1997年度卒業研究
地形と土地利用データを用いた
景観構成条件による地区類型に関する研究

2.大分市の概要

2.1. 大分市の沿革

 本章では本研究の対象としてとりあげる大分市について、その沿革、人口、地勢、土地利用を概観する。
 大分市は、1963年(昭和38年)3月、大分市を中心に隣接の2市3町1村(大分市・鶴崎市・大分町・大南町・大在村・坂ノ市町)の合併によって現在の姿となった。翌1964年には新産業都市の指定を受け、高度成長時代の中で重化学工業を中心とした産業の発展を遂げた。一方、都市の成長につれ急速なスプロール現象が発生し、虫食い的な市街化が広い範囲で進行した。オイルショック以後、経済・社会が成熟期を迎える中でも人口増加は続き、現在でも新団地の開発が各地で進められている。産業振興・人口増加への対応が優先課題とされる中で、政策上の重要課題として都市景観が認識されることはなかったといえる。
 しかし、所得水準の向上や余暇時間の増大に伴い、「ゆとり」「潤い」など、生活の質的向上や心の豊かさに対する社会的要求が増し、産業中心から市民生活中心への政策転換が求められている。都市景観も生活環境の一部として、その重要性が今後増していくものと考えられる。
 1997年(平成9年)1月、大分市は新都市基本計画として「2010大分市総合計画」を策定し、これに基づく行政運営を始めた。これによると都市像として「心かよい緑あふれる躍動都市」を掲げ、2010年(平成22年)を目標年次とした基本構想が打ち出されている。この基本構想の中では政策の大綱として「豊かな自然を生かした快適な居住環境都市」「調和のとれた都市生活を支える基盤形成都市」など都市景観に関係する項目も掲げられており、都市景観形成に対する今後の計画的な取り組みが期待される。

 

2.2. 大分市の概況

2.2.1. 人口

  大分市の人口は、1950年(昭和25年)において186,134人で以後減少することなく増加しつづけており、新大分市発足時の1963年(昭和38年)には217,269人となり、1996年(平成8年)には429,542人に達している。人口の推移を表 1に示す。
 

     
    表 1 人口の推移

 人口は現在でも増加の傾向を示しており、「2010大分市総合計画」では目標年次の2010年(平成22年)に500,000人の人口を見込んでいる。
 

2.2.2. 地勢

 大分市は大分県のほぼ中央に位置し、北緯33°14′東経131°46′(市庁所在地)に位置し面積は360.65km2、広ぼうは東西に25.8km南北に21kmである。その北辺はは別府湾に臨み、東部・西部・南部を山地帯にとり囲まれている。さらにその山々を水源とする大分川と大野川の二大河川が南北に貫流し、平地にかけての中間部には河岸段丘としての丘陵と台地を、下流にかけての市北部には広い沖積平野を形成している。
 大分市は海・山・川のすべてがそろい、自然と都市が共存する優れた都市環境を有している。また、大分川・大野川が緑豊かな農山村地帯から下流平野部への恵みとなり、大分の文化を育て、天与の地勢そのものが豊かさの象徴となっている。広い市域には農地、山林なども多く、豊富な自然の緑地に恵まれており、沿岸は水深が深く、天然の良港を形成している。
 

2.2.3. 土地利用

 大分市は、平野部に市街地と農地が広がり、その周辺部を丘陵地や山々が取り囲み、緑あふれる豊かな自然に恵まれている。しかしながら、本市の土地利用は、新産業都市建設による都市化の進展、社会経済活動の拡大などにより、自然的土地利用から都市的土地利用への転換が進んでいる。1997年(平成9年)の地目別土地評価面積を表 2に示す。
 


     
      表 2 地目別評価面積

 土地は限られた資源であり、自然的土地利用と都市的土地利用、開発と保全といった相反する土地需要を調整していく必要がある。このため、開発と保全との調和に配慮しながら地域特性に応じた適正な土地利用を確立し、災害に強い、自然と共存できる、美しくゆとりのある土地利用を推進し、快適で魅力ある都市環境の創造と市域の均衡ある発展を図っていく必要がある。

 


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