1997年度卒業研究
地形と土地利用データを用いた
景観構成条件による地区類型に関する研究
1.研究の目的と背景1.1. 研究の背景と意義近年、都市景観は、都市のイメージを左右するのもとして、あるいは都市のアメニティを形成するものとして、あるいは都市環境の重要な要素として注目を集め、実際の都市政策においても種々の施策が実施されている。とりわけ、都市の景観形成を目標を持って体系的に進めるために「景観マスタープラン」あるいは「景観基本計画」が制定されることも多い。景観基本計画は市民と行政が共有できる長期的な目標を示すとともに、その内容は実行可能な具体性を求められる。すなわち、都市全体の景観特性、景観形成課題および景観形成計画を論じるのみでなく、具体的にコントローラブルな地区(ゾーン)を単位としての論及が必要である。景観基本計画における地区設定(ゾーニング)には、いくつかの方法が存在し、1.面的に都市景観を形成する要素として捉えるもの、2.同質な視覚特性をそなえる視点場群として捉えるもの、3.学校区・町丁界等の行政的にコントロールしやすい区分を用いるもの、が典型的なものである。いずれの立場をとるにしろ、設定された地区ごとに景観の現状が調査された上で景観形成計画が論じられる。 地区景観調査においては、その結果が地区景観の形成計画に直接の影響を与えるものであり、一定の客観性が求められることは言うまでもないが、同時に景観の捉え方が多分に主観的な要素に左右され、その客観性を確保することは容易ではない。本研究では、従来の都市計画調査においても用いられてきたような基本的な数値情報を解析的に加工することにより、地区的な景観特性を推定できる客観資料を抽出する試みを行うものである。 1.2. 研究の目的と構成1.2.1. 研究の目的本研究は、メッシュデータを用いて地域景観を類型化し、その特性を論じるものであり、その対象として大分市を取り上げる。すなわち、研究目的は以下のように整理される。
1.2.2. 論文の構成と研究フロー本論文は以下のように構成される。「序章」は本章であり、本研究の背景、意義、目的、構成および方法について概説する。 「第2章」では本研究の対象地域として取り上げた大分市について、その概要を述べる。 「第3章」では本研究を進める上で重要な手法であるメッシュデータシステムについて解説する。 「第4章」では本研究のベースとなる標高データおよび土地利用データを用いて、大分市の地形条件・土地利用分布を把握する。 「第5章」では大分市の景観を構成する面的要素としての「景観ゾーン」を設定する。 「第6章」では「景観ゾーン」に対する視覚指標によって、視点場としての類型として「視点場クラスタ」を導出する。 「第7章」では「視点場クラスタ」と「景観ゾーン」の関係を論じるとともに、いくつかの視点場からの景観を推定する。 「第8章」では本研究全体の総括をおこなう。 本研究全体をフロー図に表現したものを図 1に示す。 |