちょっと個人から離れるわけですけれども、共同研究が増えるということ自体で組織が評価されるというそういう面もありまして、私どもとしては共同でやっていくこと自体を、もうこれは当然善であるというふうに思っているわけです。メリットがあると。
 先程、喜多見室長の方から、法律の目的のところにも、連携することによって企業のメリットもある。だけど大学の方のメリットもあるんだよということを非常に明確に示していただきまして、これはまあ別にそういうことを言っていただかなくても我々分かってたわけですけれども、そういうことをやはり私どもとしては日常的に感じつつ共同研究をやっていただけるような形でお願いしたいなと思っています。
 逆に宮川さんの方にお聞きしたいのですけれども、産同士で研究開発をやっておられるわけですけれども、学に求めるものというのは本当にないのかどうかです。あるいは大学が何をやっておるということ、あるいは大学にあるシーズを情報として掴んでおられないのではないか。そういうふうなこともちょっとおっしゃいましたけれども、むしろ技術シーズを大学に求めていくということというのは、こう言っては非常に批判を浴びるかもしれませんけども、安くやられる可能性もあるのではないかなというふうに私は思ってるんですけども。以上です。
 
(宮川)
  おっしゃるとおりで、私ども最初の方からも言っておりましたけれども、学とのコミュニケーションが非常に少ないものですから、そのへんの情報というのはほとんど持っていないのです。で、ちょっと中にも書いておりますが、奨学寄付金ですか、それもどちらかというと会社を知って頂きたいというような目的、できれば研究の成果も少しは期待したいなというものはあったのですけれども、やはりちょっと動機が少し不純なのか、(ありまして)2年続けましたが、もっと継続して実のあるものにしていこうというようなところまでには至らなかったいうところです。
 私どもの場合には、最終の商品開発みたいなものになってしまいますので、ちょっとあまりにもドロドロしているところがあります。それから大学についての情報も私どもはよく知らない。多分大学側もあまり知らないんだろうとは思いますけれど、私どもの方がなお知らないと。それまあおっしゃるとおりです。 それと、非常に短期間に開発をやらないといけないという、対象がそのようなもの
ですので、やはり専門的なことをやっているところの方と共同開発をやった方が早いなという、またそのような分野の技術を知っている方も居られるということで、どうもそのように流れやすいのです。
 ですから産学の共同研究を拒否するということではなくて、基本的に伸ばせるとこ
ろは共同研究をドンドンやっていきたいというように思っております。
 
(佐藤誠治)
  やはりお互いに知らないというのはやっぱりありますね。産学交流会なんかを通じてやっておりますけれども、知ってるようで意外に、お互い知らない。 先程研究コーディネータ活動というのを紹介いたしましたけれども、コーディネータの先生方が出向いていってもらってくると言いますか、情報を大学の先生方に話していただきますと、「いやそんなこともあったのか」ということで、非常に新鮮な驚きがやっぱり一方ではあるわけです。じゃ大学の方も、こういうものがありますよということを言いますと、ああそういうことですかという形で、やっぱり情報交流が非常に現状ではまだ不足してるなということで、地域共同研究センターとしては、これは文部省の事業なんですけれども、21世紀型の産学連携手法の構築というそういうふうなことで予算要求もした経緯があるんです。たまたま今年はうまくいかなかったのですが、あるいは県の方でも現在情報化を進めておられますね。後で紹介があるのではないかと思いますけれども、いずれにしても、やはりあんまり技術の一番何と言いますか、企業機密に属するところというのはなかなか出しにくいわけですけれども、何をやっているかということ自体をお互いに披瀝しあうというのは大事ではないかというふうに感じています。
 
(松尾) 
 今、ちょっと問題点を煮詰めようとしているんですけども、時間の関係がありますので、産学連携について講演いただいた喜多見室長に、今の議論を踏まえまして何かコメントがありましたらお願いします。
 
(喜多見)
  すみません。では、お先に失礼するということで。
今のような議論が今後とも行われることが重要だと思っていますけども、今のそのメリット論というのはまさにおっしゃるとおりだと思いますけれど、私どもこれまで大学の中で、先生方のメリットというよりも大学そのもののメリットが産学連携はあまりなかったのではないか。例えば、大学がいろいろ産学連携のために支援をしても、結局その先生方の研究室だけにお金が入るが事務局にはあまりお金は落ちない。例えば受託研究を受けても、その間接費が全然大学に入ってこないので、そういう意味で大学にメリットがないということから、大学の事務方も本気になりにくかったのだろうなと思っていまして、文部省さんとお話をして、今年、文部省の要求の中で、そういった受託経費の中からの一定の割合を、大蔵省ではなくて大学にきちんと間接費を落とすというようなことで産学連携をすると、例えば、瀧田先生のお蔭で大学も潤ったということで、大学としてのメリットを作るというようなことも今やっております。
 それからあと1点だけ申し上げますと、やっぱり産と学の間の対話ということで、いま大分大学のコーディネーターというのは非常に素晴らしい活動だと思っていますけども、それにあえて注文を申し上げますと、コーディネーターの方が産のニーズを学にお伝えするとこれは非常にうまくいくのだと思いますが、実は難しいのは、学の技術を産にとってはこれが一体何になるのか、事業化した場合どうなるのかというそのビジネスプランを作るというところが意外と、先生は当然できないし、企業でもなかなかそこのところは実は難しいということなので、そういったところのビジネスプランを作るような機能、それを提案するような機能まで含めてやられると効果が上がるのではないかと思っています。
 それからもう1つ、これは大学の先生方の技術と言ったら、もちろん最初から事業化を考えているわけではありませんので、実はその事業化までにステップアップの研究が必要なことが多いと思うんですけど、そういったもののために、例えば地域で何がしかのお金を用意して、機動的に配分できるというような機能があると何かもう一つ大学の技術がうまく産業化になっていくのかなということを感じております。以上です。

(松尾)
  どうもありがとうございました。それでは引き続き、問題点をもう少し煮詰めたいのですけれども、よろしいでしょうか。最初、双方の情報交換がないんだという、あるいはもう少し言いますと、その仕組みがはっきりさせられていないということではないかと思うんですけれども、それと今室長の方から少し出ましたけれども、ビジネスに結び付けるというのが、その仕組み、そこらへんがどうなっているのかだと思うのですが、企業側お三方からもし何か問題点という形でありましたら少し出してください。
 
(鈴木)
  シーズをビジネスに結び付けるのはこれはコーディネーターではなくて企業家自身だと思います。だからそういう情報が、大学でどういう研究がなされているのか、どういうシーズがあるのかということを企業側で知りやすいような仕組みを作っておくことが大事だと思うんです。大分大学で先生方の研究のテーマとか毎年出してますよね。ああいうのを私は必ず見ています。そうしてお金になりそうなやつを探すわけです。そういうのをもっと広く、大分大学だけではなくて、広くいろんな大学のを見られるようになるといいなというふうに思っております。ただそこでコーディネーターが介添えするということはこれは意味があると思いますけど、最終的には経営者がそれを嗅ぎつけてものにする力がなかったらこれはできないことだと思います。
 それからついでにいいですか。大学にメリットがあるかという問題については、これは当然あるだろうと思います。さっき先生もおっしゃったとおり。私のような零細企業と組んでメリットがあるかなあということについては、私もまあ忸怩たるものがあるもんですから心配しながらやっているんですけども、瀧田先生のフロン分解装置も、大学には機械工学の先生もいるし、電気も電子もいるわけです。しかし、その先生方、さっき横の連絡も悪いという話がありましたけど、仮に組んでも装置はできないと思いますよ。装置をまとめるのは企業でなきゃできないと思います。そういう自信がないとこういう大事なテーマはいただけないと思うんです。本当は昭和電工とか住友化学とか大手と組まれると成功率も高いわけで、先生がいま厚意を持ってうちのような零細企業指名していただいたというのは非常にありがたいとも思いますし、責任を感じておるわけですけれども、これは遮二無二、物にしていくと。少なくとも装置については瀧田先生はあんまり詳しくない。我々の方が詳しいんだという気概で取り組んでいるわけでありまして、そういう意味では、先生に何がしかお返しができるだろうというふうに思っております。
 それから、企業と大学との目線が合わないということをよく言われる。中小企業の場合特にそうですね。なかなか同じ専門で比べますと、先生方のレベルと中小企業の技術者のレベルが格段の相違があってなかなか合わないということはあります。しかし、これは企業側が努力することによって近付いていきたいというふうに、そうしないと成立しないと思っておりますから、まあひとつ大学側も手をとって指導していただければ、もっとその実績が増えていくのではないかというふうに思っております。
 
(松尾)
  どうも企業の努力の方を強調されているんですが、いやそうじゃないという機関もありましたら。どうぞ。

(久米)
  大体鈴木さんと同じことなんですけども、問題はそのチャンスをいつ作るかということなんです。企業側は常に感度を高めて、自ら今どういうことが欲しいかということをいつも頭の中に入れておいて、先生方と常に接触する。実は、私、産学官交流グループの忘年会で、先生方といろいろお酒を飲んでやり取りをしているうちに、つい独り言を言いました。焼酎屋さんがアルコールの測定をするのに、現場管理をするのに適当な器具がないという話を聞いておりました。それをふっと話したら「実はいいセンサーあるよ」と、これなんですね。いまそれを一緒になって共同研究を始めましたけども、こういうチャンスを作るということが非常に大事ではないかと思います。

(松尾)
  何かほかにございますか。 常にチャンスをというか、先生と企業が結び付けるチャンスを作っていくというか、ただ、今までは多分かなり公式的すぎたというか、PRという程度に終わっていて、実質的なそういう接触がなかったような、多分そういうことではないかと思うんです。情報交換がないというのはですね。
 
(鈴木)
  もう1ついいですか。
 
(松尾)
  はい。
 
(鈴木)
  産学交流の障害になってるもう1つ、よく言われるのは、先生方の評価です。これは社会貢献に対してあまり評価を今までされるシステムになっていない。論文の数と内容だけだと。それが世の中に役に立とうと立つまいと構わないという風潮があったわけです。これからはもちろんそうではなくなるのでしょうけれども、二度評価したらいいと思うんです。論文を出したときに評価して、これが世の中の役に立ったときもう一回評価すると、1つの論文について。というふうにやれば、例えばこれからの評価のあり方にマッチするのではないかなというふうに思います。
 
(松尾)
  評価も含めてということになりますけども、大学の方から何かありますか。なければこのへんで大体問題点がいろいろ出ましたけれども。
 情報交換の具体的な仕組み、それから大学の研究に対する評価、その二重の評価をするというか、世の中に役立つという話ですけども、それと先程ちょっと出ましたけども、コーディネーターの介添えというのが非常に大きいという話、それからやっぱり大学と企業が接するチャンスをどうやって作っていくかというか、日頃の日常の過程でどうやって作るかという話だと思うのですが、そのへんがあるのかないのか、多分こちらにお出でになっているお三方というのは、かなり大学のメリットを共有されている方なので、多分一般的にはそうではないというのが多いのだと思うんです。そのへんで多分これからちょっと議論をしてみたいと思いますが、ただ、地域という意味の、枠組みで考えますと、大学と企業というだけではなくて行政の役割が非常に大きくなっております。
 最近、「産業創造機構」という新しい仕組みを作られて、これからの新事業創出という形で計画されてるわけですけれども、県の方から行政の立場でいろいろな考えについてお伺いしたい。そのへんがちょっと、大学と行政と企業が本当にどのへんで結
び付いたのか、どのへんでずれ合っているのか、多分これが重要な問題ですので、そのへんでちょっとお話を伺えたらと思います。
 今日は、特別に大分県商工労働観光部長の佐藤さんにお出でいただいています。宜しくお願いします。
 
(佐藤慎一大分県商工労働観光部長)
  県の商工労働観光部長の佐藤でございます。今日は、会場の方には産業創造機構の理事長もいらっしゃいますし、また、産業科学技術センターのセンター長もいらっしゃいますので、私がここでお話する中で、まだ大変素人でございますから、問題点があればそちらからも補足をしていただけたらありがたいと思っております。どうぞ宜しくお願いします。
 まず、今お話がございましたけども、今年の4月から中小企業振興公社と技術振興財団を統合しまして「財団法人大分県産業創造機構」を作ったわけでございます。新しい事業の創出ということをメインに据えて県の方もいま事業を進めております。
 そこで、この機構を今後どう強化をしていくのかという問題も含めまして、まず、今やっています県の施策体系、これを皆さん方にちょっと説明をさせていただきたいと思います。
 一番最後に県の研究開発支援体系ということで、資料が付いておりますが、これは第1ステージから第3ステージまでということで、まず最初の第1ステージでは、「産業技術振興指針」ということを掲げてございます。丁度私も以前観光振興課長を平成6年頃にしておりまして、7年の3月にできあがったのがこの私が今手元に持っております産業振興ビジョンでございます。これはもう皆さん方もご覧になったかと思うんですが、これについては、工業と商業とそれから観光の3つの分野にそれぞれ分
けまして、新しい21世紀に向けたビジョンを作ったわけです。中でも、工業につきましては、高付加価値型産業という形での部会を設けまして、もちろん大分大学の先生方にも協力をしていただいて作成をしました。
 このビジョンの中で、今後の方向として2つのキーワードがございまして、1つは高度化でございます。これは当然技術の高度化なり産業の高度化と、いわゆる創造的高付加価値型の高次知的産業を作っていこうという内容でございます。
 それからもう1つ融合化でございますが、これについては、一次、二次、三次産業いろんなその分野の違うものがお互いに融合して新しい産業を生んでいく。いわゆる新事業創出をいろいろと進めていこうとこういう2つでございます。それを進めるために新しい大分の産業づくり推進会議というのを設けまして、それをいまそれぞれ各界の代表者にも参加してもらって進めておるところであります。
 そこで、それを実現していくステージ2の段階でございますが、ここにありますように、「産業技術の振興、研究開発の促進」ということで、まずはニーズ、シーズを発掘・調査をする。そこでマッチングをいろいろさせていく。その前段をやっているわけですが、地域産学官交流グループ、これは工団連が中心になりまして、12グループ作りましていろんなグループが活動をしております。
 また、異業種交流グループ、技術・市場交流プラザというのを4つ程県内に作りましてこれも進めておりますし、それから融合化促進グループという、これは中小企業団体中央会で補助している4グループによるものでございます。
 また、それから公設の県の試験研究機関相互が、ほかにも農林水産業とか衛生とかいろんなものがございますが、そこがお互いに交流の中から新たなニーズやシーズを掘り起こしていくという形でのものが一番上でございます。そういう中から、交流、そして共同研究が始まり、新技術、新製品開発に向けて動きをしていただこうと。
 それからその下にありますのが、今回作った「新事業創出支援機関」ということで、大分県は全国でもトップの4月1日から発足をさせておりますけれども、これを運営をしていくということで、新しい事業を創出する際のシーズ、ニーズの掘り起こしから、マッチングから、そして研究開発の支援から事業化に至る各段階における支援コーディネートこれを進めていくということで、コーディネーターを今のところ2名でございますが置きまして進めております。
 更に、これと同時に、支援機関として大きく位置付けられるのが産業科学技術センター、それから中津につくりました工科短期大学校、佐伯のメカトロセンターとか、県の経済情報センターこういうものがそれをネットワークをしまして総合的に支援をする。ここでやっている事業としまして、ここにフィージビリティ・スタディとありますが、今年は特に要素技術を調査いたしまして、これをデータベースにしていこうということで、大学や企業のシーズをやるとともに、いろんな産業インフラ等の調査をして、これのデータベースが今年度内にできあがる。で来年度以降は、これをいつでも中小企業の皆さんにも使っていただけるということになるわけでございます。今年の予算は一応8,000万円ということで、来年度はこれを1億円以上に上げるという見込みで今予算要求をやっております。
 こういうことと同時に、もう1つは、今日のお話の中でも大変重要な話だったと思いますが、「技術情報の提供」では、特に特許電子図書館情報の活用ということで、こういった事業も一緒に進めておるわけです。これには当然大学等が一緒に協力してやっていただく。
 そして、次にステップ3と書いてあります、「新技術開発製品化段階」では、技術開発関連事業の絡みで先端技術の広域共同研究、公設試が互いに他県と協力しあってやっていくもの、あるいはこれからの重要な課題であります環境問題を県内の公設試で共同研究をやるとか、産学官の、大事なところでございますが、地域連携共同研究事業ということで研究テーマを設定をし県内中小企業と公設試が共同研究を行うもの、さらに、県外との広域的な共同研究を行う地域コンソーシアム研究事業、福祉関係の研究を行うウェルフェアテクノハウス研究開発推進事業。また、個別企業に対する補助としては創造技術研究開発費補助事業などがあります。さらにこれまでの中小企業近代化促進法と中小企業新分野進出等円滑化法が中小企業経営革新支援法に統合されまして、今日も審査会がございましたが、5件程経営革新計画が出ておりまして、これの具体的な助成等は来年度というような形で進めてまいりたい。
 それからまた「実践的企業技術支援事業」、これは産業科学技術センターに、テーマを設けまして、民間企業から研究者を受け入れて、大学あたりの客員研究員をお迎えして一緒に研究をする中で、研究者養成を図っていくといったような事業、あるいはニュービジネス支援セミナー、学生あるいは女性起業者も含めましたそういう支援セミナーを毎年開催もいたしております。
 ステージ3は、そういう研究開発の中から新製品ができたものについては、販路開拓の助成をやるなり、あるいはベンチャーができてまいりましたらこれを育成支援していくということで、1つはベンチャープラザの開催、これは投資家やビジネスパートナーをベンチャー企業とマッチングをさせるという場面も作ってまいっておりますし、創業・ベンチャーの支援ということで、低利無担保の融資制度3億円を設けております。また投資制度といたしまして、産業創造機構を通じて県が資金を民間ベンチャーキャピタルに預託をして、そこから直接投資をしていただくようなそういう制度も作っています。これについては、先般、新聞でもご覧になったと思いますが、民間の金融機関大分銀行が中心になりまして、大分でも投資事業有限責任組合というのができて、1月から5億円まず投資に充てる資金を運用していこうと。更に、2〜3年経ったらあと5億積み、10億にしてやっていくというお話があるところであります。
 そういうことで、結果的に地域における研究開発の促進を図り、科学技術を振興させて、そして企業化されてベンチャー企業が育っていくと、これで大分県の県経済の活性化を図っていくというのがこのシナリオでございます。
 これまで、こうしたことを進めてまいりまして、効果として上げられるのは、1つは中小企業の創造活動促進法による認定企業の数が、九州では福岡に次いで第2位ということで、福岡県が172社、これに対して大分県は58社ということで非常に健闘している。これだけの企業がそれぞれ認定を受けております。当然本日ご出席の江藤製作所さんとか新鶴海興産におきましても、それぞれそういった研究開発を進め認定企業になってございます。
 また、別途これはアウストラーダという会社がありますが、並列コンピューターの開発で、例えば東京大学とか気象庁等にも納品をするといったような、かなり全国規模で活躍する企業も生まれてきております。
 そういう状況でございまして、今回特に私どもとしては、来年度に向けまして、新しく事業を起こそうとしておりますのは、新事業創出研究開発事業というのがこれはミニコンソーシアム事業ということで、共同研究体に対して研究開発を委託をしようという事業でございます。まだ予算が決まってはおりませんが、今の段階では3テーマ合計3,000万ぐらいをなんとか付けていきたいということで要求をいたしております。
 また、産学官による連携広域共同研究事業ということで、全国の公設試験研究機関が中小企業とともに共同研究を実施するというような内容でございますが、今までは、ただ公設試だけでやっていたものを、今回は中小企業にも、入ってもらって、更には大学から客員教授を迎えてやるといったようなことで、例えば大分県内では、地域資源でございます石灰石の有効利用とか、高周波振動複合加工といったようなことを来年度は取り組んでいくというような話にもなってございます。
 特許につきましては、特許検索アドバイザーを来年の1月から設置をすることになっておりますし、また、来年度からはテクノマートから派遣をしていただいて、特許流通アドバイザーを設置していただくことになっておるところでございます。
 いま国の方は中小企業国会ということで、今日も喜多見室長さんもいらっしゃいますけれども、中小企業基本法の改正で中小企業の範囲を広げると同時に、もう1つは、いわゆるこれまでは大企業と中小企業の格差の是正といった形での対策から、逆に自助努力をするものを支援するという方向に変わってまいっております。
 私は、このことについては、大分県は一村一品運動をやっていますので、いわゆる工業における一村一品運動と全く同じものではないかなというふうな気がいたしておるところであります。全国にあるいは世界に誇れる一品を作ろうというのが一村一品ですから、これを工業に当てはめますと、全国に世界に誇れる技術、全国・世界に誇れる製品これを目指すという運動がこれからは皆さん方にも必要ではないかとこういうふうにも思うわけでございます。
 以上で私の説明を終わらせていただきます。

(松尾)
  どうもありがとうございました。今、産学官の官の方もご説明いただきましたので、これを踏まえてまた議論を続けたいんですけども、先程から何度も言っておりますけれども、時間のご都合で、通産省の産業政策局の喜多見室長さんに講演いただきましたけども、それから三菱化学の小野田顧問さんお二人、時間の都合でお帰りになりますので拍手でもってご退席をお願いします。御礼を言ってください。すみません、どうもありがとうございました。
  (拍手)
 それでは引き続き議論に移っていきたいと思います。
 今、県の方から施策の説明がございました。非常に県、行政の役割、大学の役割もそうですけれども、行政の役割も非常に企業にとって大きなものがございますので、それも含めて議論をしていただきたいんです。産学官連携の中身について、あるいは仕組みについて、どういうふうに進めていけばいいのかというところでご議論をいただきたいと思います。
 ただ、この点につきましては、今日コメンテータでお出でいただいています、岩手大学工学部の教授でいらっしゃいます岩渕先生にお話をいただきたいのですけども、どうも岩手県はかなり産学官連携という意味では、先端を走っているというか、やられておりますので、その経験をちょっとご紹介いただいて、今までの議論を踏まえて何かご提案というか、ご提言がございましたならば、いただきたいと思います。お願いします。
 
(岩渕 明岩手大学工学部教授)
  岩手大学の岩渕でございます。
先程から聞いておりまして、非常に素晴らしいところと遅れてるところと半々こう比較しながら聞いておりまして、産学官連携ということで岩手県が非常に進んでいるという今のコーディネーターの松尾先生からの話ですが、確かに私たちもそう自負しております。
 1つは何かというと、産学官の交流、情報交換というものの仕掛けが、1つ宣伝しますと、私6月に来たときもお話ししたのですが、我々のところに岩手ネットワークシステム(INS)という組織がございます。これはもう昭和62年にできて、ああいう産学官連携組織で、“いつも飲んで騒ぐ会”という「INS」です。それがスタートしたのが昭和62年ですが、その頃いろんな議論をしたときに、要するに集まったのが大学の若手教官と県の若手、課長補佐にならない係長クラスあるいは主任さんなどで、当時で言えば35〜36の県庁の職員と大学の40以下の先生方が集まって愚痴をこぼしながら「明日の岩手は…」とこう語り始めた。そのうちにその輪が広がって、100人になって200人になって現在700名おります。メインは、大学が100名弱しかいなくて、県も100名弱、そのうち産の方が500ぐらいいるというそういう組織で、定期的に会合をして、いろんなことを愚痴をこぼしながら情報交換してきた。
 さっきの、大学のメリット、企業のメリットという話からギブアンドテイクという話から進むとそれはそれでいいんですけど、なかなか本音にならんというところかあって、やっぱり助走期間として、お互いにこう酒を飲みながら話をしながら本音で物を言いあうというところが産学官交流のスタートではないか。そのうちに、我々はだれだれさんのところに行くと何をやってるとか、県の方からすれば、だれだれ先生は何をやってて情報持ってるのはだれだれ先生だと、こういうネットワークができます。そのへんが県とまず、岩手県はどっちかというと大手というのは皆進出企業ですから、あまり地域の大学には目を落としていない。中小企業はちょっと敷居が高すぎてということで、結局リードをとってきたのは学と官なんです。そのうちに、いろいろと岩手県の工業振興のために、例えば科技庁の大型予算を取るとか、中小企業庁の支援をもらうとか、NEDOの支援をもらう。大型プロジェクトに手を挙げるということでは、やっぱり学だけではだめだし、産だけでもだめ、いかに官が動くかというところがありまして、そのへんがうまく機能して、生活流動研究とか、地域先導研究とか、地域コンソーシアムとか、今年度は、地域結集を取ってきた。その中に当然産が巻き込まれなければいけないということもあるのですが、INSの中に酒を飲んで騒いでるうちに、専門的に話をしようということで、だれかキーパーソンがいて15ぐらいの研究会ができまして、そこが核となって、官がうまく使って例えば通産局にプロポーズするというような一つのそういうネットワークができてしまっておりますので、次に科技庁で何か事業やるぞというと、じゃだれだれ先生とだれだれ会社をこうくっつけて、こうやったらもらえるのではないかと、そういうコーディネートがもう既にできているんです。
 だから、県の動きと学の動き、県の問い掛けに対して学の方で反応する、産の方で反応する。学の方は地域共同研究センターがメインとして窓口をやっていますから、産学官連携はすごくうまくいっている。だけど10何年の歴史でやっと最近3年4年で花が開いてきたということですから、7年ぐらいはこう眠ってた。だれにも認知されないというところがある。
 だから、やっぱり官が県の振興の中で大学をどう使うかという視点がもっとあると、大型予算というのを取れてくるのではないか。学はメインとしては科研費という文部省からのお金をもらえばいいわけですけども、やはり官が動いてくれると、科研費よりも当たりやすいという。当たりやすいという変な表現なんですが、とにかくオーダーがワンオーダーぐらい違いますので、先生方も次はだれだれ先生が何々で1億円をプロポーズしたぞと言って、もらうと次は俺の番だというふうな期待を持ちます。これは研究費をもらうという意味でメリットですし、そうすると産がそれにかわります。岩手県の姿勢は、アウトプットを出すということも必要なんですけど、今はどっちかというと、そういう大型予算を持ってきて、今までの生産工場、空洞化というキーワードで言えば空洞化から、その研究開発R&Dをやるための種を、いまそういうものを使って県内の中小企業に植え付けていくということを、一つの方向性として持っているんです。だからそういう意味で大学がうまく使われている。
 さっき中小企業創造法の認定企業が58社という話がありましたけれど、岩手県は去年の10月段階で59社でしたから、今年度は、僕はセンターから離れていますのでちょっと内容は分かりませんが、もう70近い企業はあって、それぐらいやっぱり手を挙げてくれるようになったというのは岩手県の施策ではないかと思います。
 それから今までの議論で言うと、せっかく来たんで何か話さないと申しわけないんですが、メリットという意味で、喜多見室長が言っていましたけど、教官のメリットと大学のメリットは何かというポイントがあったと思うんですが、個人対個人、要するに教官、先生方だと、使いやすいのは透明性のない奨学寄付金の方がよっぽど使いやすいんです。何に使ってもいいというのが、さっき不透明性という小野田さんのコメントがありましたけれども、ところが組織として見た場合には、奨学寄付金は全然その実績にならんというところがあるんです。
 佐藤先生からも述べられたと思うのですが、共同研究の実績が大学の評価につながると。我々はとにかく件数を増やすことで、大分大学と同じ年平成5年にできたんですけど、共同研究の数をベスト10に入れることをとにかく地域共同研究センターの戦略にした。それでいろんなその仕組みを作って、さっきのINSの共同研究を含めてやってきて、結局大学全体を考えた時に、工学部で生きていけるかというと、だめだろうな、農学部でどうだ、だめだろうな、教育なんてもうじり貧だっていう話になって、要するに大学の中で目立つ組織を作っていくということが大学の独立法人化等も絡むんですが、要するに大学の目玉になり得るんだというところを、すべての先生ではなくて、少なからずの10%のぐらいの先生が協力を惜しまぬことによって、大学の存在を地域共同研究センターに託してるというところがあるんです。だから組織のメリットというのはすごく共同研究することによって非常に我々は儲かっています。
 ちなみに言いますと、できたときは多分同じ面積で、1,100平米ぐらいの建物で、設備投資も多分3億円ぐらいではないか。初期設備です。その後、補正予算等で、うちの大学は延べ10億円の設備投資をここ5年間で文部省からもらってきてます。だからそういう意味では、先端的な設備と増築工事、870平米の増築が来週、丁度10日に竣工式をやるんですけども、やっぱりスペースと設備と、今度は教官スタッフとということで概算要求しまして、それが段々具体化してきていますので、共同研究することによって大学として、組織として非常に大きなメリットがある。
 もう1つは、やっぱり大学が将来国立でなくなった時に、地域密着型でいかないとどうしてもだめだと、そういう意味で、我々は即論文が書けるかというところではなくて、別な視点からとにかくお手伝いできるところはお手伝いしましょうという動きをしております。
 
(松尾)
  すみません。ありがとうございました。

(佐藤誠治)
 ちょっとよろしいですか。いまの岩渕先生のお話に関連してなんですけど、率直に言いまして、非常に岩手と大分が違っているというのを感じました。
 先程、佐藤部長さんの方から、ミニコンソーシアムの話がありましたけれども、実は私どもの方に打診があったんです。来年の予算組を考えてんだけども、大分大学の方でどれくらいの芽がありそうかというふうな問い掛けがありまして、率直に言いまして、私どももその時点で考えなきゃいけないということなんですね。地域共同研究センターとしては実は非常に恥ずかしい限りなんですけども、じゃ先生方の方にどういうふうな形で出していただけるかということをその時点で考えなきゃいけないと。実はこういうのはすでに大学の方で、私どもの方で、いろいろなところからアプローチがあった場合に、いつでも出せるような形で本当は用意していかなきゃいけないんですね。今日は恥を覚悟で申し上げますけども、そういう違いが今日お聞きしましてありました。やっぱり岩手の場合はINSを約10年以上かかりまして、要するにこう先生方の横のネットワークが非常にうまくできてるということを感じたわけです。やっぱり一番大きな鍵になるのはそのへんかなという感じを持ちました。
 それと、県との関係でいいますと、我々としては、いろいろな働き掛けで県の方にお願いもしておりますけれども、いろいろなこの事業の中で、先程佐藤部長さんの方から技術開発関連事業ということでいろいろ出されておりましたけれども、この中に、産学の、大分大学の立場でいいますと、共同研究をこの事業の中で生み出していくような使い方といいますか、そういうのができないかということでもお願いした経緯がございます。通産なりあるいはその他の国の事業を県の方でうまいこと使い回しするというのは、これは今日もう喜多見さん、まだ佐伯さんいらっしゃるんだけども、そういうことですると非常にまずいかなというような感じがするんですけども、我々としては、地域としてはそういうことを構想していただけないかなというのが率直な感想でございます。以上です。
 
(松尾)
  どうもありがとうございました。
それでは、いまかなり岩手の方からヒントをいただいておりますので、話が見えやすくなっているのではないかと思うのですが、必ずしもそれが大分の将来像になるかどうか分かりませんけれども、とにかく現在の問題点とそれから解決の方向を探るヒントになっておりますので、それを中心にお話を進めたいと思ってます。
 いま佐藤先生の方から、先程県の方から説明のあった仕組み、新しい仕組みだと思うんですけども、それについてちょっと触れられたんですけども、このへんで、行政を含めて産学官の仕組みを、岩手のこともヒントに入れながら、一体現時点であるいはこれから予定されているこういう施策について、何か課題というか、問題点というか、あるいは意見というか、そういうものがございましたら、どなたでも結構でございますけれども、大学側から少し出ましたけれども、企業のサイドからもしございましたらば。要するに、これは行政の仕組みにしても大学の仕組みにしても、いわば企業に対してどうなのかというか、それが中心になるはずなので、それで勝手に自己満足でやっていてもしょうがないので、企業に役立たないといわれたらそれまでの話なので、そのへんでご意見をいただければと思うのですが。
 
(岩渕)
  ちょっと言いたいのですけれども、シーズを使うのはやめた方がいいと思うんです。はっきり言って。つまり、さっきスピードの問題があって、大学のスピードというのはやっぱり例えば4月にスタートして3月に終わると。要するに学生の
時期と同じなんですね。だから3カ月で結論出せといってもそれは無理な話なんだと思うんです。
 もう1つは、シーズ、シーズと言いながら、実用化になった例というのは全国的に見てもあんまりないですね。だから科技庁がやった通産がやったと、20億、100億先生方に投資しても、どれだけ今までなったかというと、その確率的にいうと非常に小さいと思うんです。地域で何が問題かというそのニーズオリエンテットなやつを要するに県を通して大学にぶつけるという姿勢が一番僕は早いと思うんです。例えば、具体的例で言いますと、今岩手は金型というのが一つの製造業の問題で出ていまして、これは全国的に同じだと思うんですが、一般に金型の専門家は大学の先生のシーズを使って金型をやろうなんてだれも思っていないわけです。だけどメンバーは皆中小企業です。そうすると金型を、今のやり方ではなくて新しいやり方をやるために、大学の先生のシーズを使ってと考えますが、大体大学の先生は金型なんて知らないわけだからシーズを持ってないわけです。だけど使い方としては、金型で今こういう問題があるというところから大学の先生のその成果の結果ではなくてプロセスを利用するということなんです。例えば金型をやる、そのCADをやらなければいけない、シュミレーションですよと、いまはいろんなソフトがあるけども使えないよということで。一方、大学の先生はいろんな流れのシュミレーションとかいろいろやってるけど、金型というキーワードは知らない。そういうふうなやり方でいくと、この県なり、うちの方で言うとテクノ財団ですし、センターなりが「ああ、金型でこの先生のこういうノウハウは使えそうだ」ということでメンバーを集めることができる。だから僕はコーディネータというのではなくて、プロデューサーとかディレクターというイメージだと思うんですが、そういう人が県にだれかいて、県のニーズはこういうもので、大学の先生を巻き込む、それで大学の先生にやらせると、脅しをかけてやる。「我々に協力しなかったら大分大学潰れるんだよ」と。「文部省から言われたら、我々は知らないよ。悔しかったら今手伝え」と、それぐらいの意気込み、大学を使う姿勢があったら、もう産学連携というのはすごくうまくいくのではないか。以上です。
 
(松尾) 
 ありがとうございます。行政に関しましては、岩手県もそうなんですけども、新事業創造法で地域プラットホームという仕組みづくりをやっているわけです。先程言いましたけども、産業創造機構はその中核機関なわけです。それがどういうふうに、こういわばこれはコーディネート役なんです。コーディネート役をやれということですから、実際上それがどういうふうに大学とのパイプなり、それから企業とのパイプがうまくつながるかどうかが問題になってくると思うんですけども、そのへんでそういうことも踏まえて、もう少し、いま大学のあり方について非常にご意見が出たんですけど。どうぞ。
 
(瀧田)
  あまり大分大学は悲観する必要はないというふうに思うんです。と申しますのは、先程のお話で、岩手では昭和62年にINSというのはスタートしたということなんですが、大分も、10年ぐらい前ですから、平成元年ぐらいから、産学官交流会というのを県とそれから工団連がやりました。それまでは我々も全く企業の方とはお付き合いがありませんでした。それをやったから、そして13チームに分かれて個別的なグループ活動をやったから進展があった。ただ大分の場合にはどういうことをしたかというと、皆が仲良しグループで共同研究をやると言うことは多分できない。企業間でのつばぜりあいもありまして、もしそういうもの(共同研究)ができたときには、教官とその企業さんで(産学官交流グループから)抜けなさい。そして共同研究を作りなさいという方式を採っていったわけですね。その中から、我々も鈴木さんを知り、大分ガスさん知りというふうに、そういう今までの交流会の中から知っていったわけです。その中から地域コンソーシアムを立ち上げたわけです。大学が主導する方式のほかに、あのグループ(13チーム)の中から皆でやりましょうという形でやれる方式もある。大分方式のようにそういうふうにして企業間の軋轢を避けるために生まれた方式です。ただ、外部から大きな研究開発を取り込んでくる研究がちょっと少ないかなと、そういうところがあるんですけれども。
 それからご存じのように、これからの大きな研究開発予算は大学、企業、公設試験研究機関が共同研究体を作らないと絶対に取れないような仕組みになってるんです。ですから、いかに個人的な、個人的なというと変ですけども、皆さんでヒューマンネットワークを作るかということが大事で、今も大分県のその産学交流会は続いているんです。残念ながら大学いま独立行政法人化問題などで教官が忙しくなってきて、なかなかそれ(産学交流会)に出られないんです。でも私は欠かさずに年度末の飲み会にだけは参加させてもらっています。「お前年度末しか来ないじゃないか」と言われているんですけれども。それ(産学交流会)があったからこそ、いまこれだけの状況になって、一部の企業さんはもう全然アポもなしで「先生いますか」って入って来られるようになったわけです。ですからこれからも産学交流会は重要なんですね。
 大分大学に関していえば、もう少し多くの先生方に企業さんと組んでそういう公的資金をどんどん取るようなプロジェクトを組んで欲しいんですね。
 
(久米)
  今の岩渕先生のお話の中で、シーズよりもプロセスというお話がありました。私もまさにそのとおりだと思います。
 いろんな論文を読んでみても、その論文を読んだだけではよく分からないし、実はその裏に隠れた内容は実に膨大なものがあるというのを実感しております。それは、いくら文章をみてもわからないから、とにかくやっぱり先生に電話して、ここんとこはどうなったかと、中小企業の皆さん方頑張らないと、本当に物にならないんじゃないかと思います。
 岩渕先生ありがとうございました。大変いい、なんといいますか、キーワードとしていいこと言って下さったんでありがとうございました。
 
(松尾)
  時間もかなり迫っておりますんで、もうフロアの方から、もしいまの議論受けて一言言いたいという方がいらっしゃいましたらどうぞ。
 
(大分県産業科学技術センター 築根センター長)
  産業科学技術センターの築根ですけれども、いま非常に活発にご議論されていて、人と人とのインタラクションが重要ということで、私、大分見てまして、それが臨界点に達するあるいはもう達しているのかなあと思います。産学官というとそれぞれキャラクターも違いますし、また多体問題ですよね。これはどうあっても複雑になるに決まっていますので、一応その中からどんなふうに実りを得ていくのかというのが重要ではないかと思います。
 そういった意味で、やはり戦略というか、やはり考え方をいろいろ整理する必要があるのではないかと思っています。特に技術開発あるいは共同研究というところに限定してみますと、やはり3つだろうと。1つは目標を明確にするということ。それから2つ目は、時間軸をどこに設定するかです。今までのご議論でもいろんな時間軸があって、それぞれ評価基準が違うわけです。それから、もう1つはやはり人だろう。人のネットワークということもありますし、一番重要なのは、やはりキーパーソンを育てていくという仕組みをうまく作っていくことかなというふうに感じています。その中で大分県としてのコアコンピタンスといいますか、強みがいくつか出てくれば、それで公的資金にプロポーズしていって獲得できるのではないかと思います。
 もし短期的な時間軸を設定するとすれば、これは知識レベルでどういうものが大分にあるのかということになるでしょうし、時間軸が長期的になれば、むしろどういう人がいるのかということが必要になると思います。
 特に短期的な商品開発ということで産学官の協力をやろうとすれば、場合によっては、外部に人を求めていくというようなことも必要になるわけで、いずれにしましても、この3つの要素をどういうふうに戦略として整備していくかということで、それぞれ重点化していく必要があるのかなというふうに思っています。以上です。
 
(松尾) 
 どうもありがとうございました。ほかに、はい。
 
(津久見市工業連合会 薬師寺会長)
  地域のお世話をさせてもらってる者からの発言ということでございますけども、一つ経済団体という非常にミニの工業連合会というふうなところでお世話をさせていただいております。その時に、秋月会長が質問された10人ぐらいというふうなことがずっと印象に残っておるわけでございますけども、地域の方でいろんなことを考えるときに、10人5人という経済単位というのは非常にウェイトの大きいことでございまして、そこらあたりのことから考えていきたいというふうに思ってるんですが、今回の、前に書かれておりますタイトルからしますと、双方向性これが一番私ポイントになる、気になっておることでございます。
 そういうふうな考え方からしましたときに、じゃどのような形にすれば双方向性というふうな形になるかというときに、メリットというふうな観点からのお話がありましたが、メリットを非常に広いメリットというふうに考えることもあるんではなかろうかなというふうに思っております。この考え方が今までのお話の中でどうもないし、これからも出そうにもないのであえて申し上げるわけですけども、それはどういうことかといいますと、1つの企業もしくは1つの大学、1つの官あたりが1つのテーマでもってそれで答えを出していくというふうなこともありますけども、地域5人10人というふうなことのことを考え合わせますと、もっとふれあいというふうなことをもう少しメリットという中に入れていただいて考えていただいてもよろしいのではなかろうかなというふうに考えます。
 ふれあいという言葉がちょっとあれでございましたら、交流というふうなことでございますけども、そこらあたりまでその関係を広げて考えないと、この双方向性の答えがどうも非常に我々素人からしますと専門的すぎる。地域の5人10人というところの方から考えますと、どうも答えが限定されてしまうというふうな感覚を持ってしまいます。
今の施策等を見ますと、本当に花に水をたくさん与えるような感じで、水はじゃぶじゃぶ与えてくれますけども、企業にとって本当に必要なのは、水というよりも水の中に含まれる何かだろうと思うんですけども、どちらかというと、ロマンチックな言葉でいうと愛情とか、それからちょっとそれを離れると交流とか、そういうふうなことを求めてるんであって、水全体を求めるという感じはあまりしないわけですね。そういうふうなこと等も考え合わせまして、この双方向性というときに、もっと幅広い意味でのメリットなり、お互いが、企業の方から官の方にお役に立てることはないか、企業の方から大学の方にお役に立てることはないかというぐらいの気持ちで産業の方はいるものですから、お互い平等の立場で切瑳琢磨しあうというぐらいの観点で我々は受け止め、取り組んでいきたいというふうに思っております。ちょっと考え方が異質すぎたかも分かりませんけど、どうもそういう感じがしてきましたんで発言させていただきました。
 
(松尾)
  どうもありがとうございました。 ほかに、何か後ろの方に。どうぞ。
 
(山村産業 田原)
  大分県の中小企業の山村産業の田原と申します。先程岩渕先生が申されました、大学のシーズに期待するなというのはよく分かります。大学の先生の数もしれてますし、産業科技センターにしても先生の数は限られております。ですから中小企業が希望するニーズに対して十分に応えられないと私は思います。
 要は、中小企業にとっては欲しい技術や研究が大学なり産業科技センターで、ちゃんと共同研究のまな板の上に乗せていただけるかどうかいうことが我々中小企業にとっては一番大切なわけなんです。先程、佐藤先生が年間15〜16件の共同研究がスタートしてるということなんですけども、もしかしたらそれに何十倍の数の申し込みがあったのかもしれませんし、申し込みたいと思ってても断われるかとも思って自己規制して申し込まなかったということも考えられるのではないかと思います。
 そういう意味で、中小企業にとっては、先程宮川さんがおっしゃったように開発スピードをアップする必要があります。それには、今いろんなところで研究されてる特許、先程佐藤商工労働部長がおっしゃいましたように、いろんなところで特許がありますけども、それをできたら使わせてもらいたいと私は思います。特に私は日立とか東芝などは有償で、使わない特許、未利用特許を公開するような方向に動いていますし、そういう意味では産業科技センターに今度新しく特許検索アドバイザーや流通アドバイザーが設置されるということなので利用させていただこうと思ってますけども、要は、私ども中小企業にとっては、世界に先駆けて何かを開発しようなんていう気はさらさらないです。
  要はそれがビジネスの舞台に乗るかどうか、それを大学なり産業科学技術センターがちゃんと受け止めてくれるかどうか、それが一番気になるところであり、また期待するとこなんですけれども、それについて佐藤先生よろしく答えていただけますか。
 
(佐藤誠治)
  先程のシーズの問題でちょっと、答えになるかどうか分かりませんけど、大学のシーズを期待するなというのは非常に刺激的な発言なんですね。これは
研究コーディネータ活動の中で出てきたんですけれども、企業が求めてるのはこの製品開発に直接結び付く技術、それは複合技術だと言ってるんです。ところが大学であるのは、先程金型の話をされましたけども、大学にあるのは金型をそのまま作っていくという技術じゃなくて、作るプロセスという表現を使われましたけれども、要素技術だと思うんです。要素技術をいかに複合化して製品開発に結び付けてくるかというのは企業のサイドの努力によらざるを得ない。大学は提供できるというのは、やはり複合技術よりも要素技術、例えば今度来年、私どもの、先程私冒頭部分で申し上げましたけれども、先端技術研修会ですけれども、そこでやるのはシュミレーション技術の工学への応用ということで、シュミレーション技術ですぐ製品開発に結び付くわけではないんです。製品開発する段階でどうしてもやっぱりシュミレーションしないと分からないと。その部分で利用していただく。これをシーズというのか、別の言葉でいうのかちょっと私はそこらへんは分かりませんけれども、やっぱり私はそのへんではないかなという感じがしております。
 ということで、大学のシーズに期待するなというのは、非常にこう刺激的で、本当にそうなんですかというふうに私はかえってお聞きしたいんですけど、先生のところはしかし随分やっているじゃないですか。

(岩渕)
  シーズもちゃんと使ってます。うちは共同研究でいうと、今年度67件ぐらいなったと言ってましたから、その内6割が岩手県内の企業です。岩手県の企業というのはほとんど中小企業ですから、大企業は2%もないと思いますね。 
 要するに300人以上1億円というのは。そういうのを相手にしてやってますから、1つ、シーズをダイレクトに使う例というのは、金型の離型剤というのがあるんですが、要するにモールディングしたときにくっつかないようにする化合物です。それは大学の先生が、専門の話でいうと、トリアジンチオールというやつの機能性を向上させてと。 
 企業ごとに使う金型材料とモールドする材料が違うので、すべて効くわけではないので、「うちの要するにモールドに効くトリアジンチオールの開発をお願いします」ということで、今まで例えば1万ショットぐらいで表面が汚れてきたやつをワンオーダー上げたとか、そういうダイレクトに使えるシーズを中小企業に移転しているとか。中小企業がシーズを使ってるという例もありますし、その要素技術をどう使うかという意味では、さっき言った流れのシュミレーション、例えば金型の流れのシュミレーション技術を企業が製品化するということではなくて、大学の研究のプロセスを何かに利用していくということを産業界側から大学の方にプレゼントして一緒に共同研究する。だから、シーズに期待するなというのはちょっと大袈裟な表現なんですが、期待感が強いとやっぱり大学は俺らの方に向いてくれないなという印象を持つので、大学の先生の何かを使おうと思うなら、巻き込むような努力を企業側がなさった方が、大学も「しょうがねえな、論文にもならないけども」と思いながらも最初は付き合うと思います。そのうちに、うまい先生はそこから、「あっこれを使えば論文に書ける」とかそういうのが出てきますので、あんまり目先のことをやらない、やっぱり一緒に長く何かこっち向いてもらって一緒に手伝ってもらうぐらいの方が、お互いにポテンシャルの低いところからスタートした方が楽なのではないかと思います。最初から何か先生のシーズを使って製品化して、100万円やったけども何にもアウトプット出ないといって、ああもうやめたというより、例えば30万円からスタートしてもよろしいのではないか。やっぱりそれぐらいの長い目で大学を付き合う気持ちがあればいいと思うんですが、もうすぐですよという人とはやっぱり大学は非常に難しいかなと思います。以上ですが。
 
(産業科学技術センター)
  産業科技センターという話もありましたので、私どもの立場は技術支援ということがやはり大きいわけです。その技術支援のための技術力ということで研究開発を行ってると、そういう順序だろうと思ってます。
 確かにシーズというと、その種によって具体的な問題は解決するあるいは新しい技術が生まれるということはもちろんですけれども、そういう意味でも技術支援の一環として技術相談等を行っております。ただやはりシーズというのは、先程パネルの方でもありましたけれども、やはり人間もシーズだと思うんです。そういう問題解決能力を持った人間が大分県にたくさんいるということが、やはりその底上げではないかというふうに思っています。
 そういう意味の技術シーズですと、どんぴしゃり合わなければ効果は発揮しませんけれども、人という意味であれば相当幅広い対応が可能になるであろう。そういうことで、とにかく企業の方とそれから産業科学技術センターの人と人のイントラクションを強めていくということで、徐々にそのあたりを進めていくということかなというふうに思っております。
 
(松尾)
  ありがとうございました。ほかにございますか。どなたでも結構です。
 
(住化分析センター 松田)
  住化分析センターの松田と申します。ちょっと岩手大学の岩渕先生のご説明とはちょっと違った私意見を持っていますんですけど、産業界というのは常にニーズを持ちまして、その商品化するために、そのニーズを商品化するために常にシーズを、大学の先生の研究等はウォッチングを常にやっています。そういう意味で、是非イノベーティブな研究というか、シーズ、種蒔きをもうどんどんやっていただいたらというふうに私は思ってます。そういうことでちょっと佐藤先生がご心配されてたというよりもあれなんですけども、やはり大学というところは新しい新規性のある研究をどれだけやっていただけるか、そういうところを私たちは常にウォッチングしていますので、その研究は非常に重要だと思いますし、それを大学に私たちは求めてますので宜しくお願いしたいと思います。
 
(松尾)
  ほかにございますか。
 
(鈴木) 
 先生いいですか。
決めつける必要は私はないと思うんですけどもね、産学交流でこれから実績をどんどん出していくために、大事な役割をするのはやはりコーディネータだと思うんです。この機能充実させてもらいたいなと思います。それは大学側ですと共同研究センターのコーディネート機能、それからベンチャーラボここでもコーディネートするわけですね。それから、県と民間サイドですと産業創造機構のコーディネート機能ですね。佐藤部長がいま2名いるとおっしゃいましたけど、こんなことじゃ全然もう足りないもんですから、これはやはり予算もかかることですけども、ここを充実させていただく。企業がそこへ行ったら大概の情報が取れるというその仕掛けを作っていただきたいなと思います。
 
(松尾)
  どうぞ。
 
(佐藤慎一)
  確かにコーディネート機能を強化することがこれからの一番の大きな課題であるというふうにも考えておりまして、今のところ計画としては、できれば、来年は1名は増やしたいというのと、実は国の方が小規模事業のための目玉として
打ち出している創業支援センターというのがありまして、これは全国にナショナルセンター、それから都道府県に県のセンター、そして地域に全国で300というセンターを作って、そこにそれぞれ段階に応じたコーディネート機能を作っていこうとそういうことで、地域はとにかく1カ所1人はコーディネーターを置く。そしてその上の県の段階では、全体としては3人ぐらいのそのプロジェクトマネージャーを置くという話があるんですが、実は大分県の場合には既にこのプラットホームがもう発足をしてますので、このプラットホームに一元化をするという形で、これをうまく利用して、指導体制強化を図っていくというようなことも考えたいと思っているところであり
ます。
 
(佐伯九州通商産業局産業部技術企画課長)
  活発な意見を伺っておりまして非常によかったなと思っておりますが、九州通産局の技術企画課の佐伯でございます。
 産学官ということでご議論いただいておりますけれども、国の助成制度ももうご案内と思いますけれども、平成8年の科学技術基本計画の策定を受けまして、その年からいわゆる産学連携等に関して、特に地域に対する支援の助成措置が急激に増えております。それは、特に今国は補助金というのはもうどんどん縮小していく。すべては基本的には例えば1割カットしていくというのが方向なんですが、あるいは見直して廃止していくという、その中で唯一聖域的になっているのがこの技術科学技術分野です。そして現実に今申し上げますように、地域に関するものが強化されておりまして、それも産学連携、あるいは産学官連携に関するものでございます。
 特に大分県につきましては、私ご議論だけでなくて、皆さんももうご議論の中でもお分かりいただいたと思うんですが、非常に積極的に取り組んでいただいております。今日も産業科学技術センター所長もお見えになっていますし、非常に立派な公設験、ハード内容ともにお持ちですし、また、大学も瀧田先生がまさしく、今年私どもは九州通産局初めて実は大学研究者の特許申請のベストテンというのを発表しまして、通産省と文部省さんも実は大学に対する評価を変えていこうという動きがございます。要は論文による評価だけでなくて、やはりまさに特許をどんどん取ってるとかそういったものの評価をいわゆる教官の評価の中に付けていこうということで、いま実にそういう方向に動いてます。
 それでそういった中でも、今年初めて私ども発表させていただいた九州におけるその大学研究者の特許出願のベストテンで、実は工学系の第1位が瀧田先生なんです。この大分大学の実は九大でも九工大でもないわけなんです。九工大の先生が実は4位に出てまいりまして、7位に九大の先生が3名ぐらい出ておられるんですけども、そしてそういうことでも、非常に多分企業の視点とか、あるいは非常に開放された視点で教官の方も取り組んでいただいている。そしてまたそれを引き継いでいただいた今佐藤先生が共同研究センターの方をやっていただいていますけども、そういうところが窓口ですから企業の方々もお気軽に、これを機会に、これを契機に大学とあるいは公設験のセンターの方にあるいはご相談いただくと非常にいいのかなと思います。
 それから私ども、先程何度か出てまいりました県の佐藤部長のお話の方にもございましたいろんな支援策、一部科技庁のもございましたが、ほとんど通産省の施策です。テクノマートに関するもの、あるいは特許庁、特許庁も実は九州の特許室は私どもの課の中にございます。通産局の技術企画課の中に特許室、室長がおりまして特許庁から直接来ております。それで特許もそうです。それからNEDOの施策も私どもの方が基本的には通産の方の係でもやっております。施策的には支援形態としてはNEDOの方に予算を付けてという事業なんですが、実質的には通産の方の施策の中でNEDOに予算を付けて支援するという形をとっておりまして、現に地域コンソーシアム制度もタバの発掘及び審査の一部は私ども九州の通産局になっております。
 それで、もう今日はそういうことでございませんのでこれ以上申し上げませんが、皆さんのお手元の中に実は資料といたしまして、本年度の補正のコンソーシアムの新たな制度のこととか、あるいは来年度のコンソーシアムの制度の説明会を実はいろんなとこでやりたいんですが、スケジュール等で2カ所しか、九州で最低1カ所を2カ所にしたんですが、そういうことで大分ではできなかったんですが、どうしても九州でやるとしたら北と南となってしまいまして、20日に福岡市でやります。22日に鹿児島市でやります。もし可能な方はこういったところにも、説明会等お出でいただければ幸いかなと。それからもちろんお出でいただけなくても、私ども電話番号あるいはファックスを付けておりますので、今日実はこの担当で来ております大石等にでもご連絡いただければ、またお答えあるいはご紹介いろいろできるかなと思います。
 それから、九産技センターの方の事業としても、私どもと協力して産学官の連携施策等の事業をやっておりまして、それに関する事業等含んだいろんな代表的な産官連携施策について青い冊子も入れておりますので、これもご参考にいただきたいと思います。すみません。
 
(松尾)
  長時間にわたってご議論をいただいてきました。もう時間がございませんので、最後にまとめて終わりにしたいんですけども、私の方から簡単にまとめまして、後は各パネラーの方、それからコメンテーターの先生に一言ずつ最後のご意見をいただいて終わりにしたいと思います。
 今日お話としてはいろんな問題が出ましたが、産学官連携も今までスローガン的というか、ある程度進めた中で、もう一歩踏み込もうというのが今日の狙いだったわけです。そうした意味で、どれだけ成果が上がったかなというのはちょっと不十分なとこもあったと思うんですけども、一応出た話としては5つばかりあるかなと思ってます。
 1つは、とにかく企業なり大学なりの双方の情報交換、まずこれをきちんと作るべきなんだということだと思うんです。もう表面的なやつはどうでもいいという、実質上の情報交換をやりたいということだと思うんです。
 それから2つ目は、大学に過大な期待というか、実用化に対する過大な期待ではなくてプロセスを利用した形の利用の仕方というのを考えて欲しいというか、その方が効果はあるという話。
 それからそういう意味で、例えば県を使うべきだとか行政を使うべきだとか、プロデューサー、ディレクターとしての役割が出たと思います。
 それから4つ目が、大学にしても、産業科学技術センターにしてもそうなんですけども、結局中は人、人なんで、その積み重ねというんですか、付き合いの積み重ねというか、その中から何か成果につながるものが出るわけで、長い目で長い期間の積み重ねが重要なんです、シーズを具体的にするにはですね。
 それからコーディネーターですね、大学の地域共同センター、創造機構もそうなんですけど、コーディネーターの役割、結局今日のメインテーマはそこにあったわけです。コーディネーターが、具体的にやっぱり人なんだと思うんですけども、だれがどういう仕組みの中でやるのかというか、これは非常に気になるところで、このへんを充実させていくというのも課題になってくのかなと思うんです。これも単純にその計画を作ってばっとやるのではなくて、いろんな企業とのお付き合いの過程で具体的な、本当に大分に地のついたものを作ってくというか、そういう形だと思うんです。
 以上5つぐらいが大体の話題で、おっしゃったのはまだあるかと思いますけども、大体絞ればそんなとこかなと思ってます。
 今日出たお話というのはまだ解決というところまでいってませんけども、一応こういうところが問題だというところで押えていると、そういう方向に向かっていこうではないかという確認ができてればと思います。
 これについて、それぞれのパネラーの皆さんのご意見あろうと思いますので、一言ずつ最後にまとめという形でお話をいただきたいと思います。では久米さんから順番にお願いします。
 
(久米)  まとめというよりも、とにかく大学に足繁く出向くと。実は鈴木さんもおっしゃいましたように、この産学官交流のシステムがないときは全く知りませんでした。私は宮崎の出身ですから宮崎大学かもしくは九大しか知りませんでした。
 この組織ができて、段々先生方とお付き合いするうちに、今ではもう簡単に、いつでも、といっても先生いらっしゃらないことが多いんですけども、ちょっと顔出して一言二言お話するということをやっておりますが、皆さんがそうやってどんどん「もう来るな」と言われるぐらいやると、もっと交流の意義が高まってくるのではないかと思います。
 
(鈴木)
  大分大学今年からインターンシップを始めたんですね。いくつかの企業は引き受けられたと思いますけれども、これをできるだけ積極的に引き受けてやって、同時に先生方も学生を出すだけではなくて、それをその機会にまた学生について企業にも出入りしていただきたい。そういう中から小さい相談でも企業から出てくるでしょうし、そしていい研究テーマがそこからまた生まれてくるということもあるだろうと思いますので、お互いにそういう行き来をもっとしげくやるようにしたいと思います。
 
(宮川)
  私どもとしましては、今まで大学とのお付き合いは非常に少ないのですけれども、いかにそのような大学とお付き合いできるような材料を作っていくか。いきなり商品開発そのものではなかなか難しい部分が私たちのレベルではございますので、その商品の中で、個々に先程言われましたような要素技術的な要素のもの、かなり問題も抱えておりますので、そういう部分を含めましてご相談に行くような形で大学との交流をできるだけ深めてまいりたいと思います。
 
(佐藤慎一) 
 新事業を創出するためには、やはり今日のお話を聞いてみましても、起業家に対するコーディネートとまた新技術開発の支援というのが非常に大事だと。そういう意味で県の役割というのは大変大きいなと感じました。
 そこで、産業創造機構と産業科学技術センターの強力な連携と、また産学官連携の強化によって、県内企業の技術開発あるいはベンチャー企業の創出・育成に一層真剣に取り組んでまいりたいというふうに思いました。
 
(瀧田)
 私から提案ですが、5人10人の企業さんと、いち対いちで対応というのはとても無理だろう。そこで提案なんですが、そういう業種の同業の人がいくつもまとまって、その中に1人研究員をやろうとか、あるいはコーディネータをやとう。一人でいろんな分野というのは無理だろうと思うんで、その業種専任というふうな人をなるべく作っていって、それで大学と付き合っていただきたいと思います。
 
(佐藤誠治)
  先程触れましたけれども、研究コーディネート活動を今年度あるいは来年度も推進いたしまして、シーズとニーズのマッチングということを大学の立場として進めていきたいというふうに思っています。それが第1点です。
 2つ目は、やはり共同研究が増加しなければ大学評価は上がっていかないという、これは岩渕先生がおっしゃったとおりなんですけれども、その場合にやはり大学のシーズをいかに増やしていくのかということが大事。これは瀧田先生のSVBLの役割でありますけれども、やはり大学としては企業のニーズを踏まえた研究の推進ということもやっぱり考えていかなきゃいけないんじゃないかなと。ニーズオリエンテッドな研究の推進というのがあるのではないかというふうに思ってます。
 3つ目は、大学にあるシーズを学外に出していくための機構を作っていく。シーズオリエンテッドな学内の事業推進ということが3つ目でございます。以上です。
 
(松尾)
  岩渕先生いいんですかね。
 
(岩渕)
  あの盛岡から来ましたので、何か辛口のことを言っているんですけども、要は僕が常に岩手県でも言ってるのは、やっぱり大学というのは、小野田さんの話にあったように、要するに地域における知的集積度の一番高い組織なんです。やっぱり国立大学ということではなくて、大分大学は大分のものであるということを皆さんが認識して、要するに地域共同研究センターを使うことによって大分大学が変わりますよというような発想を、今日参加した方々が持っていただければ、もっと佐藤先生が忙しくなって、文部省にもしげしげと通わなければいけなくなるとそういうようなことだと思うんです。
 だから是非分からないいろんな相談があると思ったら、とにかく地域共同研究センターに電話するなり訪問して、佐藤先生がいなかったら伊藤先生にいろいろ相談するというとこから、とにかく大学を利用するということを是非大分の皆さんもやっていただきたい。来年、再来年には岩手を抜きましたよということを是非聞かせていただきたいと思いますので、今後とも一緒に頑張りましょうということです。
 
(松尾) 
 最後まで長い時間ご審議いただいたパネラーの皆さん、それからコメンテーターの先生に拍手をお願いします。

(拍手)

 以上をもちましてディスカッションを終わりたいと思います。ありがとうございました。