2011年度 東アジア建築都市デザインワークショップ
■実施目的と評価
「地域との強い連携に基づく建築技術者養成」事業では、主に「俯瞰教育」「実践教育」の効果を上げることを目的に掲げている。またその過程においては、国際的・学際的視点を加味した教育を目指している。
2011年7月25~30日の6日間開催された東アジア建築・都市デザインワークショップは、複数国の教員による指導や、学生との協働によって国際的・学際的視点を加味した俯瞰教育の実現を目指して実施された。そのなかで、参加学生は複数国の建築、都市計画、造園分野のチューターから指導を受けるなど、国際的・学際的な視点による教育が実施された。また、その過程においては、国際的なコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を培うことができたとえる。さらには、海外に立地する実空間を対象に設計し、海外学生の設計プロセスや案に触れることによって、調査手法や対象分析・理解などの国際的な実践力を培うことができたといえる。
■開催概要
・件名:2011 EAST-ASIAN ARCHITECTURE & URBAN DESIGN WORKSHOP, PNU
・期間:2011年7月25日(月)~30日(土)
・場所:韓国釜山大学Jangjeonキャンパス 建築棟401号
・参加大学:
【韓国】釜山大学(教員1名、学生15名、サポートスタッフ(学生5名、研究員1名))
【日本】大分大学(教員2名、学生8名)注)、九州大学(教員1名、学生8名)
【中国】同済大学(教員2名、学生14名)
注)2011年度大分大学参加者リスト
・テーマ:40階段-Forty Steps-
釜山市の旧市街地に残る、悲哀と郷愁を伴う歴史的象徴的な構造物(階段)を含む地域の再生計画である。
以下、テーマ説明資料参1)より一部引用し要約。
当該地域は、1407年に釜山港が日本に開かれた際、日本人居留地として指定され、倭館と呼ばれた地域である。19世紀後半には日本人居住者の数も急増し、メインストリートを有した東光洞地域形成するまでになっていた。
そして、1950年の朝鮮戦争終結時には、多くの避難民が釜山市に追いやられた影響を受け、同地域は難民と居住者が混住する地域となり、難民が行方不明者の家族の情報を求め、仕事を探し、食料を調達するために闇市へ往来した象徴的な通りが「40階段」である(右写真)。
この40階段は、1950~60年代における韓国の激動の歴史を彷彿とさせ、悲哀と郷愁の念を帯びた象徴的な歴史的構造物として定義されている。そして2011年現在、同地域では観光地としての街路環境整備が進捗中である。2011年のワークショップでは、この40階段周辺地域において、建築的・景観的な観点から、再生計画の提案を求めるものである。
・提出物:
1)600×900mmパネル1枚/チーム
(チーム番号、メンバー氏名をパネル右肩に明示、使用言語(英語)以外の書式は自由)
2)模型(模型材料は先方準備、道具の一部は持参)
3)発表用パワーポイントデータ
・サイト:テーマ説明資料参1)より引用
■スケジュールと内容
日時 |
内容 |
事前WS@国内(グレー表示は講座) |
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2011年5月21日 |
釜山大学より開催案内 |
2011年5月24日 |
学内告知(教員経由) |
2011年6月13日 |
参加者決定(大学院生8名(M1:6名,M2:2名)) 学生幹事決定→名簿作成、学科事務室へ連絡、パスポート取得、保険調査と加入@生協 |
2011年6月28日 |
第1回事前講座(テーマ理解と準備について) |
2011年7月01日 16:30~18:30 |
第2回事前講座(エスキース1) 対象敷地の情報収集結果発表とコンセプトの提示 |
2011年7月05日 17:00~19:00 |
第3回事前講座(エスキース2) コンセプトと設計ダイアグラムの提示 |
2011年7月12日 16:30~18:30 |
第4回事前講座(エスキース3)+チーム編成 コンセプト、設計ダイアグラム、手書きによる設計案の提示 |
2011年7月19日 16:30~18:30 |
第5回事前講座(エスキース4) コンセプト、設計ダイアグラム、設計案の提示 |
2011年7月22日 16:30~19:10 |
第6回事前講座(出国前最終発表会) 設計案の合評会(英語)、ワークショップ講義の予習(レジュメ議論) スケジュール確認、荷物チェック、チケット配布 |
WS@韓国(グレー表示は講座) |
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2011年7月25日 06:00-14:00 14:00-15:30 |
初日 大分駅→博多駅→博多港→釜山港→釜山大学 昼食後ドミトリーへチェックイン |
17:00-18:00 |
開会式、オリエンテーション(Prof. Lee Inhee) |
18:30-20:00 |
レセプション(担当教員の紹介と配属スタジオの決定) |
2011年7月26日 07:30-08:30 |
二日目 朝食 |
09:00-10:15 |
講義Ⅰ【建築哲学】:文脈主義論(Prof. Lee Dong-Eon) 講義Ⅱ【建築史】:対象敷地と40階段の歴史的背景(Prof. Lee Ho-Yeol) |
10:30-16:00 |
現地踏査(途中各自で昼食) |
16:00-18:00 |
ワークショップ 大会議室に3つのスタジオが設置され、各スタジオに教員(チューター)2名、学生は5チーム(3名:1チーム))が所属して実施された。 |
18:00-19:00 19:00- |
夕食 ワークショップ(中国、韓国チームは早々に模型とCGを制作。日本チームはコンセプトを熟考。) |
2011年7月27日 07:30-08:30 09:00-12:00 |
三日目 朝食 ワークショップ(特別講演会:講師の都合により2011年度は実施せず) |
12:00-13:00 13:00-18:00 |
昼食 ワークショップ(途中スタジオごとにクリティーク) |
18:00-19:00 19:00- |
夕食 ワークショップ(28日午後の中間発表に向けての追い込み) |
2011年7月28日 07:30-08:30 09:00-15:00 |
四日目 朝食 ワークショップ |
15:00-18:30 |
中間発表会(15チーム公開クリティーク:発表5分質疑3分) 熱心な発表により大幅に時間を延長して実施された(予定は17:00までであったが1時間30分延長して18:30に終了)。 また、チューターの教員6名に加え、釜山大学の教員2名も参加してクリティークが実施された。ダイアグラムや地図を活用した、中国チームの理論的で丁寧なコンセプトの説明が印象的であった。 |
18:30-19:30 |
夕食(中間発表の慰労を兼ねて学内のレストランで韓定食) |
19:00- |
ワークショップ(最終発表会へ向けて提案のブラッシュアップ) |
2011年7月29日 07:30-08:30 |
五日目 朝食 |
09:00- |
ワークショップ (最終発表会に向けた作業のため、昼食夕食共に会場内で軽食(弁当)) |
2011年7月30日 07:30-08:30 |
最終日(六日目) 朝食 |
09:00-14:00
14:00 |
ワークショップ (最終発表会に向けた作業のため、昼食は会場内で軽食(弁当)) データによる作品提出 |
15:00-16:00 |
展示設営 |
16:00-17:00 |
展示会・審査会 15チーム全ての作品の展示の後、以下の手順で審査並びに順位を決定。 1)各教員2票、各学生1票を投票。 2)上位6作品を教員によって別室審査(投票による多数決)。 2-1)下位3作品(ブロンズ賞)を決定。 2-2)上位3作品(ゴールド賞1作品、シルバー賞2作品)を決定。 |
17:00-18:00 |
表彰式・閉会式 |
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ゴールド賞: | ||
・B4_CO4(スタジオB所属、中国チーム) | ||
Conflict & Coexistence:地区に内在する複数のレイヤーによる建築物の再編 | ||
シルバー賞: | ||
・C1_CO5(スタジオC所属、中国+日本チーム) | ||
Gapless:街区内パティオの計画 | ||
・C4_KO3(スタジオC所属、韓国チーム) | ||
More Steps, More Events:40階段に隣接した斜面に立地する建築物の一部を撤去して階段と小広場を計画 | ||
ブロンズ賞: | ||
・A3_JO4(スタジオA所属、日本チーム) | ||
For Activity Steps:40階段に隣接した斜面に立地する建築物の一部を撤去して階段と路地を計画 | ||
・B5_JO2(スタジオB所属、日本チーム) | ||
Giving a New Meaning for Meeting in 40Steps:40階段直下の交差点周辺の建造物を再編した40階段広場の計画 | ||
・C2_JO3(スタジオC所属、日本チーム) | ||
Step Road:40階段を中心に、それが立地する斜面の建造物を有機的な曲線による階段と新築により再構成 |
18:00-20:00 |
フェアウェルパーティ(慰労会を兼ねて学外のレストランにて実施) |
2011年7月31日 09:30-10:30 11:00-19:00 |
帰国 釜山大学ドミトリーチェックアウト(カードキーと布団の返却) 釜山大学→釜山港→博多港→博多駅→大分駅 |