1章 研究の目的と方法

11 研究の目的

近年、車社会の発達による郊外への大規模ショッピングセンターの進出によって、地方中小都市の中心商店街が全国的に空洞化の危機にさらされている。地方都市の中心商店街は、その地方の歴史や文化の拠点であり、祭りや名物、街並みといった地方の独自性の維持に重要な役割を果たしてきた。その衰退は、中心商業の衰退というばかりでなく、地方の歴史、文化の衰退をも意味している。そこで、中心商店街を再生することにより地方の文化を活性化させることは、極めて重要な課題といえる。これまで、郊外の大規模ショッピングセンターは、低価格で豊富な品揃えと、十分な駐車場の確保によるアプローチの良さによって、マイカーによる買物客の獲得に成功してきた。これに中心商店街が対抗するには、郊外のショッピングセンターにはない、歩行者が長時間滞留し、地域住民が情報交換を交わす場所としての楽しく魅力的な買物空間を創造し提供することが求められる。そのためには、中心商店街における歩行者の買物行動に配慮した商店街の配置計画が必要不可欠である。その点においてヨーロッパ、特にオランダの地方都市の商店街では、きめ細かな歩行者行動の分析に基づいて戦略的な商店街の増改築を行っている。

本研究は、日本の八代市とオランダのフェルトホーヘン市における歩行者の買物行動調査データに基づいて、都市の中心商店街における買物行動を、歩行者の個人的なヒューリスティックの面から明らかにするとともに、日本とオランダの歩行者の買物行動に見られる共通点と相違点について考察することを目的としている。

 

12 研究の方法

本研究では、日本の八代市とオランダのフェルトホーヘン市の中心商店街での歩行者の買物行動調査データの収集を行い、その集計結果を基に双方の都市における歩行者の買物行動の特徴を、歩行者の行動のためのヒューリスティックの面から分析していく。研究の手順としての第2章以降の組み立ては以下の通りである。

まず第2章において、基礎的な考え方として買物歩行者のヒューリスティックの定義を行う。次に買物歩行者のヒューリスティック判定手順をフローチャートに示す。

さらに第3章においては、まず実際に得られた歩行者の買物行動調査データの単純集計を行う。次に第2章で示したヒューリスティックの判定手順を歩行者の買物行動調査データに適用し、個々の歩行者のヒューリスティックの判定結果を得る。その後、個々の買物歩行者のヒューリスティックの判定結果と買物行動調査データにおける個々の買物歩行者の属性との2元あるいは3元クロス集計を行う。さらに集計結果について考察する。

最後に第4章では、考察に基づいて結論や今後の課題について述べる。

 

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