■個室群住居

 

 黒沢隆によって1968年に提案された居住形態。黒沢は個室群住居を語る前提としてまず「近代住居」の特性を取り上げ、それを単婚の家族によって住まわれ、仕事場から分離された私生活の場であり、そこには夫が妻の分まで働き、妻が夫の分まで家事をする、「夫婦の一体的性格」があるとしている。

そして、この近代住居が崩壊しているという。

共稼ぎ世帯の一般化によって「夫婦の一体的性格」が、産業構造の変化による職住の境界の曖昧化によって「私生活の場」としての住居という前提が、それぞれ崩れている。

いわく、現代では『家族』は名も実もない。あるものは個人だけである、あるいは社会全体が家族であり、その構成単位が個人である。

そしてその住居を考えれば、この構成単位がそのまま住単位となる以外はない。

黒沢は近代住居における「社会‐家庭‐個人」という構成が「社会‐個人」という直接の関係に転換してしまったことを認めながら、社会全体を家族にかわる共同体の母胎としてとらえ、個人を単位とした新しい共同体の構築をめざしたといえる。