プログラム概要 of 大学教育改革支援プログラム

概要

大学院博士前期課程において、「社会力」をもつ中核的人材、すなわち、俯瞰力・実践力に富み先進性・国際性・学際性を備えた建築技術者を養成するため、地方都市のコンパクト性を活かして地域社会を巻き込んだ教育体制を構築する取組であり、平成23年度から3ヵ年にわたり、特別経費「高度な専門職業人の養成や専門養育機能の充実」の事業に採択されたものである。

事業実施主体

大学院工学研究科 建設工学・福祉環境工学専攻[博士前期課程]

目的・目標

これまでにも大学院博士前期課程に在籍する大学院生に対しては、目標設定能力、問題解決能力、論理的な記述・伝達能力など高めるための教育改革を行ってきているが、これをより一層充実し、確実にレベルアップさせるため、本事業は「俯瞰教育」および「実践教育」を強化することにより、「社会力」を培うことを目的とするものである。
 このために「地域との強い連携」を活用することが本事業の核心であり、地域社会を巻き込んだ教育体制を構築する。大学院で修得した建築技術を実践に結びつけるためには、とりわけ幅広い実務領域に対する理解が必要であり、従って学生に建築の設計実務だけでなく、これを取り巻く建設工事・行政や地域住民へ視野を拡大させ、さらには、これらの資源を積極的に教育プログラムに導入しながら、国際性及び学際性を発展的に加えることが重要である。
 これにより、学問領域に関心を深めることもでき、さらには大学院博士後期課程へ進学して学術研究を深めることを目指すためのインセンティヴを与える契機ともなると考えている。

事業の取組内容

従来から本教育課程においては「専門教育」の充実とその「総合 評価」の厳格化に取り組み、また、俯瞰力を高めるための接続教育としての「建築構法特論」を創設し、環境保全技術や建築品質確保法、PFI事業などに関する社会的な動向についての導入を教授しているが、加えて実践力醸成のための「建築設計インターンシップ」は、120時間(4単位)に改正した。
 本事業は、このうち、さらに強化が望まれる俯瞰力と実践力の拡充を図ろうとするものであり、今後とも社会的に求められる建築技術者としては不可欠の要素であると判断されるため、プログラムの構築と科目の必修化を考えている。このために、地域社会を巻き込んだ教育体制を構築するものであり、具体的な内容は下記のとおりである。

●俯瞰教育の強化:「建築俯瞰特論」の構築・必修化
地域の実務組織、建築技術職能の関係団体・組織、まちづくり活動などを行う住民組織などで活動を行っている実践者など幅広い領域から講師を招き、学部で修得した知識を改めて俯瞰的にとらえたうえで、建築技術の専門性を深めることのできる契機とするための科目を構築し、3年間の試行ののちに必修化する。

●実践教育の強化:「建築実務特論」の構築・必修化
接続教育および俯瞰教育科目を深く関係させながら「建築設計インターンシップ」を位置づけているが、これらを強く補完する必要があり、モデルビルパーツの学生による自力建設という体験的学習をその効果的なプログラムとして構築する。モデルビルパーツは、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造(RC造)の3種類の構造を予定しており、これにより主要な構造は網羅できる。3ヵ年の事業以降も有効性が発揮できるよう、構造躯体(スケルトン)と内外装・設備(インフィル)を分離させた建設方式により繰り返して利用することが可能な設計を考慮している。また、その建設プロセスは記録映像化してその後の教材としても活用する。

以上に加えて、先進性・国際性・学際性などの専門教育内容の向上を図るための取組も発展的に継続してゆく。これらの取組は、「新成長戦略」21の国家戦略プロジェクトのうち、「8.グローバル人材育成と高度人材の受入れ」における海外交流機会の拡大、「15.「リーディング大学院」等による国際競争力強化と人材育成」における研究・教育拠点の整備、「19.「キャリア段位」制度とパーソナル・サポート制度」における日本版NVQの創設とそのフォローアップ体制構築のための下地づくりなどに大きく寄与するものでもある。

事業達成による波及効果等(学問的効果、社会的効果、改善効果等)

地方都市のコンパクト性を活用した本プログラムは、大都市圏に所在する一部の大学を除き、一般に教育資源の希薄さが嘆かれる傾向にある地方都市の大学に広汎に適用可能な内容である。
 これまで個別的にはいろいろな形で地域と連携した教育への取組は行われてはいるが、組織的に教育体制へ組み込むという発想には乏しかったといえる。本事業を建築学以外の分野にも展開することによって、学部および全学への波及効果も期待できる。
 さらに、建築系大学院を有する三大都市圏以外に存在する地方大学は60校程度にものぼる。インターンシップに実施にあたっては、産学の濃密な関係が不可欠であるが、このことは、各地でも共通の条件である。建築分野の場合、その実務を行う事業所・組織・団体は全国に分布しているものであるし、仮に地域性が豊かで特殊な学問分野であっても、固有の地場産業という実務的な領域と深く関わっているはずである。従って、大学院教育の実質化に対しては効果的なものであるから、本プログラムの全体および一部をこれらの大学院に導入できる可能性は大いにあり、波及効果は充分に期待できる。