1997年度卒業研究
地形と土地利用データを用いた
景観構成条件による地区類型に関する研究

7.4. 視点場クラスタ3

 視点場クラスタ3は、東部の市界沿いに連なる九六位山嶺上を中心に分布する広域眺望クラスタである。クラスタ構成メッシュからの景観ゾーンに対する視覚指標マップを図 31に示す。また、景観ゾーン別の詳細な視覚指標を表 17に示す。
 可視面積は多くのゾーンに対して非常に広く、第六章の表 14に示したように市域全体に対する可視率は全クラスタ中最も高い。比較的可視範囲が狭い領域は図 22に示す因子?にあたる吉野盆地周辺と因子?にあたる大分川と松岡周辺の丘陵地帯との間の地域である。
 景観ゾーンに対する視覚指標を観察すると、距離・可視面積・視線入射角の3指標ともに上位にあるものは自然丘陵地70、自然丘陵地71および自然山林81であり、これらの景観ゾーンの景観に対する影響力は特に強いと考えられる。この他、距離・可視面積において上位にあるものは平野型農地50および丘陵地型農地63であり、また可視面積と視線入射角において上位にあるものは自然山林80であり、距離と視線入射角において上位にあるものは平野型住宅地04、平野型農地56、丘陵地型農地61、丘陵地型農地62、丘陵地型農地67、自然丘陵地72および自然山林84であって、これらも視点場クラスタ3における景観に対して一定の影響を与えていると推定される。
 視覚指標上位のゾーンのほとんどは非市街地ゾーンであって、クラスタ分布の北方向・西方向に広がっている非市街地ゾーン中心の景観となる。ただ、表 13に示すとおりクラスタ構成メッシュが比較的高い標高に位置していることによって市域全域に対する可視率が高く、平坦なゾーンに対しても視線入射角が大きくなる傾向にあるため、非常に多くのゾーンによって景観が構成されると推定される。
 
            図 31 クラスタ3視覚指標マップ
 
 
            表 17 クラスタ3からの視覚指標値

 つづいて、クラスタ3に含まれる九六位山山頂下付近についての景観推定を行う。

 7.4.1. 景観推定〜九六位山頂下

 九六位山の山頂から少し西方向に少し下った地点である。この地点からの可視範囲を図 32に示す。
 
            図 32 可視範囲
視点メッシュが山上に位置しているため付近に起伏が多く、近距離に対しての可視領域はそれほど広がっていない。しかし山麓の平野部から向こうには可視領域が一面に広がり、北東方向から南西方向にかけてほとんどの地域に対して視線が達する。東南方向は市界が間近なため、また北東方向・南西方向は九六位山嶺沿いのため、可視領域はほとんどない。
  この地点における景観CG画像を図に示す。
 
            図 33 景観推定画像
 北東から南東を経て南西方向にかけては、近景の起伏に遮られ市域の境界にも近いことから何らの眺望は得られず、わずかに吉野方面の自然山林83がかいま見える程度である。西から北方向にかけては、前述のとおり市域の広い範囲に対する眺望が展開し、多くの景観ゾーンを望むことができる。
 近距離には、西から北方向にかけて自然丘陵地70の斜面が足下に下り、西から北西方向に平野型農地50が大きく広がる。さらにその向こうには自然丘陵地71が横たわり、その左側、南西方面にかけて霊山を含む自然山林80が連なる。また、北方面では自然丘陵地63が大きく見える。市街地は眺望の得られる西から北方面のはるか遠方に帯状に連なっており多数の景観ゾーンがまだらになって見える。
 広い眺望を得ながら、視野の広い部分を非市街地景観が占めることにより、都市化の進む大分市にあって自然が豊富な印象を与える景観である。また、眺望方向が海岸線に対して平行に近く、視点場メッシュが市域のはずれに位置することから、大分市の地形状況を一望のもとに理解しやすい景観である。
 
 



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