1997年度卒業研究
地形と土地利用データを用いた
景観構成条件による地区類型に関する研究 

8. 研究の総括

 本研究では、景観政策策定のための景観調査においても利用できるような客観資料の作成を、地域景観全体を対象にして行うために、定量的な数値データ(メッシュデータ)を解析的に用いることによって地区類型とその特性を導き出した。すなわち、視点場としての類型と視対象としての類型の2つの側面からの類型化を行い、2つの地区類型の関係性としての景観特性を明らかにした。
 まず、視対象としての類型化では、地形条件と土地利用状況による類型として、平野型住宅地、丘陵地型住宅地、都心商業地、周辺商業地、工業地、平野型農地、丘陵地型農地、自然丘陵地、自然山林の9区分を設定し、これに適合する条件を定義した。その上で個別メッシュの前記9区分への適合を判定し、さらに周囲のメッシュとの関係により孤立点や類型分布の錯綜する部分を解消するためのスムージング計算を行い、49個の独立したひとまとまりの地区(景観ゾーン)を抽出した。
 つぎに、視点場としての類型化では、各メッシュからの景観ゾーンに対する可視率を用いて多変量解析を行うことによって、10の地区類型(視点場クラスタ)を得た。これら10の視点場クラスタのうち3クラスタは市域に対して広い可視面積を有するものであり、1クラスタは眺望がえられない閉塞的な空間に位置するものであり、残りの6類型が、視点場の周囲に対する限定的な眺望を有するクラスタであった。
 さらに、各視点場クラスタからの景観ゾーンに対する3つの定量指標(可視領域についての距離・可視面積・視線入射角)によって景観ゾーンと視点場クラスタの関係を把握し、各視点場クラスタにおける景観に対して大きな影響を与えている景観ゾーンを認識した。また、視点場クラスタを構成するメッシュからの景観CG画像を作成し、景観ゾーンの具体的な見え方を検討した。この結果、市街地ゾーンを中心に景観が構成されている視点場クラスタと非市街地を中心に景観が構成される視点場クラスタ、その中間の視点場クラスタが認識された。また、市街地ゾーンは少数の視点場クラスタからの景観と強い関係があり、平野型農地を除く非市街地ゾーンのうち面積の広いゾーンは比較的多くの視点場クラスタからの景観と強い関係がある傾向が観察された。特に市域外辺を囲む霊山山塊と九六位山嶺は全ての視点場クラスタからの景観と密接に関係しており、大分市の景観を総合的に特徴付ける存在であることが分かった。
 以上のように本研究においては、地域の景観に対する体系的かつ網羅的な資料を出力として得ており、この成果は地域景観に対する計画資料としても有用であると考えられる。これらは解析的な手法により得られたものであって十分に客観性を有し、本質的に主観的要因に左右されがちな景観評価に、客観的視点からの資料を与えるものとなりうるといえる。
 
 



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