4-1 モデル街区の作成
まずモデル街区の作成を行った。モデル街区は図-2に示すように幅員15mの道路の両側に奥行き30m、道路に面する長さ30m規模の正方形の敷地を街路と水平に5つ、その奥に同じようにもう一列を並べて配置する。モデル街区は、高容積の建築が立地可能な規模として12街区から成っており、街区は10の敷地で構成される。この街区上の敷地に存在する建物は、建蔽率
(90%,70%,50%,30%)、道路斜線制限(2.0, 1.5, 1.0)、隣地斜線制限(2.5)、後退距離(0m〜4m)の値から適用距離に応じて建物高さの制限を行い、階高4mとした建築物の形状に変化を与える。また視覚的可視領域率は、モデル街区のA、B、C、D地点において計測した値の平均である。なお図−3と図−4は一つの街路の街路景観と視覚的可視領域をビジュアル化したものである。
4-2 道路斜線制限の容積率に対する影響
道路斜線制限についてはその値を2.0〜1.5〜1.0に削減した場合の建物の床面積変化を分析する。図−5によると、建蔽率の増加につれて、また道路斜線制限数値の増加につれて、容積率は増加していくということが分かる。
4-3 後退距離の容積率に対する影響
後退距離については前面道路から1mづつ、4mまで後退させた場合の床面積変化を分析する。図-6によると、後退距離の数値を上げるに従い容積率を増加するが、その増加の割合は後退距離が大きくなるに従い、小さくなっている。つまり、後退距離による許容床面積にはピ-クがあり、それ以上後退距離を伸ばしても効果がないことが分かる。
4-4 斜線制限の視覚的可視領域率に対する影響
現在の法規における商業地域の道路斜線制限は1.5であるが、本研究では2.0から1.0の範囲で変化させ、視覚的可視領域率を求めた。
図-7によると、建蔽率90%、70%、50%による道路斜線制限の変化から視覚的可視領域率の増加量に大きな差はないとの結果が得られた。図-8によると、後退距離が大きい場合における道路斜線制限の影響をみると、小さい場合より視覚的可視領域率の変化は小さい。
4-5 壁面後退の視覚的可視領域率に対する影響
壁面後退の街路空間に与える影響度を計るためその値を1m刻みで4mまで後退させ視覚的可視領域率を求めた。
図-9によると、建蔽率が大きい場合、後退距離の増加につれて視覚的可視領域率は増加していく。
又図−11と図−12によると、道路斜線制限が2.0と1.5の場合は後退距離が大きくなるに従い、視覚的可視領域率は増加を示したが、道路斜線制限を1.0にした場合はそれとは逆に後退距離が大きくなるに従い、視覚的可視領域率は減少する傾向が見られる。
建蔽率の街路景観に与える影響度を計るため、その値を90%、70%、50%、30%と変化させ視覚的可視領域率を求めた。
図−13によると、建蔽率30%〜50%までは、視覚的可視領域率の減少が大きいが、建蔽率50%からは視覚的可視領域率の減少は少ない。特に、道路斜線制限2.0の視覚的可視領域率は小さい。つまり、建蔽率が30%〜50%では、視覚的可視領域率の変化に対する影響度が大きいということが分かる。
建物高さの街路景観に与える影響度を計るため、その値を12階から10階、8階、6階、4階、2階と変化させ景観評価指標を求めた。
図−14によると、階数の増加に伴う視覚的可視領域率の変化は、建蔽率が大きい方が建蔽率が小さい場合より大きく、図−15によると、階数の増加に伴う視覚的可視領域率の変化は、後退距離が小さい方が、後退距離が大きい場合より大きいと言える。
仰角別に平均視界距離を求め、道路斜線制限変化の仰角別影響度の分析を行った。
図−16、図−17、図−18は建ぺい率90%、道路斜線制限2.0、1.5、1.0となっている場合、計算地点D(街路中央)の計算結果である。道路斜線制限2.0では、仰角が73.5゜まで建物に遮蔽されている。道路斜線制限1.5では、仰角が70.5゜まで建物に遮蔽されているが、仰角70.5゜の平均視界距離も63.86m(道路斜線制限2.0)から96.03m(道路斜線制限1.5)まで広がっている。道路斜線制限1.0では、仰角が70.5゜まで建物に遮蔽されているが、道路斜線制限1.5と比較して仰角61.5゜から70.5゜までの平均視界距離がかなり増加している。仰角58.5゜の平均視界距離も49.12m(道路斜線制限1.5)から73.83m(道路斜線制限1.0)まで広がっている。この場合道路斜線制限2.0から1.0にすることで、約仰角55゜以上の空間の視覚的可視領域に影響している。
1.はじめに 2.研究の方法 3.計算手法 4.モデル街区の分析 5.大分市市街地の分析 6.まとめ
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