ここでは、私の研究テーマである「都市景観」について考えることや、
1997年から研究対象としている大分県別府市の魅力的な都市景観を、景観画像を織り交ぜながら御紹介します。

 

■景観に対する問題意識

戦後経済において、都市は「住みやすい」ことよりも、的確な発展が可能な機能性と安全性を兼ね揃えた「経済の器」であったことは、誰もが知るところであり、全国総合開発計画といった国の政策からも伺える。更に、住みやすさや人間と自然の調和を謳った二全総以降の国家政策も、急激な都市の成長スピードについて行けなかったのが事実で、これが自然景観において重要なToolとなる乱開発規制や都市景観上問題となる都市過密に影響を与え、追い討ちをかけたことは言うまでもない。
では、完全にこれらの政策が成功していれば「景観」は保全され、魅力的になっていたかというとそうでもなく、むしろその逆で、全国共通で整えられた土地利用制度や特定街区制度は秩序だてて都市をコントロールし、アーバニティを向上させるという意味では有用であったかもしれないが、どこの都市にも同じ顔=景観を造り出しており、「規制」も「緩和」も景観には“強すぎる薬”と“弱すぎる薬”でしかなかったように思える。

 

■景観研究の必要性

しかし、平成10年の都市計画法一部改正でもみられるが、ここ数年、成熟期を迎えた社会において「やっと」個性ある景観への配慮が国レベルで感じられるようになってきた。 
そうは言うものの、地方行政レベルで特別用途地区の種類を予め定めず、都市計画の中で定めることができるようになったは良いが、実際のところ、どうすれば自然発生的な都市のIdentityを踏みにじらずに、魅力的な景観形成の助けになるのだろうか。困難な問いではあるが、これを盛り込むことのできた計画こそが、法改正の正しい意図を反映できるものであり、改正の意味も生きてくる。
しかしながら、考える対象が、一般的に“数字”では片付け難い「文化」「個性」「景観」であるが故、“数字”でコントロールする都市計画にとって、どう扱えばいいのかは難である。前述のように、現在の都市計画の課題を解釈するならば、景観を定量的に捉え、解析しようとする景観研究は重要な役割を果たすはずである。私は、都市景観研究の意味はそこにあると考えている。

 

■景観研究の問題点

先にも述べた、景観研究の種々の解析手法は現代都市計画に大きな意味を持っていると言えるが、その殆どが現状の景観特徴の把握にとどまっており、現実味が薄いことは否めない。対象は社会であるのに、机上の理論が優先している研究は論外であるが、私は、この問題点克服に努めたいと考えている。(←努め中^^;)

悲観的なことを、つらつらと書いてしまいましたが、やはり底辺にいる住民の動きがまちを変え、都市を変え、景観を変え、
そして法を変えてゆくことが大切なのだと思っています。

・・・・・・「まちを変えようとする力」が強いのは、都市の状態やイメージ、景観問題に直面している観光地なのではないか・・・・・・
勿論一般の都市においても景観整備は重要でありますが、観光地における景観は生活=経済につながる直接的なインパクトとなっています。
少しでも、対象都市の参考になる論文が書きたいと考えています。

 

 


■大分県別府市の魅力的な景観

ここからは研究対象都市=国際温泉観光都市・大分県別府市の魅力的な景観を、研究によって得られた知見も添えてご紹介します。

そこでまず、別府市の景観特徴からご紹介。

      

大分県別府市は国東半島と佐賀関半島に挟まれた波静かな別府湾に面し、山陰系火山帯に属する鶴見岳を背にして開けた東西13km・南北14km・面積125.26km、秀峰・湖・滝・海、そして温泉と豊かな自然の恩恵を受けた街である。
この別府の市街地は、東側に別府湾、背景となる西側を鶴見岳1375m・大平山(扇山)920m・伽藍岳、南側を船原山693m・向平山496m、北側を緩やかな丘陵地に囲まれ、緩やかに西(山)から東(海)へ傾斜した扇状地に展開されている。
その市街地には、中央に小高い実相寺の山があり、春木川・朝見川・境川などの河川が海に注ぎ込んでいる。この風景は、まさに風光明媚というに相応しい。

 

 

『東洋のナポリ』BEPPU

別府市が東洋のナポリと言われる所以はこの景観にある。
写真左手前に見えるのがオサルの天国高崎山、中央部の鮮やかな緑色が扇山の北斜面である。 扇山を含め、写真右へ広がるこの鮮やかな緑は、春の“野焼き”によるもので、5月〜9月頃まで目にも鮮やかな別府市の景観要素である。

海から見た別府は雄大で山裾から立ち上る湯煙は旅行者に旅情を与える。 旅先での期待も膨らませる風景=観光景観である。
二年前、別府市民へのアンケート調査を行った際、1人のご婦人がこんなことを書いて下さいました。

「別府の海からの眺めは本当に素晴らしい、私は友人を別府に招くときは必ず海からのアプローチを勧めるのです。早朝の別府は朝日に照らされ本当に美しいから・・・皆、大変満足してくれます」

観光地別府としての更なる発展は、海からのアプローチ、海岸線にあるのかも知れません。

 

べっぷの「べ」の字

写真は別府市街地を山(野田丘陵地)から見下ろした景観写真である。
このカットも観光パンフレットには多く登場し、別府の象徴的景観の一つである。 特に、右に見える高崎山は、別府市のシンボルマークによく登場するべっぷの「べ」の字として取り上げられている。

左奥に小さく見える市街地は大分市、高崎山の下に見える緑地が実相寺山、手前に大きく広がるのが野田丘陵地である。市街地に緑の塊が多くあるのも別府景観の特徴である。

写真のような、海から別府市を見た景観をはじめ、別府市を囲む山々からの市街地鳥瞰景観といった「市街地」を被写体として捉えた写真が観光パンフレットには多く見られる。
展望景観が多く観光パンフレットに掲載され、市街地そのものが観光景観資源となっていることが、別府市の景観特徴であり、自慢でもある。

 

 

 

 

展望景観だけでなく、別府市には魅力的な景観が沢山あります。

Landscapeのページにも画像を増やしてゆきますが、BeppuCityのページでもご覧になれます。

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