1997年度卒業研究
地形と土地利用データを用いた
景観構成条件による地区類型に関する研究 

7.11. 視点場クラスタ10

 視点場クラスタ10は、大野川下流沿いの丹生の丘陵地と松岡から明野にかけての丘陵地に挟まれた地域に分布する限定眺望クラスタである。クラスタ構成メッシュからの景観ゾーンに対する視覚指標マップを図 52に示す。また、景観ゾーン別の詳細な視覚指標を表 24に示す。
 可視面積は、おおむね第六章の図 22に示す因子?にあたる大野川中流沿いの平野と因子?にあたる大野川下流域の平野および明野の丘陵地、因子?にあたる霊山・本宮山山塊、因子?にあたる九六位山嶺に対して広い。
 景観ゾーンに対する視覚指標を観察すると、距離・可視面積・視線入射角の3指標ともに上位にあるものは自然丘陵地70のみであり、このゾーンの景観に対する影響力は特に強いと考えられる。この他、距離・可視面積において上位にあるものは平野型住宅地02、03、丘陵地型住宅地11、平野型農地50、54、丘陵地型農地63、67および自然丘陵地71であり、また可視面積と視線入射角において上位にあるものは丘陵地型農地61、自然丘陵地72、自然山林80および81であり、距離と視線入射角において上位にあるものは自然丘陵地73であって、これらも視点場クラスタ10における景観に対して一定の影響を与えていると推定される。
 視覚指標上位のゾーンには市街地ゾーン、非市街地ゾーンの双方が含まれるが、非市街地ゾーンのほうが優勢である。視覚指標上位の市街地ゾーンは、いずれも近距離に位置するゾーンであり、市街地近くに位置しながらも比較的自然的要素の多い景観が展開すると推定される。
 
              図 52 クラスタ10視覚指標マップ
 
            表 24 クラスタ10からの視覚指標値

 つづいて、クラスタ10に含まれる川添橋付近についての景観推定を行う。

 7.11.1. 景観推定〜川添橋付近

 大野川に架かる橋である。前出の舟本大橋の下流にあたる。この地点からの可視範囲を図 53に示す。
 
            図 53 可視範囲
 可視領域は大野川沿いの平野に対して一様に広がっていて、北方向の海岸部においても可視領域が広く広がる。東方向の視線は丹生台地の起伏で間近に遮られていて、坂ノ市方面へは全く視点が到達しない。西方向は、明野から松岡の丘陵地に広い範囲で視線が遮られ、市域西部へも視線は到達しない。また、南から南西方向へは遠方まで視線が伸びて、九六位山嶺および霊山を展望できる。
  この地点における景観CG画像を図に示す。
 
            図 54 景観推定画像
 近景に視点場が属する平野型農地50が広く展開するが、東方向は近くに丘陵地型農地63がせり上がって見える。北西から北にかけては農地の向こうに平野型住宅地02がつづき、西から北西にかけての丘陵地上には丘陵地型住宅11が展望できる。南西から西方向にかけては、自然丘陵地71と丘陵地型農地67が低く連なり、その向こうに霊山山塊を含む自然山林80が遠望できる。また、南方向には農地が平坦に続くが遠方には九六位山嶺を含む自然山林81が連なって展望できる。
 視点場クラスタ9とともに平野部が広く広がる開放的な景観であるが、市街地に近く都市的な要素も混じって見えることが特徴である。
 
  



Go back to Home  Go back to the previous page