一般の室内では、三次元の空間の中の音波を考えねばならない。Chapter 1 で述べたように、平面波に関する三次元の波動方程式は、
C:音速
である。三次元の速度ポテンシャルは、この解として与えられる。(
三次元の速度ポテンシャル)
いま、図のように各辺の長さがlx、ly、lzの直方体の室を考える。その周壁が全て剛壁の場合、境界条件は壁面上で壁に垂直方向の粒子速度が0、である。この条件下で三次元の固有周波数を求めると、
一次元の固有周波数
と同様、
ただし、nx, ny, nz はそれぞれ0、1、2、3...となる。一次元の粒子速度の室内分布
と同様に、その粒子速度の室内分布は定在波として
で表わされ、音圧分布も、一次元の分布
と同様に、
の定在波で表わされる。また音圧の式は、
となる。なお、音圧は粒子速度が0となる剛壁上で振動の最大値(腹)が生じ、粒子速度の振幅が最大(腹)となる点で逆に振動の最小値(節)を生じていることに十分注意すること。これは吸音材の最適な配置計画、施工等の際に考慮すべき事項である。
さて、この3次元音場の固有振動はnx, ny, nz の任意の組合わせによって次のように3種類に分類される。
5.1.1 一次元モード
(axial mode, axial wave)
nx, ny, nzのうち2個が0となるもので、軸波とよばれる。
5.1.2 二次元モード
(tangential mode, tangential wave)
3個のnのうち、一個が0となり、接線波とよばれる。
5.1.3 三次元モード
(oblique mode, oblique wave)
三個のnがいずれも0でないもので、斜め波とよばれる。