数値地図情報を用いた地理的スケールの都市景観に関する研究
風水思想をふまえたCGモデルによる都市景観分析



研究の概要

都市における景観は、都市を形成する建築物や都市基盤施設などの人工的な要素と、海・川・山などの自然的要素との調和によって成り立っている。その自然的要素や、歴史的な構築物などはその地域の景観を位置づける重要な要素であり、またその地域の「風土」を育んできたとも言える。
しかし現在都市における経済的成長・開発は、人工と自然の調和のバランスを崩し構築物を高層化、高密化させ、また都市域の広域化に拍車をかけている。従って端的に地域の特性を把握することは、困難になりつつある。つまりその地域の人々に深く影響を与えてきた精神文化の源となる「風土」は次第に陰を潜め、都市は無表情・無個性な状態にある。

よって自然的要因を基盤とした地理的スケールの都市景観の特性を把握することは、重要な命題である。そこで本研究は、地理的スケールの都市景観分析を念頭に置きつつ、地域における風土に着目し、その都市の表情・個性となる景観の特長を明確にすることを目的とする。地域の性格を特徴づける「風土」には、大陸より伝播した自然景観また都市立地の理想としての風水思想が含まれていると考えられる。そこで我々は、風水思想を特に景観の観点から考慮した5つの立地類型を定義し、それぞれに標高データを与え、コンピューターグラフィクスの手法を用い地形データを作成しモデルとして表現した(左図参照)。マクロ的レベルにおいてそれぞれのモデルと九州79都市と比較・分類していった。
画像をクリックすると、各モデルの説明がみれます。

研究の手法

立地類型モデルと九州79都市を比較・分類するために、地形相関分析、視覚的相関分析、位置相関分析の3つのマッチング分析を行った。これらの分析は、各都市の市役所を中心として行う。

@地形相関分析
地形形状の相関の度合いを調べるため、それぞれのモデルの地形データを九州地形データに投影し、標高データの相関を分析する。
A視覚的相関分析
視覚的な相関の度合いを調べるため、それぞれのモデルのスカイラインと九州各都市のスカイラインとの相関を分析する。
B位置相関分析
水域、流域は都市の領域を表す。その位置関係を調べるために、それぞれのモデルの流域と九州各都市の水域・流域との位置の相関を分析する。

各立地類型モデルにおいて以上の分析を行い、各都市毎にこれら3つの分析から導き出された相関係数の平均を求め、ある立地類型モデルのその都市の平均相関係数とする。各モデルにおいてこれらの平均相関係数の平均を求め、また標準偏差を求める。平均相関係数が、この平均値と標準偏差の和を超える都市を特に突出した値を取る都市とし、これらの都市を、評価・分析の対象とした。以上の作業によって選出された都市を、それぞれ性質の異なるモデルで比較するために、各都市の平均相関係数をモデル単位で偏差値に置き換えた後、比較・分類を行っていった。なお、複数のモデルに属する都市は、偏差値の最も高かったモデルに属するものとした。
以上の作業により、各都市の自然的景観要素の特徴をつかみ比較・分類を行うことが可能となった。
なお、本研究では分析に相関係数を用いているため、比較的標高値が低く視対象となり得ない地形の起伏でも立地類型モデルに類似した地形であれば相関は高くなる。よって、高さ方向に定限を与え、視対象となりうる範囲での分析を行っていく必要があろう。また分析の指標を増やすことでより的確な分類ができると思われる。

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