都市景観の類型と景観評価構造把握による 景観保全手法に関する研究

Study on the Landscape Preservation Method Using Classification and Evaluation Construction of Urban Landscape

by Kyunghee KIM   

 

 

 



 


 

博士各位論文の要旨


   近年、景観計画を都市計画の主要な課題と取りあげる都市が多くなっている。一般的に都市における景観整備計画を進める場合には、まず、都市の地形的条件と多様な都市の構成条件などを的確に読み取り、現存している景観の特徴と問題点を抽出することが必要である。その上で、当該都市の特性に合った固有の景観整備案を策定することが重要である。

   本論文では、研究対象都市として韓国釜山市をとりあげている。同市は港湾都市としての豊かな水辺景観と、丘陵や山々が市街地を取り囲むように存在しているため、斜面地を特徴とする都市景観を有している。地形的制約と都市周辺の開発制限地域指定により、市街地周辺の斜面地に無秩序に住宅が建築され、様々な都市問題が起こり、多くが再開発の対象地域になっている。最近、良好な都市景観保全の認識が高まり、的確な景観評価の提案が急がれている韓国において、釜山の都市景観の美化、個性化を実現するための都市景観に関する総合的な計画の樹立が求められており、そのためには、現状把握、問題点の抽出、今後の景観保全関連政策に応用できる知見を得ることが必要とされる。


 第1章の序論では、研究の目的、既往の研究、本研究の目的、各章の構成と各章の概要について述べた。

 第2章では、都市景観の調査対象抽出において、都市計画法規における用途地域、土地利用および当核地域における都市景観を構成すると予想される景観構成要素の三つの点に着目して調査対象地域35ヶ所を選定する。そして、現地調査から得られた多量の景観画像とそれに関する様々な属性データを総合的に管理する景観画像データベースの構築をおこなう。多変量解析による分析を通して、釜山市の都市景観の類型化をおこない、都市景観の特徴を把握することすることができた。

 第3章では、都市景観を250mメッシュ単位で、問題視される景観の特性を抽出し、問題景観を客観的かつ定量的に判断する手法の開発を目的にしている。問題景観を判断するため、メッシュデータを用いて可視判定・視覚指標により都市景観の視覚的構造を明らかにする。さらに、AHP法を用い、景観に詳しいエキスパートが問題景観判断に対して持っている意識構造の定量化を図る。これらの結果をメッシュデータに適用することによって、広範囲の都市景観における問題景観の総合評価を試みるものである。メッシュデータとAHP法を併用することから、視覚的測面と意識的測面を総合的に評価することができた。これにより問題景観の潜在度の高い地域を抽出することが可能となった。

 第4章では、釜山市における保全対象の山を選定して、@仰角5゚付近で山を望む、A仰角9゚前後で山を望む、Bコンケイブ地形を前に山を望むという3つの眺望形態を設定し、各山における視点場群を抽出した。眺望形態別に山を眺望する際、山並み周辺で眺望影響度の高い地域を抽出する。また山の周囲に遮蔽BOXを建てその可視量から、山を眺望する際の影響を考察する。そして、眺望形態による視点場の抽出、山並み眺望影響度の高い地域の抽出と山の可視量に着目した分析から、眺望景観の形態に応じた眺望景観保全指針を提案する。

 第5章では、山並み眺望景観に着目して、高層建築物が山並みスカイラインに与える影響を分析し釜山市の山並み眺望景観の保全手法を提案することを目的とする。保全視点場群と保全判定基準としての山並みスカイライン・標高100mラインとの関係から、建物高さの計算を行う。次に、視点場群について、視覚量、視線入射角の計算を行う。最終的に、これら視点場群の情報と建物最高高さの結果から釜山市における山並み景観保全の指針を考察する。建物高さ制限に着目し、3次元CGを用いてマクロ的見地から山並み景観の保全に関して検討する。その結果、建物最高高さ制限に着目した山並み景観保全指針を提案した。

 第6章では、各章の結論をまとめて総括した。