6−3 曲面回帰分析
6−3−1 3次の曲面回帰分析
街路景観の総合評価項目「好ましい-好ましくない」と物理量である建物高さと街路樹高さの関係性を明らかにするため、総合評価項目を目的変数Zとし、建物高さをB、街路樹高さをTとして、曲面回帰分析を行った。  

その結果を濃淡図として図9に示す。この濃淡図は、建物高さをX軸に街路樹高さをY軸にとり、総合評価「好ましい」の高低を濃淡で表すものである。濃淡が濃くなるにつれて総合評価は高くなる。この濃淡図は、評価実験によって得られた実測値と、2次と3次の曲面回帰分析によって得られた予測値を用いて、それぞれ作成したものである。この濃淡図を見ると、3次曲面の濃淡が実測値に非常に類似した傾向を示していることが分かる。従って、3次の曲面回帰分析による予測値が街路景観評価の予測として有効であると思われる。  


実測値
2次曲面
3次曲面





(m)
実測値グラフ
2次曲面グラフ
3次曲面グラフ
尺度

→建物高さ(m)

図9.曲面の予測モデル

以上のことから3次の曲面回帰分析について詳しく述べることにする。その結果を表7に示す。
この分析によって得られた回帰式は Z=-1.926+0.00580T3-0.147T2-0.00121T2B +0.000268TB2+0.0175TB+1.068T-0.115B+0.0000368B3 となる。  

さらに、求めた回帰式を3次元グラフに表し(図10)、さらに濃淡図を作成した(図11)。この3次元グラフから、建物と街路樹の高さが高くなるにつれて、街路の総合評価が低くなり、被験者は「好ましくない」と感じることが予測される。また、濃淡図から、濃淡図の斜め中央にかけて、濃淡が濃くなっていることからそこが被験者の総合評価のピークになることが予測される。

非標準化係数
標準化係数
有意水準
相関係数
定数
-1.926
0.000
0.119
0.000
Bの定数
-0.115
-0.543
0.160
0.063
B3
0.000
0.105
0.749
0.079
1.068
2.569
0.027
-0.146
T2
-0.147
-6.083
0.014
-0.155
T2B
-0.001
-0.743
0.086
-0.032
T3
0.006
3.418
0.012
-0.157
TB
0.017
0.848
0.284
0.005
TB2
0.000
0.317
0.522
0.051
重相関係数
0.218

表7.3次の曲面回帰分析の結果

3次元グラフ

図10.3次曲面の予測モデル


濃淡図

図11.3次曲面の濃淡図

6−3−2 街路景観評価の予測
求めた3次曲面の回帰式から、建物高さ22m(7階)の場合を例にとり街路樹高さと街路景観評価の予測を行う。
その場合の回帰式は Z=0.00580T3-0.174T2+1.583T-4.064 となり、さらに微分を行うと dZ/dT=0.0174T2-0.347T+1.583 となる。  
dZ/dT=0の時、T=7.048、12.906となることから建物高さ22mの場合、街路樹高さが7mの時に街路景観評価が高くなり、人が「好ましい」と感じることが分かる。逆に、13mの時に低くなり、人が「好ましくない」と感じることが分かる。

 


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