1997年度卒業研究
地形と土地利用データを用いた
景観構成条件による地区類型に関する研究

 7.3. 視点場クラスタ2 

 視点場クラスタ2は、臨海部の工業地帯から近接する市街地にかけて東西に広く分布する限定眺望クラスタである。クラスタ構成メッシュからの景観ゾーンに対する視覚指標マップを図 28に示す。また、景観ゾーン別の詳細な視覚指標を表 16に示す。 
 可視領域はおおむね、第六章の図 22の因子?・?にあたる海岸近くのゾーンと因子?にあたる霊山・本宮山山塊、因子?にあたる九六位山嶺に対して広い。表 14が示すように、限定眺望クラスタとしては市域全体に対する可視率が比較的高く、臨海部の平野とその周囲の丘陵部を中心に対して広い範囲を眺望できることが特徴である。 
 景観ゾーンに対する視覚指標を観察すると、距離・可視面積において上位にあるゾーンは平野型住宅地00、平野型住宅地02、丘陵型住宅地11、都心商業地20、周辺商業地30、工業地41および工業地42であり、また可視面積と視線入射角において上位にあるものは丘陵地型住宅地10、丘陵地型農地60、自然丘陵地70、自然山林80、自然山林81および自然山林82であり、これらも視点場クラスタ2における景観に対して一定の影響を与えていると推定される。また、距離・可視面積・視線入射角の3指標ともに上位にあるもの、距離と視線入射角において上位にあるものは観察されなかった。 
 視覚指標上位のゾーンには市街地ゾーンが多く、クラスタ近傍の平野部、周辺の丘陵地帯はほとんど市街地ゾーンである。また、視覚指標上位にある非市街地ゾーンはいずれも遠方に位置するものである。 
 
              図 28 クラスタ2視覚指標マップ 
     
     
              表 16 クラスタ2からの視覚指標値 

 つづいて、クラスタ2に含まれる府内城址付近についての景観推定を行う。 

 7.3.1. 景観推定〜府内城址付近 

 大分市の中心市街地に位置する地点である。この地点からの可視範囲を図 29に示す。 
 
            図 29 可視範囲 
 近距離の地形は平坦で全方位に可視領域が広がり、特に臨海部近辺は広く展望できる。内陸方向に対しては、周囲の丘陵地によって明確に視線が区切られて、主要な3つの山地のほかにはわずかに上野ヶ丘付近の丘陵地と明野付近の丘陵地の間にある狭い範囲へ可視領域が広がるのみである。 
この地点における景観CG画像を図30に示す。 

          図 30 景観推定画像 
 近景は非常に平坦で視点場が属する都心商業地20が広がっている。北から東にかけては、臨海部が遠方まで見渡せるが前述のように視線入射角が非常に小さいことにより、近隣の工業地40や周辺商業地30は見かけ上小さく見える。むしろ内陸に向けた視線を阻む周辺の丘陵地帯の傾斜面が比較的大きく見えており、特に丘陵地型住宅10は視点場を取り囲むように連なって展望できる。また、東から南東にかけてもわずかに平野型住宅地00とその背後の丘陵地を望むことができる。遠方には主要な3つの山地ともが展望できるが、そのなかでも高崎山を含む自然山林82が距離も比較的近く存在感がある。 
 近中景のほとんどを市街地が占め、東から南、西へと丘陵地帯・山地が連なって展望できることから、北向きに大きく開けていながらも、軽く取り囲まれた印象がある景観である。 
 
 



Go back to Home  Go back to the previous page