5.大分市市街地の分析

5-1  選定街路シミュレ-ションの概要

  本研究ではケ-ススタディとして大分市市街地のサンサン通りを選んだ。その理由はサンサン通りが大分市市街地の商業中心部に位置し、今後、都市開発に伴う高層化高密度化による都市景観の悪化が予想され、街路景観変化の把握が必要であると考えられるためである。図-19に示すように、街路の長さは230mであり、西側から東側に向かって10m間隔で計算ポイントを移動させ視覚的可視領域率を求めた。道路斜線制限、後退距離の変化においてこの街路の街路景観変化についての分析を行った。
 
 

 
図−19 大分市サンサン通りの平面図
 
 
5−2  分析

 図−20は現状の街路の視覚的可視領域率図である。視点1から視点23になるにつれて方角でいうと西より東になるにつれて視覚的可視領域率が大きくなり、開放されている。また、北側の建築物より南側の建築物の視覚的可視領域率が大きいことからも、この街路は北側に開放性があると言える。南側の建築物一部交差点付近を除いて視覚的可視領域率が近い値を示しており、閉鎖性はあるが比較的変動の少なく整然としていると言える。街路北側は東側になるにつれて視覚的可視領域率が大きくなり開放性が増し、これは街路建物の階数変動が激しくて、所々に駐車場が存在している為と思われる。
 

 
図−20 大分市現状街路の視覚的可視領域変動図
 
 
 
 図−21は大分市現状街路視点1の可視領域図である。
 
 
 
 
 
図−21 大分市現状街路視点1の可視領域図
 
 
 

 この街路において建蔽率70%、道路斜線制限1.5、隣地斜線制限2.5の条件で、駐車場の場所にも建物を設定した街路環境を作り上げた。図−22によると、現状街路と同じ条件で設定した街路を比較すると、許容範囲に近い値を取っているのが視点1、2、7、8、9、10点目であることから、10点目まで、この街路の東側はまだ余裕があるが、西側は既に法規いっぱいに建物が隣接していることが分かる。
 
 

 
図−22 視覚的可視領域率変動図
 
 
 更に、道路斜線制限と後退距離のみを変化させると街路景観がとのように変化するのかを分析した。図−23によると、後退距離を0mから4mにした場合は交差点付近(視点10)だけ、視覚的可視領域率の増加が見ら見られるが、街路全体ではほとんど変化がない。また、隣地斜線制限を1.5から1.0にすると高さ方向に制限がおこり街路全体で視覚的可視領域率の増加が見られる。
 
 
 
図−23 視覚的可視領域率変動図
 
 
6.まとめ

   本研究は都市街路景観を評価する1指標として視覚的可視領域率を定義し、3次元コンピュ?タグラフィックスの手法を用いて算出した。次に建物形状変化による街路空間変化の定量的な把握とその特性の分析を行った。また、大分市の実際の街路を3次元デ?タ化し、その街路特有の景観分析を行った。街路を形成する建築が斜線制限等の形態規制によって変化し、それが街路の開放性にどのような影響を与えるのかを定量的に明らかにし、本手法の適用の可能性を示した。
 
 
 
 

注 (1)芦原義信4)は,視点と建築との水平距離に関する研究で,水平距離は100mまで,建築として印象に残る。J・ゲ−ル5)は,社会視野として,出来事が見える最大距離(70〜100メ-トル)。ケビン・リンチ6)は,優れた都市空間には,110メ-トル以上の空間寸法をもつ例がほとんないことを指摘している。山元英敬2)は,最も良い感じの見通し距離が90mである。それらの参考文献により,本研究の計算領域,半球の半径は100mと設定した。

参考文献:
1)三橋正邦(1992),「CGによる街路景観の定量分析」,日本都市計画学会学術研究論文集,pp.745〜750
2)山元英敬他(1991),「見通し距離の相違が街路景観評価に及ぼす影響」,都市計画論文集,No26, pp.817〜822
3)船越  徹,積田  洋(1987.8),「街路空間における空間意識と空間構成要素との相関関係の分析(相関分析)−街路空間の研究(その3)−」, 日本建築学会計画論文報告集,第378号,pp.49〜57
4)芦原義信(1962.4),「外部空間の構成/建築から都市へ」,彰国社
5)ヤン・ゲ−ル著,北原理雄訳(1990.3),「屋外空間の生活とデザイン」,鹿島出版会
6)ケビン・リンチ著,前野淳一郎他訳(1987.11),「敷地計画の技法」,鹿島出版会
7)芦原義信(1983),「続・街並みの美学」,岩波書店
 


1.はじめに  2.研究の方法  3.計算手法  4.モデル街区の分析  5.大分市市街地の分析 6.まとめ
 
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