1.はじめに
人口の増大にともなって住宅・事務所等の需要を背景として、建物の高層化や高密化に伴う街路景観の悪化が問題となっている。街路景観を評価する上で、都市空間の変容を視覚的のみならず、物理的に捉えることは良好な市街地環境を形成する上で重要な課題となってきている。このような課題に着目した研究として、三橋1)によるCGを用いた街路空間の定量分析、山元ら2)の見通し距離と街路景観評価との関連の研究、更には船越ら3)による一連の街路空間の研究がある。一方都市の街路空間は個々の建築物から構成され、建築物の形態は建築法規によりコントロ?ルされている。都市街路における主要な指標と考えられる開放性は、建築法規と密接な関係にあると言える。そこで本研究では、容積率制限、建蔽率制限、高さ制限等が街路空間に与える影響度やその有効性を把握することを目的とする。
2.研究の方法
本研究では、都市街路景観の分析を行うにあたり、空間的な密度感を表す指標として視覚的可視領域率を定義し、3次元コンピュ-タグラフィックスの手法を用いて、都市景観における空間特性の把握を試みた。街路景観を構成する要素として法的規制である建蔽率、容積率制限、道路斜線制限等を変化することによって、さまざまな「モデル街区」を作成し、それらのケ-スについて視覚的可視容積を求め、計算結果をもとに建築形状の変化による街路からの可視領域率を把握する。さらに、平均視界距離を導き仰角別に変化分析を行った。また、実際の大分市の中心市街地の街路を取り上げ、その街路の敷地形状、建築配置を3次元デ?タ化した街路環境を作る。更に「モデル街区」と同様に建物形状を変化させたシミュレ-ションを行い、景観評価指標の結果より、実際の街路空間に及ぼす各変化要因の影響度及びその特徴と傾向を分析する。
3.計算手法
視覚的可視領域率は人間が街路に立った場合、見渡すことができる空間の体積を指標化したもので、ここではその算出方法を説明する。図-1に示すように3次元空間上に任意の視点q1を決定して、その点を中心とする半径100m(1)の仮想の半球を想定する。次に、この半球面上に無数の点q2を設定し、これらq1とq2を結ぶ線が、建物の壁面と交わるのか否かの判定を行い、交わった場合は壁面までの距離、交わらなかったら球面までの距離を算出する。そしてそれらの距離を高さ、球面を微小に分割した面を底面とする角錐の体積を算出し、その合計が半球全体の体積に占める割合を視覚的可視領域率として算出した。