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- Miyake's Study -

◇卒業論文


『ランドサットTMデータを用いた市街地・緑地環境変化の基礎的解析』

社会的環境要因との関連性

◇市街地と環境要因との相関

 銀行についての相関が一番高くなっている。これは銀行が市街地にまとまって立地しているため、相関が高くなっていると考えられる。同じように店舗売場・病院についても同じように考えられる。また都心は大分市中心市街地を都心として設定しているため、相関が高くなるのは当然である。その他を見ると、工場分布・臨海工業地帯についての相関が高くなっている。これは大分市の工業地帯の分布が大分市北部に集中していること、その南側に市街地が集中して存在していること、大分市南部に緑地が集中していることから負の相関が高くなっているものと思われる。また幹線道路との相関が低くなっているが、幹線道路が市街地中心部だけでなく郊外も通過していることから相関自体は低くなっているものと思われる。またインターチェンジ・高速道路においては、はっきりとした相関を見ることはできなかった。 1993年、1998年についても同じような傾向がみられる。 1998年おいては市街地と都心との相関関係が最も特徴的である。都心についての相関が1987年から1998年にかけて徐々に下がってきている。これは市街化の進行が市街地中心部から郊外へ広がってきていることや、郊外の新興住宅地の開発が進んでいることが、この傾向の原因になっていると思われる。また市街地と鉄道駅との相関が目立って高くなっており、鉄道駅周辺での市街化の進行がうかがえる。また公園緑地との相関もある程度増加がみられる。これは市街地内部或いはその周辺、住宅街に公園緑地が立地する傾向を示すものと思われる。


◇緑地と環境要因との相関

 インターチェンジ・高速道路を除き、正の相関が高くなっている。銀行など市街地の中心に集中している環境要因については、揃って正の相関が高くなっており、市街地中心部から離れるほど緑地割合が大きくなっていることを示している。工場分布・臨海工業地帯について正の相関が高くなっているのは、前記したように、大分市の工業地帯の分布が大分市北部に集中していること、その南側に市街地が集中して存在していること、大分市南部に緑地が集中していることから正の相関が高くなっているものと思われる。公園緑地についても正の相関が高くなっているが、公園緑地の立地状況が市街地、または住宅街などに立地しているためこのような相関がみられるものと思われる。 1993年、1998年についても同じような傾向が見られる。 1987年から1998年にかけての変化を見てみると、都心との相関が下がってきている。都心から離れた位置での緑地の減少、すなわち郊外における市街化の進行をうかがい知ることができる。 また緑地についても、インターチェンジ・高速道路とのはっきりとした相関はみられなかった。


 市街地、緑地、共に相関関係が高くなっていたのは、市街地に集中して立地している環境要因であった。また都心についての相関の変化から、大分市の市街地の拡がりが大分市中心部から郊外へ拡がってきていることが確認できた。

◇社会的環境要因と緑地環境変化との関連性

 ここでは、社会的環境要因(施設データ)と緑地環境変化との間にどのような関連性があるのかについての把握を行う。
  使用データは、250mメッシュにおける土地被覆構成比データと社会的環境要因、いわゆる施設データを使用する。施設データには各メッシュ毎にそのメッシュから幹線道路、小学校などの各社会的環境要因までの最短距離が示されている。
  社会的環境要因としては次の22要因がある。『消防署、保育所、幼稚園、鉄道駅、警察署、市役所・支所、公民館、銀行、店舗売場、病院、公園緑地、幹線道路、臨海工業、河川、小学校、高等学校、都心、下水処理整備地域、インターチェンジ、高速道路、工場分布、港湾地区』
  方法としては、土地被覆構成比データにおいて1987年から1998年にかけて市街地構成比の増加の見られるメッシュと緑地構成比の減少の見られるメッシュを抽出し、それぞれについて各社会的環境要因までの最短距離に関するヒストグラムを作成した。

各社会的環境要因と市街地・緑地環境変化についての考察

  a)消防署、鉄道駅、高等学校、工場分布について  これらの要因では、緑地減少メッシュは0.5km〜3.0kmの範囲に多く存在し、要因から遠ざかると共に減少している。市街地増加メッシュは0.5km〜3.0kmの範囲にそのほとんどが存在している。これらのことから、0.5km〜3.0kmの範囲では市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えていると考えられる。また、3.0km以上においては、緑地減少メッシュは存在するが、市街地増加メッシュはあまり存在しないことから、農地、或いは草地等に変化したと考えられる。

  b)保育所、幼稚園、警察署、銀行、小学校について  これらの要因では、緑地減少メッシュは0.5km〜1.0kmの範囲に最も多く存在し、要因から遠ざかると共に減少している。市街地増加メッシュは3.0km以内の範囲にそのほとんどが存在し、中でも0.5km〜1.0kmの範囲に最も多く存在している。これらのことから、3.0km以内の近い範囲で市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えていると考えられる。

  c)市役所・支所について  緑地減少メッシュは0.5km〜2.0 kmの範囲に多く存在し、要因から遠ざかると共に減少している。市街地増加メッシュは0.5km〜3.0kmの範囲で要因から遠ざかると共に増加し、3.0km前後で最も多く存在し、その後は減少している。これらのことから、3.0km以内の近い範囲では緑地減少に影響を与えているのは市街地増加もあるが、それが全てではないと考えられる。3.0km以上の範囲では市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えていると考えられる。

  d)公民館について  緑地減少メッシュは0.5km〜4.5kmの範囲で要因から遠ざかると共に増加し、3.0km〜4.5kmで最も多く存在し、その後は減少している。市街地増加メッシュは3.0km以内の範囲にそのほとんどが存在し、0.5km〜2.0 kmの範囲に多く存在している。これらのことから、広い範囲において緑地減少がみられ、0.5km〜2.5 kmの範囲では市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えているが、2.5km以上ではそれが全てではないと考えられる。

  e)店舗売場について  緑地減少メッシュは広い範囲において分散して存在している。市街地増加メッシュは0.5km〜3.0kmの範囲に多く存在し、要因から遠ざかると共に減少している。これらのことから、広い範囲において緑地減少がみられ、0.5km〜2.5 kmの範囲では市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えているが、2.5km以上ではそれが全てではないと考えられる。

  f)病院について  緑地減少メッシュは0.5km〜3.0kmの範囲に多く存在し、要因から遠ざかると共に減少している。市街地増加メッシュは0.5km〜2.0kmの範囲に多く集中して存在し、その後は一定の値で推移している。これらのことから、広い範囲において緑地減少がみられ、0.5km〜2.0 kmの範囲では市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えているが、2.5km以上ではそれが全てではないと考えられる。

  g)公園緑地について  緑地減少メッシュは1.0kmの範囲に多く集中して存在し、その後は一定の値で推移している。市街地増加メッシュは0.5km〜3.0kmの範囲に多く存在し、要因から遠ざかると共に減少している。これらのことから、広い範囲において緑地減少がみられ、0.5km〜2.0 kmの範囲では市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えているが、2.5km以上ではそれが全てではないと考えられる。

  h)幹線道路について  緑地減少メッシュ、市街地増加メッシュ共に2.0km以内の範囲にそのほとんどが存在している。このことから市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えていると考えられる。

  i)高速道路、インターチェンジについて  これらの要因では、緑地減少メッシュ、市街地増加メッシュ共に10.0km以上の様な遠く離れた地域を除いて、ほぼ一定の値で推移している。また、1.0km〜5.0kmの範囲で市街地増加メッシュが多く存在している。これらのことから、広い範囲において緑地減少がみられ、5.0km以内の範囲では市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えていると考えられる。

  j)都心、臨海工業地域、港湾地区について  これらの要因では、緑地減少メッシュ、市街地増加メッシュ共に10.0km以上の様な遠く離れた地域を除いて、ほぼ一定の値で推移している。ただ、都心では2.0km位の近い地域では、市街地増加メッシュ、緑地減少メッシュ共にほとんど存在していない。これらのことから、都心、臨海工業地域、港湾地区は市街地の中心部もしくは海沿いに立地しているため、これらの要因と近い地域では市街地増加、緑地減少共にあまり見られず、遠い地域すなわち都市郊外において市街地増加、緑地減少が起こっていると考えられる。

  k)河川について  緑地減少メッシュは0.5km〜1.0kmの範囲に最も多く存在し、要因から遠ざかると共に減少している。市街地増加メッシュは3.0km以内の範囲にそのほとんどが存在し、中でも0.5km〜1.0kmの範囲に最も多く存在している。これらのことから、3.0km以内の近い範囲で市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えていると考えられる。

  l)下水処理整備地域について  緑地減少メッシュ、市街地増加メッシュ共に0.5km〜1.0kmの近い範囲に最も多く存在し、要因から遠ざかると共に減少している。このことから、下水処理整備地域は住宅地等の新たに開発された地域が多いため、2.0km以内位の近い範囲における市街地増加が緑地減少に影響を与えていると考えられる。


まとめ
 a)〜g)の様な市域全域に点在している社会的環境要因については、約3.0km程度の近い範囲において緑地減少及び市街地増加の傾向が見られた。特にb)の要因については、1.0km程度のかなり近い範囲においてその傾向が見られた。 d)〜g)の要因については、近い範囲では市街地増加の影響による緑地減少の傾向があり、約2.5km以上の範囲ではそれが全てではなく、他にも緑地減少の要因となるものがあると考えられる。またそれとは逆に、c)の要因については、近い範囲では緑地減少に影響を与えているのは市街地増加もあるが、それが全てではないと考えられる。 h),i)のインフラ関係については、緑地減少、市街地増加はある程度の近い範囲にそのほとんどが集中しており、市街地増加が直接的に緑地減少に影響を与えていると考えられる。また、高速道路、インターチェンジでは広い範囲において緑地減少が見られた。j)の要因については、市街地の中心部もしくは海沿いに立地しているため、これらの要因と近い地域では市街地増加、緑地減少共にあまり見られず、遠い地域すなわち都市郊外において市街地増加、緑地減少の傾向が見られる。k)、l)の要因については、近い範囲で市街地増加の影響による緑地減少の傾向が見られる。

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