8. 研究の総括


本研究では、韓国ソウル市の高密度住居地域を研究対象地区として、高密度な都市空間が与える景観への影響と、高密度な都市空間における景観形成の方向性を模索するための基礎的研究として、現状のアパート群に必要とされている密度を維持して、より良い景観のコントロール手法を模索するとともに、さらに評価実験を行い、評価と物理指標との関連性を求めて、高密度な市街地景観の評価を行った。

現状のアパート群を立体的にとらえるために、建物データを作成し、さらにコンピュータ・グラフィックスによる表現を行った。

景観のコントロール手法として以下の3パターン、5種類を考案した。

村山部屋@高さ70%モデル

村山部屋A境界距離比例モデル

村山部屋B標高比例モデル

モデル画像18枚による評価実験を行った結果、各モデル画像とも高密で、存在感があり、圧迫感があるという評価が高かった。また、3視点場のうちで最も評価が良いのは、視点場2であった。視点場・モデル別に細かく観察を行うと、現状モデルを除いて総合評価が最も良いのは、視点場3の高さ70%モデルであり、視点場3の標高比例/0.5モデルと次につづく。また、モデル別に観察すると、現状モデルよりも代替モデルのほうが、比較的総合評価がよく、やはり容積率を下げた高さ70%モデルが最も評価がよい。

さらに評価結果を用いて因子分析を行った結果、3つの因子を抽出することができた。第1因子は『好感度因子』、第2因子は『印象度因子』、第3因子は『秩序性因子』であり、総合評価との関係を観察すると第1因子である『好感度因子』との相関が最も高かった。各因子の得点の平均を観察すると、総合評価と最も相関の高い『好感度因子』の平均得点では、高さ70%モデル、標高比例モデルが高かった。『印象度因子』の平均得点では、境界距離比例モデルが高かった。『秩序性因子』の平均得点では、高さ70%モデルが高かった。

また、物理指標の計測を行い、各因子との関係を探った。好感度因子との相関が高いものはほとんどなく、総合評価を左右する物理指標は得られなかった。しかし、印象度因子との相関では、建物の高さ、高さ分布図における傾きなどと高い値を示した。秩序性因子との相関では、高さ分布図における標準偏差と高い値を示した。

景観の好感度を上げるには、建物の高さを一律さげることが最も効果があった。しかし、必要容積率の固定を前提とした場合は、標高比例モデルの概念が最も効果的であると考えられる。逆に、境界距離比例の概念を用いた場合、印象度は高くなると考えられ、好感度を上げることの期待はできないと考えられる。


村山部屋