都市景観の類型と景観評価構造把握による 景観保全手法に関する研究

Study on the Landscape Preservation Method Using Classification and Evaluation Construction of Urban Landscape

 

第3章 都市景観における問題景観判断手法の構築

■背景 ■目的 ■第3章のフロー ■方法 ■視覚的構造 ■NEXT

 

 



 


Background

 1. 景観に対する判断・評価手法は確定した方法論はいまだ存在せず、各自による経験の集積段階にあるといえます。

2. 景観を総合的に判断するには、曖昧さが伴い、主観的基準だけの判断・評価では説明が十分でない側面を有している。

∴ 景観を評価するには何らかの根拠がある。


Purpose

1. メッシュデータを用いて可視判定・視覚指標によって、都市景観の視覚的構造を明らかにする。

2. AHP法を用い、景観に詳しいエキスパートが問題景観判断に対して持っている意識構造の明らかにする。

3. 両結果をメッシュデータに適用することによって、広範囲の都市景観における、問題景観の総合評価を試みるものである。


Flowchart

                       


       Method

 まず、問題景観の判断基準を選定する。そして、都市景観注1)の視覚的構造を把握するために、釜山の都市景観を構成している地形的条件、建物の分布条件、都市計画法規の指定状況などを250mメッシュデータとして作成し、各要素の分布状況の把握後、可視・不可視判定を行う。次に、専門家の意識構造を把握する。まず、景観判断要素の相互関係から階層図を作成して、専門家に依頼して、AHP法による一対比較を行い、各判断要素の重みを算定して、問題景観判断基準を定量的に構成する。次に、視点と可視地域に関する可視不可視の結果を問題景観判断要素の重みをかけ合わせて、問題景観の潜在度とする。それをランク別に分けて、ゾーニングする。その結果、釜山都市景観における問題景観の空間的特徴を明らかにする。

 


釜山市における都市景観の視覚的分析の概要

 釜山市では、港湾都市として豊かな水辺景観と、丘陵や山々が市街地を取り囲むように存在しているため、海と斜面地を特徴とする都市景観を有している。市街地が海岸線から山に沿って広がっている平野にかけて展開しているため、自然的要素と人工的要素の融合した特徴的な景観を望むことができる。今回作成した釜山市の250mメッシュデータから、標高別状況を見ると、標高50m以下の平野地が43.9%(4977個)、標高51〜100mが16.7%(1897個)、標高100m以上の山地部が39.3%(4457個)にあたる(計算方法:メッシュの標高だけを考慮して、陸地メッシュの総計11332個で割り算したものである)。これから、釜山市は平地が少なく、全体的に標高が高いということが把握できる。西部に大きい河川と平野が広がっているが、この地域はほとんどが開発制限区域(全平野地の45%:2285個/4977個)に指定されている(図3−2 参照)。市街地内の住宅は、山や丘陵の周囲に多く分布しており、市街地内に標高100m以上でも住宅が分布している。そして、緑地地域内の住宅は西部の平野部と北東の山林地に広く分布している。釜山市全域で、標高100m以上の地域に住居が分布しているメッシュは361個(13.77%:361個/ 2621個 住居が分布するメッシュ)に達している。特に、標高50〜100m地域に大規模の高層アパート群が建ち並んでおり、圧迫感が大きい地域が見られる14),15),16)。市街地周辺に斜面地の多い地形的状況から、高層アパートが景観に与える影響は大きく、現在の釜山で都市景観上、最重要視されなければならない問題となっている(図3−3 参照)。

図3−2 釜山市の標高別分布と市街化地域

図3−3 釜山市における住宅密度別の分布

 

第1、3、6章は完成しています。

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