1997年度卒業研究
地形と土地利用データを用いた
景観構成条件による地区類型に関する研究

7.5. 視点場クラスタ4

 視点場クラスタ4は、南部の吉野盆地周辺と霊山・本宮山山塊の南側を中心に分布する限定眺望クラスタである。クラスタ構成メッシュからの景観ゾーンに対する視覚指標マップを図 34に示す。また、景観ゾーン別の詳細な視覚指標を表 18に示す。
 可視面積はおおむね、第六章の図 22に示す因子?にあたる吉野盆地周辺と因子?にあたる霊山・本宮山山塊、因子?にあたる九六位山嶺に対して広く、その他のゾーンに対しては、霊山山塊・九六位山嶺のの向こう側となるため狭い。表 14に示すとおり、限定眺望クラスタのなかでは、標高が最も高く市域全体に対する可視率が最も低いクラスタである。
 景観ゾーンに対する視覚指標を観察すると、距離・可視面積・視線入射角の3指標ともに上位にあるものは丘陵地型農地61、自然丘陵地71、自然丘陵地72、自然丘陵地73、自然山林80、自然山林81および自然山林83であり、これらの景観ゾーンの景観に対する影響力は特に強いと考えられる。この他、距離・可視面積において上位にあるものは丘陵地型農地62および自然丘陵地76であり、また可視面積と視線入射角において上位にあるものは丘陵地型農地60および自然丘陵地70であり、距離と視線入射角において上位にあるものは丘陵地型住宅地15、自然丘陵地74および自然山林84であって、これらも視点場クラスタ4における景観に対して一定の影響を与えていると推定される。
 視覚指標上位のゾーンのほとんどは非市街地ゾーンであって、距離・可視面積・視線入射角の3指標ともに上位にあるゾーンが7ゾーンと特に多くなっている。これは前述の通り盆地や山間地といった地形条件により、比較的限定眺望クラスタの中でも特に可視範囲がクラスタ分布の周囲に限定されている上に、周囲のゾーンは傾斜面から成っていて視線入射角が大きくなる傾向が強いことによると考えられる。
 
            図 34 クラスタ4視覚指標マップ
 
 
            表 18 クラスタ4からの視覚指標値
 つづいて、クラスタ4に含まれる吉野盆地の宮原付近についての景観推定を行う。

 7.5.1. 景観推定〜吉野盆地宮原付近

 吉野盆地の北よりに位置する地点である。この地点からの可視範囲を図 35に示す。
 
            図 35 可視範囲
 周辺の吉野盆地内に可視領域が広がるが、山地が間近に迫る北側への視線は近くで遮られる。遠方に対しては、西側方向に視線が抜けて、わずかに霊山・本宮山山塊の一部に達しているが、霊山・本宮山山塊と九六位山嶺の向こう側は一切見ることができない。
  この地点における景観CG画像を図に示す。
 
          図 36 景観推定画像

 北西から北東を経て南東方向の広い範囲では自然山林81と84の山腹が近くに迫っている。南から南西にかけては、視点場メッシュを含む丘陵地型農地62を見下ろす形で吉野盆地を広く望むことができ、その向こうには自然山林83が見える。西方向の遠方にはわずかに自然山林80を望むことができる。
 全周の景観が完全に非市街地景観で構成され、吉野盆地の狭い範囲での完結的でこじんまりした景観である。
 
 

 



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