設計段階における評価のための景観シミュレーション of 佐藤誠治 建築・都市計画研究室

設計段階における評価のための景観シミュレーション

○単体から複合における調和と誘目
建築や土木構造物など,一定の空間を占有するものは,単体としての建築物,構造物の 形態を検討することでは満足できないことがらが多い。すなわち,周囲の景観との調和, あるいは逆に周囲の景観と比較して際立たせる効果を有しているのかなど,設計の途中段 階での評価を求められることが多い。

○多様な視点場の設定が可能な3次元CG
従来の手法としては,パース(透視図)による評価,それも多数の代替案を用意して多 面的に評価することが多くみられた。しかし,周辺環境,それも多様な建築や自然景観の 中における計画を多面的な視点場からのパースを書くことは困難であることが多い。そこ で,近年ではコンピュータによるシミュレーションが用いられるようになってきた。この 場合,データを3次元で立体的に入力することにより多様な視点を設定できるため,景観 設計段階における景観検討に有力な手法として用いられるようになった。

○設計時における情報共有としての景観シミュレーション
これらの主要な意義は設計時における景観上の問題を設計グループ内において共有しな がら進めることができることにある。個々の建築家や設計者はその職能として完成後の建 築物の姿をイメージし,見極める能力を必要としている。したがって設計時におけるデザ インチェックとしての景観シミュレーションはクライアントを交えた設計主体の側の情報 を共有することにあるといえるであろう。  ただ,これでもかなり理想に近いことであって実体としては,多くの代替案をモデリン グして,シミュレーションすることは困難であることが多い。したがってCADなどの設 計データを景観シミュレーション用のデータとして利用できることが望ましく,簡便で即 時性の高いシミュレーションシステムの出現が望まれる。

○コンペにおける建築や地形データの提供で景観チェックを要請
最近では,コンペにおける設計段階の景観検討のために,計画敷地周辺の建築や地形データを提供している事例がみられる。  たとえば,最近の事例としては栃木県が実施した「行政・警察合同庁舎」の指名コンペ においては計画敷地周辺の東西800m,南北1200m,約96ヘクタールの範囲の建 築形状や一部ではストリートファニチュアや樹木まで含めた詳細なデータ,いわゆる都市 CGデータを第3者である株式会社プラスワンが応募者側に提供している。
 また,青梅,枚方などのコンペにおいても都市データをベースにしてコンペを実施した 実績がある。

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